【感染者】

ほるほる

即興小説・お題[傷ついた電車][ゲロ]


大陸のどこかの国で未知の感染症が流行していた。

ネットではゾンビウィルスなのではという噂が立っているらしい。感染すると凶暴になって誰彼構わず襲いかかるらしい。まぁゾンビなんてあり得ないしその辺は作り話だろうけど。


そんな話を友人と飲みながら話していた。飲み会は盛り上がってハシゴして…それからあまり記憶がない




朝、通勤電車、完全に二日酔いだ、最悪


僕は吐きたくて仕方ない。こんな人の多いところで吐いたらドン引きされてしまう

必死に耐えて耐えて耐えて…

ギギー

突然電車が止まった。車体が大きく揺れて誰かの鞄が僕の溝落ちに直撃した。あっ

吐いてしまった。

「きゃー!きったな!」

女子高生の言葉にひどく傷ついてもう顔もあげられない

満員電車なのに僕の周りだけ人がいない


アナウンスがなる「車内のお客様、大変失礼致しました。人身事故によりこの電車は一時停止させて頂きます」

「なんだよまた人身か」

「遅延証明出してもらわなきゃ〜」


なかなかまわりの人は自分たちの都合ばかりで声をかけてくれない。

さすがに僕を哀れに思ったのか奥にいたおじさんが背中をさすってくれた。

「大丈夫ですか?」

「申し訳ないです」

「具合悪いの?」

「やあ、昨日飲み過ぎたせいです…」

「ああーオレもうっかり飲み過ぎることありますよ。まあ、こういう時もありますって」

なんていい人なんだ。女なら惚れてる。


ビービービービー

突然車内全員のスマホが警告音を発した。

びっくりした拍子にまた吐気を催した。気持ち悪い…


『速報 未知のウィルス国内初感染者A区で確認されました。A区は只今から閉鎖区域となります。感染者には現場の判断で安楽死の処置を行うとのことです』 


「ちょっと、ここってA区よね?」「閉鎖?A区から出られないってこと?」「検問所の検査で陰性だったら出られるらしいよ」「感染したらどうなるの?」 


「ねぇ、あの人やばくね?」


女子高生が僕の方を見てそう言った、大勢が僕を怯えるような目でこちらをみている

「いいや…僕は違う!感染者じゃない!ただの二日酔…うっ!!」

僕はまた大勢の前で吐いてしまった。それがまた大勢の不安を煽ったようだ

「やばいよ早く誰か呼ばなきゃ、ケーサツ!ケーサツ呼べよ!」「お前!そこから動くな!」


おじさんは立ち上がって僕を庇った

「皆さん落ち着いて下さい。この人はただの二日酔いですよ。そんな邪険な態度とらないで!ね?」

「うるせぇ!近寄るな!」


おじさんは罵倒されてもへこたれずに僕を庇ってくれている

おじさん…!めちゃくちゃいい人だ!!


「もういいんですよおじさん!この状況で吐いてたら僕が感染者だと勘違いされても仕方ないですよ、でもありがとうございます…」

「違うよ!!」

女子高生が叫んだ

「?何が違うって…?」

「吐いてる方のあんたじゃなくてさ、おじさんの方だよ!!」

「おじさん…?」


僕はおじさんの顔を覗いた。

おじさんの目はみるみる充血し、肌は土色で黒いまだらが浮き出ていた。

「ほらネットニュース見て!感染者は目の充血と肌の変質の症状が出るって!!」


おじさんはだらんと佇んでいる、そしてゆっくり僕の方へ身体を傾ける


頭で考えるより先に僕の身体は動いていた。僕の本能が逃げろと言っているのだ


ドン


目の前に閃光が走った


…一瞬のことで詳細は分からなかった。

ただ今分かっていることは

おじさんがライフルを持った防護服の男たちに囲まれて

ピクリとも動かなくなっていることだけだった。


END

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【感染者】 ほるほる @666mituura999

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