橋の中

第八話

 ――着物姿の女性が、立っていた場所で歩みを止める。


 何を見ていたのかを探す様に、視線を泳がし真正面に戻る。

 背後に車が差し掛かる。

 エンジン音が夕焼けに染まり、ヘッドライトが点灯する。

 しかし人影は一人分。

 両手首に何も巻いていない。

 生きてる誰かを照らし出す。

 通り過ぎた車が橋を渡り切った先にある丁字路手前で停まるのを見て、思う。

 家に帰ってから、誰かは首を傾げたのだろう。

 お風呂に入って。眠りにつく前。


『今日もあの橋に、幽霊がいる』


 ――と。

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