shadow
@kukuli
第1話
14:17分
川縁にある小さな木造の家。
玄関は開け放たれ、中ではこの家のおばあさんと近所に住む白髪のおじいさんがいつも通り話しをしている。
私は今日もその光景を目の端で捉えながら、家の前の小道を通り過ぎてゆく。
この場所には、色とりどりの小さな花が咲き、花の周りには蝶が舞い、森の中からは微かに小鳥のさえずりが聞こえてくる。
ここは、穏やかで優しい世界が広がっている。
私は、優しい日の光と美しい景色に心満たされながら同じペースで進んでゆく。
ここはとてもいい場所だ。
できることならずっと居たい。
たとえ、同じ毎日が繰り返されていても。
この世界で、私達が歳を重ねていけたら…
この先ずっと、同じように穏やかな日々を過ごすことができたら…
15:00
大きな木の影で、いつものようにみんなが待っている。
「変化は?」
いつものセリフ。
「大丈夫」「そっちは?」
「大丈夫」
私達は顔を見合わせ、そのまま小さく頷くと、別々に歩き出した。
ここへ来て、3日が経った。
私達はここの住人に気付かれないように、細心の注意を払いながら過ごしている。
ここの住人に些細な変化が起こらないか…
この美しい世界に些細な変化が起こらないか…
この2点に注意しながら、ここを観察している。
この世界に少しでも変化が起こったら…
いつも舞っている蝶が、反対に舞っていたら…
いつもの小鳥のさえずりが違う音色だったら…
いつもの空に浮かぶ雲の形が違ったら…
何か…この世界に些細な変化が起こったら…
それは…
やつらが来たというサインだ…
1番最初の些細な変化は影から始まる。
影が変化するとまず、人が変化する。
そして、その後の数日で、この美しい世界は暗黒の世界となるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます