探し物語【橋姫】
口一 二三四
橋の下
プロローグ
――着物姿の女性が、橋の上に立っている。
何をするでもなく佇む姿は日本画の様で、だからこそ現代的な風景の中際立って見えた。
袂に車が差し掛かる。
エンジンを夜に響かせ、ヘッドライトで女性を照らす。
けれど人影は現れず。
両手首の飾りは揺れず。
光は着物をすり抜ける。
通り過ぎた後。
橋を渡り切った先にある丁字路を右へ曲がる車を見送って、思う。
家に帰ってから、運転手は言うのだろう。
家族に直接。友人にメッセージで。
『今日もあの橋に、幽霊がいた』
――と。
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