少し嫌いがとても良い
暖花
第1話 出会い
それは他人に話すと「そんなこと?」と笑われてしまうような小さな出来事かもしれない。小さい優しさかもしれない。でもその時、確かにそれが私の中の何かを動かした、それだけで十分だったのだ。
「はーい、それじゃあ初めての高校でみんな緊張してると思うけど、自己紹介していこっか!」担任である本田先生がそう言って高校生活最初のホームルームが始まった。ちなみにうちの高校は名簿順で並んでいるので僕の番はまだ先だ、ゆっくり内容でも考えるとするかと思っていると存外、早く順番というものは回ってくるものである。
「次、矢野君おねがい」
「はい」
「千川中から来ました。矢野暖って言います。高校ではテニス部に入ろうと思っています。どうぞよろしく」
まぁこんなもんだろと思い、次の生徒の自己紹介を聞いて言った。まぁ楽しめそうなクラスではあるなと思って聞いていると最後の方に彼女はいたのだ。
「えっと、南中学校から来ました。三浦雪です、部活とかはまだ決めてないんですけど歌うのが好きです!よろしくお願いします」
とは言ってもこの時、僕は笑顔が可愛くていい子そうだなとしか思わなかった。僕が彼女に恋に落ちるのはまだ少し先のお話である。
少し嫌いがとても良い 暖花 @harubana
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