第26話 頼み

「というわけで、魁斗に協力してもらいまーす。」


「いぇーい。」


「…。」


地獄かよ。


なんでもっと喜ばんのじゃ。

特にたっくんは。


「いや、今思ったらこいつ今日の夜、誘われてたよなーって、事後だろ。」


「ふぁっ!え、可愛い子!?」


「なんであっくんが食いついてんの。」


「僕はみんなの王子様だから。一人の子だけを特別扱いはできないなぁ。」


「嘘だねー、その子、俺らのクラスの子で仲良いから聞いちゃったし〜。」


「卑怯だな!」


「え!誰!?」


「やっぱりーやったあとじゃーん。あっくんそいつに近寄ると危ないよー。」


「お前!カマかけたな!」


「魁斗、猫が…」


ほんっと、うるさいな!


喧嘩を始めた2人を氷で頭を冷やせと叩きつけしばらく放置した。


「で、詳しい説明、欲しいんだけど?」


魁斗が俺に氷を投げ返してきてそれを受け取るとすぐに消えた。


「うーん、どこから話すか…、軽くは説明したし…。」


「全部話していいんじゃない〜?この人機密機関の人間でしょ?最年少の。」


「拓は全部知ってるんだね。」


「今更猫被んないでくれる〜?気持ちわるーい。」


「わかった。で、全部とは?」


「まぁ長くなるし、コーヒーでも飲みながら聞いてよ。」


俺は淹れたてのコーヒーを魁斗とたっくんに渡して話し始めた。


杏様が神の使いである可能性があること。

俺たちの師匠である佐久間さんが、近い未来、この国を滅ぼすかもしれないこと。


話している時、魁斗は静かに聞いてくれていた。


カップのコーヒーが無くなる頃、話は終わり魁斗は真剣な顔で悩んでいた。


「正直この話は信じ難いが、上に報告するしかないだろう。」


「でも、それじゃあ杏は…。」


「そうだな、拓の話を信じるなら神の使いが二人もいるとなると、疑いの目が向く。もちろん宇野安にだ。もしかすると拷問もあるかもしれない。ただ1度こちらで身辺調査や出生調査はしている。それも偽装となれば、厄介だな。」


「どうにかならないの?」


「もう一度俺が詳しく調べる。単独でだから少し時間がかかるが、判断はそれからでもいい。ただ、もしも敵側だった場合、宇野安の命はないと思え。」


「杏はスパイとかじゃないから。」


「あの子そんなに器用そうじゃないしね〜。」


「スパイと思わせなのがスパイだからな。」


「ハイハイ。じゃあ調査の件は頼みマース。」


「あと、もうひとつ、佐久間さんの監視も、余裕があるなら佐久間さんの周りの人の調査も…」


「何故俺なんだ…。」


「佐久間さんはガードが硬いし俺達には到底無理だよ。けど魁斗なら佐久間さんとは仲良かったから俺たちよりは簡単に近づけるかなって。」


「…わかった。」


こうして俺たちの要望は受け入れられ各々やることを確認しつつ話題が少しづつ明るい方へ変わった。

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