Unhappy Endless ~厄病神(見習い)の毒島さんは僕を不幸にしたいのかどうかよくわかりません~
江田・K
第一部「厄病神には向いてない」
第1話「不幸」
第1話‐A面 時任秋良は不幸である。
僕の名前は
この春、高校二年に進級しました。
良かったら名前だけでも覚えて帰ってやってくださいね。
まず最初にお伝えしておくんですけど、僕は大変な不幸体質です。
ツキがない。運が悪い。とにかくもってないのです。
受験の日に風邪をひく。
運動会で骨を折る。
街を歩けば絡まれる。
雨の日にはほぼ確実に車や子供に水たまりの水を飛ばされる。
こんなのは日常茶飯事なんですけど、最近もっとひどいことが起きました。
それが何かというと、
「オイコラ、アキラぁ! もっと背筋シャンと伸ばして歩けや? そんなんだと初日から舐められっぞ」
僕の背後ナナメ上をご覧ください。
ご確認いただけますでしょうか、背後霊です。
幽霊。そしてヤンキー。言葉が荒い。
僕の苦手なもののトリプル役満。不幸です……。
金髪のポニーテールはカッコいいと思いますけど。
「レーコさん、ありがとう。なるべくそうするよ」
「なってねーんだよバーカ!」
彼女の名前は
この大層口の悪い彼女はただの背後霊ではないそうで、厄病神の見習いなのだそうです。
厄病神!
不幸体質のこの僕にそんなものを上乗せして誰が得をするんでしょうか?
彼女曰く、「オメーを不幸にしねーとアタシが一人前になれねーんだわ」だそうです。少なくとも僕が不幸になればなるほど、レーコさんは得するみたいです。
「オラ、さっさとテメーのクラスの確認しねえか。最初に舐められっとずっとパシリさせられるからな。負けんじゃねーぞ」
「進学校にそんなベタな不良はいないと思うよ」
「あめーんだよアキラぁ。いいか? 最近のワルは昔みたいなヤンキースタイルじゃねーんだよ。先公の見えねーとこでわかんねーようにネチネチやってくんだよ」
「あー、うん。そうだね」
「このアタシが憑いてんだ、クソみたいなイジメに合うんじゃねーぞ?」
「でもそうやって僕が不幸になった方がレーコさんには都合がいいんじゃないの?」
「バ、バーカ! そんなんで不幸になられてもアタシの実力って証明できねーだろーが! バーカバーカ!」
罵倒のレパートリー少ないなあレーコさん。
見るからにひょろひょろした僕のことを心配してくれてるんだろう。でも厄病神がそれでいいのかな。ありがたいけど。
で、クラスは二組でした。二年二組。
去年は入学式の日に自分の名前が名簿に載っていないというハプニングがあって、心臓止まるかと思ったので今年はツイてるなあ。
教室に入ると、黒板に席次表が張り出されていました。
出席番号順に列になっている感じ。
「アキラちゃん!」
声をかけてきたのは、
「同じクラスになるの久しぶりだね! 一年間よろしくね!」
「あ、うん。よろしく」
笑美ちゃんは家がお隣の幼馴染で、小学校の頃はよく一緒に遊んだ仲なんだけど、
「あのさ、三波さん」
「なあに?」
「学校でアキラちゃん呼びはやめてくれないかな」
「え? なんでだめなの?」
「は、恥ずかしいよ」
「えぇー」
ものすごい不服そう。
でもこんなことで目立ちたくはない、という僕の気持ちも少しは酌んで欲しいんですが。
「じゃあね、私のこと昔みたいに呼んでくれたらいいよ!」
「昔みたいに、っていうと」
「エミちゃん、って」
ハードル高いです。っていうかそっちの方が無理です!
「どうするの?」
にこにこ顔で選択を迫ってくる笑美ちゃん。
「じゃあ、アキラちゃんでいいです……」
「やったぁ! あ、私のことも昔みたいに呼んでくれていいからね!」
そう言い残して笑美ちゃんは軽い足取りで自分の席に戻っていきました。
「おーおー、お熱いこって」
肩越しにレーコさんが冷やかしてくるけど、
「そんなんじゃないよ。彼女は友達のいない僕に気を遣ってくれてるだけだよ。そういう優しい子なんだよ昔から」
「はー、そういうもんかねえ」
空中で胡坐をかいてレーコさんは興味なさそうに髪の毛をいじってます。
始業式はつつがなく終わり(僕にしては珍しく!)、ホームルームでは委員決めが行われています。ふたりのクラス委員の選出から躓いていました。一人は立候補で決まったものの、もうひとりは誰も手を挙げず、といった状況で停滞していました。
「もうめんどくせーから、オメーがやれや。クラス委員」
と、言うのはレーコさんです。
「嫌だよ。僕は図書委員とか、せめて美化委員とか」
「根性無しが」
「そんなこと言われても」
結局、最終的に先生が時間切れを宣言して、ジャンケンにて決定することになって、それで、負けたのはハイ、僕です。知ってました。
始業式の今日は午前だけで終了。
下校の時に笑美ちゃんに待ち伏せされて一緒に帰ることになってしまいました。
「クラス委員がんばってね!」
「ぜ、善処します……」
「うん」
「うん……」
あまり会話が続きません。僕が口下手なせいです。
と、サイレンの音が大通りの方から聞こえました。
目の前を横切っていく消防車両。
そっちは僕の……!
案の定、僕の家でした。放火により全焼。犯人は捕まったそうですけど、家がなくなりました。
焼け落ちた家を呆然と眺める僕に、笑美ちゃんはこう言ったのでした。
「アキラちゃん、しばらくの間
「……はい?」
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