第31話

 見つかった四人は岩陰から姿を現した。それを見て髭の男が更に驚いた。

「居なかったら笑えたんだが、本当にいるじゃねえか。良く分かったな」

「危機意識の高さが俺の一番の長所だからな」

外套の男が髭の男を見てしたり顔で笑う。髭の男の全身には赤い血がべっとりと付いている一方で、外套の男には返り血一つない。四人をよそに話す対称的な二人に、ハルシウスが尋ねた。

「おぬしら自分たちのことを護衛軍と言ってたの。ここで何をしていたのじゃ」

すると、二人はこちらを振り向いた。髭の男の眉がピクリと上がり、不快そうな顔になる。

「見ればわかるだろ、指導だよ。それにしてもお前ら良くここにこれたな」

二人がこちらを見ていると外套の男が突然ハッとなり、ルミオを指さした。

「お前はルミオだな! まさかこんな所にいたとは」

「なんだ、知り合いだったのか。それなら最初から……」

髭の男が尋ねる途中で外套の男は手で男を制止した。しかし、名前を言われた当のルミオは首を傾げている。

「僕のことを知っているんですか?」

その反応を見た男は驚いたが、暫く考えるとくっくっくと不適な笑みを浮かべ始めた。プリシラは依然としてその男を見て何かを考えるようにずっと沈黙を貫いている。

「記憶を無くしているのか、面白い。そうだな、教えてやるか。お前はな……」


 急にプリシラの目が大きく見開いて叫んだ。

「聞いちゃだめ!」

声が届かないようにルミオの耳を塞ぐと、男を睨む。男は最後まで言えずに舌打ちをすると、抱えていた本をしまい、ポケットから白い手袋を取り出してはめた。

「おいおい、何邪魔してるんだよ」

両手袋から黒い炎が上がる。

「あなたがチェスリンだったんだね」

プリシラはルミオから手を離すと、杖を一本取り出した。それらのやり取りを見てハルシウスもダークネスロッドを身体の前で握る。

「どうやら好意的な相手ではないのは確かじゃな」

ルミオとルミナリスも構える。

「俺たちは最強だ、俺たちが全部正しいんだから黙って聞いてればいいんだよ!!」

髭の男が斧を振りかぶった。

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