異世界に行ってください。行ったら帰れません。チートはありません。でも危険もありません。
布施鉱平
異世界に行ってください。行ったら帰れません。チートはありません。でも危険もありません。
『というわけで、異世界に行ってきてください』
「ちょっと待て、ここはどこだ。っていうか、『というわけで』ってなんだ。そもそもあんた誰だ」
『私は神だ。タイトル見ろ。いいから異世界行ってゴブリン倒して来い』
「タイトルってなんだ!? いや、突っ込みたいのはそこだけじゃない! 神だかなんだか知らないが、いきなり口調変わりすぎだろ! あとなんでゴブリンだ! 魔王とかじゃないのかよ!」
『お前が行く世界に魔王などいない。ゴブリンが最強の生物だ。あとお前、神に対してタメ口とかなくない?』
「うるせぇよ! 敬語使って欲しけりゃ、それなりの威厳ってもんを見せやがれ! あと俺の異世界行きを勝手に決定してんじゃねぇ! それにゴブリンが最強ってなんだ!? どんな世界だ!」
『我 は 神。 お 前 が 訪 れ る 世 界 は 、 幼 稚 園 児 く ら い の 強 さ の 人 間 し か い な い 世 界 だ 。
ゴ ブ リ ン の 強 さ は 、 小 学 生 く ら い 。
な の で 、 小 学 生 よ り 強 い お 前 が 行 っ て 、 異 世 界 の 人 間 を 救 う の だ 』
「…………その言葉の間空けた喋り方が、あんたの考える威厳か?」
『神は行間に宿るって言うじゃん?』
「その神はお前のことじゃねぇよ! ていうか何!? 小学生より強いって、馬鹿にしてんのか!? 別にそれなら俺じゃなくてもいいだろうが! 中学生以上の全人類がほぼ当てはまるだろうが! なんで俺だ!? なあ、なんで俺なのか理由を言ってみろコラ!」
『お前、ロリコンだろ?』
「……………………」
『異世界の人間は幼稚園児くらいの強さだけど、大きさは中学生くらいだぞ? お前は小学生くらいの強さしかないゴブリンをボテくりまわすだけで英雄になれる。英雄はモテるぞ~。中学生くらいの大きさの女の子が、キャッキャ、キャッキャ言いながらお前に群がる……もう、喰い放題だ』
「……………………」
『それでも、行きたくない?』
「行ってきます。今まで生意気言ってすみませんでした、神様」
『うむ、素直でよろしい。では
「そこは『勇者よ!』でいいんじゃないすかね。あと俺、手ぇ出す気マンマンなんですけど」
『うるさい。さっさと逝け、ロリコン』
「あ、はい」
こうして俺は光に包まれ、異世界へと旅立った。
「神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいい! 俺はお前を殺す! 何としてでも殺してやるぞ! 聞いてるのか、神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
俺は血の涙を流しながら、天に向かって吠えていた。
神に騙されたからだ。
確かに、俺が行った異世界には小学生くらいの強さのゴブリンと、幼稚園児くらいの強さの人間しかいなかった。
俺は余裕でゴブリンをボテくりまわし、英雄になることができた。
しかし…………
「「「キャッキャ、キャッキャ」」」
いま、俺の周りにまとわりついている
一応服を着ているし、道具も使えるから人間と言えなくもないかもしれない。
でも、言葉は『キャッキャ』しか喋れないし、外見はニホンザルそっくりだ。
…………
そう、神は言っていた。
『中学生くらいの
中学生くらいの
……………………
………………
「ロリコンじゃなくてケモナー送るべきだろうがぁああああああああああああ!」
俺はズボンのチャックを下げようとしてくるメスザルから全力で逃げ出した。
だが、どこに逃げればいいのか。
この世界には、ゴブリンとサルしかいないのだ。
当然、逃げた先にいるのもゴブリンとサルだ。
…………
…………
いや、諦めるのはまだ早い。
もしかしたら、他にも生命体がいるかもしれないじゃないか。
そうだ。
エルフを探そう。
ゴブリンがいるようなファンタジー世界なのだから、もしかしたらエルフもいるかもしれない。
いや、もうこの際サルでさえなければヒゲの生えたドワーフ女でも構わない。
探すんだ。
俺が手を出せる女を…………
『いないよ?』
……………………
「神ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!!!」
異世界に行ってください。行ったら帰れません。チートはありません。でも危険もありません。 布施鉱平 @husekouhei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます