第6話 魔導国の日常   

 薄闇が空を覆う夕方、あるマジックアイテム屋の店に薄っすら灯りが灯る。


 その店に陳列されたマジックアイテムを棚の端から端まで隈なく眺める女性がいた。


 腰までかかるその長く美しい金髪は根元で少し赤い帯で結われている。

 女性に似合わない重装備の鎧を纏い、右側半分の顔はその長い髪に覆われているが、その間から覗かせる容姿は美しかった。


 その女性は、一通りマジックアイテムの棚を見回ると、店の店主に詰め寄る。


「店主、この中で呪いに効くマジックアイテムはないかしら?」


「呪いってどんな呪いじゃ?」


「どんな呪いでもいいでしょ。とにかく、あるの?ないの?」


「呪いに効くマジックアイテムなんて、ここにはないね。他探しなよ。」


「この魔導国のマジックアイテム屋はすべて回ったわ。」


 それを聞いた店主は、ビクっとした。そして、店主は後ろ退り大声を上げる。


「あ、あんた、もしかして顔が溶けてるネーちゃんか!」



 店主は、マジックアイテム屋仲間から聞いていたのだ。


 顔が半分溶けている女が夜な夜なマジックアイテム屋を廻り、呪いを解くアイテムを探していると。


 そして、そのマジックアイテムがないと分かると、その店主に同じ呪いをかけていくという噂を。


「お、お助けをーーーーー!!」

 

 店主は、脱兎の如く店の裏口から外へと飛び出し、逃げた。

 

 店には、その鎧を着た女性だけがポツンと一人残された。


 そんな状況で、一人とり残された女性は大きな溜息をつく。


 次に、女性は店の入口に向かうと入口のドアの取っ手を掴んだ。


 女性はその取っ手に軽く力を込めると、そのドアを無造作に引き剥がす。


 そして、そのドアを陳列していたマジックアイテムの棚にぶん投げた。


―ドガァァァァァァァン!!


 ぶん投げられたドアはマジックアイテムの飾ってあるショーウィンドウに突っ込み、凄まじい衝撃音を発する。

 そこにあった棚やウィンドウガラスや数々のマジックアイテムは、その衝撃により無残な姿となって店前に拡散する。


 そんな衝撃音を聞きつけた店外の多くの通行人が、何があったのかと、そのマジックアイテム屋の目の前に群がり始める。


 通行人の群衆がザワツキ始めている中、ドアが無くなり、ただの空間になった入口から、その女性が何事も無かったかのように出てきた。

 

 その女性は、店から出ると通行人の群衆を軽く見渡す。

 すると、一人の純朴そうな若者に目を止め、近づくと小さな紙を手渡した。


「あなた、この店の店主が戻ってきたら、この店の修理代はここに請求するように伝えてくれるかしら?」


 髪を受け取った若者は、その女性のいかにも高貴な立ち振る舞いに圧倒され、黙って小さく頷いた。


 すると、女性は若者の横を過ぎ去り、群がり始めた通行人の群衆の中を颯爽と通り抜ける。


 そんな中、冷かな顔でその女性は小さく呟いた。


「ああ、すっきりした。」


 その女性―レイナース・ロックブルズは、魔導国の街道の中に消えていった。



―魔導国


 それは、恐ろしきアンデッドが支配する国である。


 そのアンデッドは、恒例となっていた帝国と王国の小競り合いの戦いに突如、参戦した。

 そして、魔法一撃で十八万人という虐殺を行い、王都の領土であったエ・ランテルを奪取し、今から約一年半程前、建国された。


 同盟関係にあった帝国もその後、直ぐに、属国として恭順する事になる。


 恭順後の帝国は、酷いものであった。


 何が酷いのかと言うと、その統治をすべて魔導国に一任したのだ。


 魔導国に言われるがまま、軍事力を縮小し、アンデッドの軍勢を自国内に招いた。


 はっきり言えば、属国とは名ばかりの完全な支配であった。


 多くの貴族を粛清し、鮮血帝と呼ばれていたジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスも今では、骨抜きにされてしまった。


 その事に、特別思う所などはない。


 基本的にジルクニフの部下でありはしたが、信頼とは程遠い関係で結ばれていたからである。


 ―それは、利害関係だ。


 そもそも、ジルクニフの元に居たのも、自分の目的が達成しやすいと判断したからに過ぎない。


 初めは、『復讐』であった。


 すべては、あのモンスターから受けた死の呪いが原因だ。


そのせいで、私の人生は天災級に狂ってしまった。


 ―顔の右半分が醜く溶けてしまう呪い‥‥


 戦で見るも無残な傷を負った者、両腕などの体の一部を無くした者達が聞いたら

きっとこう言うだろう‥‥


 『その程度がなんだというのだ!』と‥‥


  自分が、もし、面と向かれてそう言われたら、こう言ってやるつもりだ。


 『あなた方と一緒にして頂きたくはないわ。私は、あなた方の数十倍の屈辱を…地獄を味わったのですのよ!!!』と。


 レイナースが、そう思いに耽りながら魔導国の市街地の街道を歩いていると、自らの顔から生々しい体液が地面に向かって滴り落ちていこうとしていく感覚を覚える。


 レイナースは、懐から慣れたような手つきで、ハンカチを取り出し、自然の流れのようなスムーズさで自らの顔にそれを押し当てる。


 (・・・・。また…これだ‥‥)


 この呪いで崩れた顔は常に膿を分泌してるので、時折、布で拭かないと体の方まで流れ落ちてくる。

 だが、それだけならまだいい…


 その膿は、なにより臭い!


 だから、体にはキツイ匂いのする香水を常に振りまかなくてはならない。


 この呪いを受けたせいで、家族からは追放され、婚約者からは拒絶された。


 その後、ジルクニフに出会うまでは、苦難に次ぐ、苦難の日々であった。


 そんな追放した家族、拒絶した婚約者については、今となってはどうでもいい事だ。


 彼らもあの世でしっかり反省してくれているだろう…


 しかし、この呪いを解かない限り…かつての自分を取り戻さない限り…


 私に安息に訪れる事はないのだ…


 そんな私は、自分の呪いを解く最善の選択を模索していた。


 そして、模索した結果、一つの結論に達した。


―魔導王。『アインズ・ウール・ゴウン』


 この世のマジックキャスターの頂点。


 いや、それだけではない。


 帝国一と言われた武王を近接戦闘で勝利したという武、そして、何よりあのジルクニフさへも赤子のように捻る知…


 そんなこの世のすべての頂点と言われる者であれば、私の呪いを解く事など造作もないことではないのか、と。


 そう考えた私は、魔導王の事を調べ始めた。


 しかし、帝国の四騎士として帝国に仕えている立場で得られる情報には限りがあった。


 そして、帝国ではこれ以上の情報が得られないと判断した私は、ジルクニフに魔導国への転属を進言した。


―帝国四騎士の『重爆』が魔導国に行くというのだ。


 当然、猛反対されるか思われたが、その進言は、ジルクニフより二つ返事であっさり許可された。


 意外には思ったが、私は気にしなかった。


 そんな事よりも自分の願いが叶えられる希望に胸を膨らませていた。


 その後、いろいろな手続きを経て、現在、魔導国の訓練担当騎士としてこの地にいる。





 すっかり日も暮れ、夜の闇に覆われた市街地には、街灯に魔法の光が灯り、すっかり夜の街へと変貌していた。



 レイナースは、魔導国の市街地を目的もなく歩いていた。


 夜の街へと移り変わった市街地の街道には、多くの人々が往来する。


 いや、正確には、多くの、人間、異形種、亜人、アンデッド共と言った方がいいだろう。


 一か月前の赴任直後、この光景を見た時、どこの地獄絵図だと思ったものだ。


 しかし、人間とは順応性が高い生物だと、我ながら思う。


 三日としない内にこの光景に慣れてしまった。


 レイナースは、周りの摩訶不思議な情景を眺めながら思う。


(本当に不思議な国ね...)



 この地に赴任して一か月になるが、この光景以外でも驚きの連続であった。


 まずは、この国の労働環境である。


 この国では、一週間に二日も休みがあるのだ。

 しかも、二日連続で休んでもいいという。

 そんなに休んでも兵士は月単位で給金が貰えるが、減額等は一切ない。


 それに、一年以上働くと”ユーキュウ”と言う好きな時に休んでいい日が与えられるという制度があるらしい。

 はっきり言ってどんだけ休ませる気だと思ってしまう。


 そして、この国の治安状況も異常だ。


 はっきり言って、この国で犯罪は、無いといっていい。


 デスナイトからなる警備兵の存在もあるが、犯罪が起こった際、精神を操作する魔法を使用するという事が、窃盗などの軽微な犯罪の抑止となっているのだろう。


 それに、この国の税金徴収も異常だ。


 この国の税金は給与の一割程と格安となっている。


 帝国では身分によって異なるが、概ね三割程である。

 それでも他の国と比べると安い方である。

 私の聞く限り、通常は四割、酷い国では八割以上の税金を掛けている国もあると聞く。

 

 そして、この国の福利厚生がもっともヤバい。


 医療費は、国が半分を負担し、十二歳以下の子供は、無償で”ショーガッコ―”なる施設で教育が受けられる。

 しかも、食料まで無償で提供されるという大盤振る舞いだ。



 どんな者にも、仕事が与えられ、病気などで働けない者も、そう行った者を介抱する施設がある。


 つまりは、この国では職にも、金にも、食事にも困る人間が一人もいないのだ。


 どこの桃源郷かと思う。


 とてもアンデッドが支配している国だとは到底思えない。


 いや、アンデッドという人ではない存在だから可能なのであろうか?


 そうした制度もあり、休日を見つけては、魔導国中のマジックアイテム屋を廻り、自分の呪いを解くマジックアイテム探しを行っていた。


 しかし、それも今日で終わりだ。



 このままでは、魔導国に来た意味がない。

 考えていた最初のプランに移行する必要ある。


 それは―


 ―『魔導王に頼んじゃおう』プランだ…



 それは、一つ間違えば、死よりも恐ろしい事になるという自覚がある。


 そのプランを実行する勇気がなかったので、マジックアイテム屋巡りを始めたのだ。


 無謀な考えだと思ったが、この魔導国の現状を見る限り、魔導王は人間を無下に扱うようなアンデッドではないと判断した。



 (どう接触したらいいかしら…)


 今や、自分の立場は、帝国四騎士が一人『重爆』のレイナース・ロックブルズではない…

 赴任したての『新米訓練担当騎士レイナース』である。


 とても、一国の王に面会を求められる立場に居ない…




 そんな頭を悩ませながらこれからの事を必死に考えていたレイナースに向かって呼びかける声があった。 


「あの、魔導国の兵士の方でしょうか?」











 ―黄金の輝き亭。


 それは、魔導国にある上級冒険者御用達の宿屋である。


 そのラウンジにある高い椅子には、ちょこんと赤いローブが掛かっていた。

 いや、そう見えただけで、実際は、赤いローブを全身に纏った小さな体躯の者だった。


 「あああ!」


 その者は、苛立ちの声を上げて突然、ラウンジの机をガンガンと両手で叩く。

 顔には、仮面を付けているので、その表情は、分からなかった。


「せっかく、魔導国までに来たというのにモモン様にいつ会えるんだ!」


仮面の女―イビルアイが苛立ちながら叫んだ。



 魔導国に入って三日、イビルアイのモモン様に会いたい欲求は限界に来ていた。


「おいおい、落ち着けよ。イビルアイ。」


 向かいにいた巨躯の女がイビルアイを諫めようとする。


「これが、落ち着いていられるか!モモン様に会うために魔導国に来たんだぞ。早く、依頼を遂行するのが冒険者の責務じゃないか!」


「どっちかっていうと、お前のは、責務じゃなくて、私情の方だと思うがね。」


「うっ!」


 巨躯の女―ガガーランの言葉をイビルアイは否定できない。


「だから、最初から、魔導王の城に行って、たのもうって言っちまえばいいっていったんだよ。」


「お前は、だから脳筋って言われるんだ!」


「なんだと!」


「我々は、ラナーの書状を、魔導王に知られないようにモモン様に渡す様依頼されたのだ。魔導王の城に行ったら、元も子もないだろう。」


「そういうもんか『モモン様を先に出して下さい』って言えば良くね?」


 ガガーランの言葉にイビルアイは頭を抱える。

 そして、コイツに何を言っても無駄と判断する。


「今、調査に行っているラキュース達の帰りを待つしかないな。」


イビルアイは話題を変えた。



 ラキュース達の帰りを待つ間、イビルアイは、ローブの中にある今日市場で買ったある物を握りしめて、顔(仮面)を赤くする。


 仮面に中で、「フフフ」と不気味な笑いが生まれる。


 イビルアイは今日市場でとんでもない物を見つけてしまったのである。


―それは”モモン様フィギュア”である。


 それは、まるでモモン様がそのまま小さくなってしまわれたのかと思う程、精巧に作られていた。


 金貨五枚という高価な品物であるが、長年のモモン不足に陥っていたイビルアイにとって、何の障害にもならなかった。



(ああ、今日はこのモモン様と一緒に寝るんだ~)


 イビルアイの思考はすでに違う次元に飛んでいた。



 しかし、このフィギュアを売っていたドワーフの店主の話を思い出し、我に返る。


(なんで、モモン様のフィギュアよりアンデッドのフィギュアの方が売れるんだ!)


 このフィギュアを購入した店でイビルアイは情報収集を兼ねて、その店主であるドワーフにいろいろ話を聞いていた。


 その時聞いたのが、『この魔導国で人気があるフィギュアBEST3』である。


まずは…第三位…


 『ナーベ』


 言わずと知れたモモン様の相棒である。

 まあ、モモン様の前座としてのランクインであるとその時の私は思っていた。


その理由は…


 『見ているだけで幸せなのに、こんな精巧なフィギュア!!貰っていいんすか!!』

 ※購入者が言ってます。


 『これを手に入れたら、もう人間の女なんてカスっすよね!!』

 ※全年齢対象の健全な商品です。


 『これを家宝にして、子々孫々受け継いでいきます…』

 ※伝説の何かではありません。


 など‥‥個性的な面々に購入されていったのだそうだ…


そんなこんなで第二位…


 『アルベド』


 ‥‥会った事はないが、魔導国の宰相らしい。


 一年程前に王国を訪れたらしいが、その後の王国では『アルベドフィーバー!!』なるものが蔓延したという話を聞いた事がある。


 あのラナーを凌ぐという美貌、妖艶さ‥‥


 そして…なんでも…ムチムチプリンだった…らしい…


 そんな黒船的に現れたグラドルに王国中のバカ男が色めき立ちバカ騒ぎをしていたという話だ。


 それならば…この順位も納得しなければならないな‥‥と、イビルアイは、自らの体たらくを嘆いた。


 そして、いよいよ第一位…


 イビルアイは、店主からその発表を聞かされる前までは…


 (まあ、当然であれば当然の結果であるな‥‥。いかに、ムチムチプリンと言えど、モモン様の魅力には敵うまい!!)


 イビルアイはそう思った。というか、確信していた‥‥


 しかし、店主から聞かされた名前は、イビルアイの想定にない者であった。



 栄光ある魔導国フィギュア売り上げダントツ一位は!!


 『魔導王フィギュアシリーズ!!』



―魔導王フィギュアシリーズ。


 それは、その名の通り、魔導王を模したフィギュアである…


 それは、一月に一シリーズが限定品として販売された。


 金貨百枚、各シリーズ限定四十一体という超高級品であるが、その人気は凄まじく、新作の発売日の徹夜待ちは当たり前、中には一ヶ月泊まり込みが発生する程の人気だったらしい。


 しかも、その列に並ぶのは美しい女性ばかりだったという。


 そんなダントツの売り上げを誇っていた品であったが、暫くして、なぜか魔導王フィギュア生産が、魔導国の法律で禁止となった。


 その理由は不明であるが、ある噂が原因となったのではないかと言われいた。


 『このフィギュアを手に入れた者は、闇夜に可憐な少女の悪魔に八つ裂きにされる』


 とか…


 『その少女の悪魔に襲われたと思ったら、その直後、角の生えた別の悪魔が乱入し、フィギュアを賭けたデスマッチが繰り広げられた』


 とか…


 『そんなデスマッチの中、ウニョウニョした別のお姉ぇ言葉を使う本当の悪魔が現れた』


 とか…


 そんな異次元の出来事のような噂が魔導国中を駆け巡った事で、魔導王のフィギュアが製造中止になったのではないかと…


 そんな販売中止になった魔導王フィギュアシリーズは、伝説となった。


 そんな数々のフィギュアの中で、モモン様フィギュアは今ではそれ程売れてはいないとその店主は言っていた。


(な、な、な、なんだとぉぉぉぉぉ!!

 こ、この国の人間は頭がおかしいんじゃないのか?

 なんでモモン様フィギュアを買わないのだ!!!

 モモン様より格好いい男などこの世に存在しないだろうが!!!)


 イビルアイは怒りで体を震わせた。




「ただいま。」


「戻ったわ…。」


 その時、ラキュース、ティア、ティナが偵察から戻ってきた。


 そして、ラウンジの空いている椅子に各々座っていく。


「遅かったな。どうだった?」


 イビルアイは三人に尋ねる。


「モモン様は、やっぱり魔導王の城に籠っているらしいわ。」


「で、魔導王の城の方は?」


イビルアイは、魔導王の城の調査に向かったティア、ティナに尋ねる。


「ダメ」


「ムリ」


「入ったら」


「死ぬ」


 二人は声を合わせて答える。


「そうか…」


 イビルアイは、想定していた結果であるが落胆し頭を垂れる。


「城の背面に入れそうな箇所があったけど…」


「あれはおそらく罠‥‥」


 二人が分担して話す。

 いつもの事なので誰もツッコまない。


 普段の仕事であれば、こういう時、そこいらのスラム街で、金をやれば何でもやるような禄でもない男を雇って確かめるのだが、残念ながらこの魔導国にスラム街は無い。

 っていうか、金をやれば何でもやるような禄でもない男がいないという方が正解か。

 

―この国は恵まれ過ぎている。


 この国の冒険者ギルドに顔を出してみたが、そこは冒険者ギルドであって、我々の知っている冒険者ギルドではなかった。


 冒険者ギルド内は活気に溢れていた。


依頼書のボードを見ると―


”新人研修募集のお知らせ”


”ミスリルソード貸し出し無料 数に限りがありますのでお早めに”


”はじめてのダンジョン攻略 初回参加者には金貨一枚贈呈”


”レッツ!ドブの大森林で薬物採集 デスナイト無料貸し出しあり”


”リザードマンと遊ぼう!リザードマンの村で生活体験!報奨金あり”


”鍛冶屋見習い募集 未経験可 ドワーフの親切指導有”



―などという、ユルイ依頼書が乱雑していたのだ。


 はっきり言ってこんな仕事で金を貰えるなら、危険を冒して金を貰おうとする人間はこの国には存在しないだろう。



 かといって、初めて訪れるこの魔導国に、モモン様と引き合わせてくれる人脈もなかった。


 イビルアイがこれからの事を、仮面の顎に手を当てながら考えている時、後ろから突然、声を掛けられた。


「あの、青の薔薇のみなさんですよね?」










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