この当たり前な聖戦の中で私はただ一つの挑戦権を掴み取る

がーす

第0話 序章~神々の気まぐれ~

真っ白な世界。その場に音は存在しない。

どこまでも広がる果て無きその場に似つかわしくない二対の其はいた。

どちらとも姿形はほぼ同じ。


片方は真夏の曇りなく広がり続ける空を連想させる【青】を身に宿し。

片方は秋の夕暮れ時の寂しさをもつ太陽を連想させる【赤】を身に宿す。

二対の其はヒトのようにも見える時も在れば、巨大な大蛇のように体を膨らませる。

形など在って無い。そう言わんばかりの其は互いに飽いていた。

虚無とも言えるこの空間に。

無限ともいえる膨大な時に。

大神より授かりしこの空間をどのようにすべきか。そしてどうしたいのか。


「【赤】よ、我は飽いた。父より賜ったこの場をどうすべきか未だに決められぬ」

「【青】よ、我も飽いている。されど母より辞することは認められておらぬ」


この空間を授かり早数千年。何度か他の神々を真似した世界を創ろうとした。

ただ、真似をしただけでは面白くなかった。何故なら結果はもう見えているからだ。

飽きる度に無に戻し、また他の世界を作り替える。その行為自体にも飽きが来てしまった。


「仕方があるまい。またあ奴らの世界を参考にでもするとしようか」

「今回はどの世界を見てみようか」


其の周りにはいつの間にか沢山の世界を凝縮したような球体が無数に輝く。

ある世界は龍が世界を統べ、空には沢山の島が存在していた。

ある世界には魔王なるものが今まさに撃ち滅ぼされようとしていた。

ある世界はいま生まれたのであろう、激しい気候に生き物の陰すら見えない。


無数にある世界の中で、二対の其が目に止めた。

「【赤】よ、この世界はなんだ?」

「【青】よ、この世界はなんだ?」


其等の目に入ってきた世界は、ヒトが栄えた世界だった。

大なり小なり争いはあれど、種全体が滅ぶことはなく続いている世界。

二対はその世界で多種多様な【遊び】がある事に大きく興味を惹かれた。

「【赤】よ、我はこのゲームとやらが気に入った」

「【青】よ、我もそのゲームとやらが気に入った」


偶然にも世界的に人気のある対戦ゲームに興味を持った二対は想う。

こんな世界を自分達のゲームとすればどれだけ楽しいだろう、と...


「【赤】よ、これから我は貴様の敵とならん」

「【青】よ、これからは我々は暫しの間敵とならん」

ゲームの為には物語たてまえが重要となる。

遥か昔、二対の神は仲良く世界を作り上げた。

静かなる青き神は全てに愛を注ぎ、猛き赤い神は全てに力を与えた。

長い時を経ていつしかお互いの主張は対立し、平和だった時代は幕を閉じた。

どちらの主張が正しいのか、世界は二分され、争いの時代が始まった。


お互いの代理が戦う事により、勝った方の世界が広がる。

その戦いは聖戦とされ、誰でも参加でき、誰もが法則(ルール)を破れない。


① 制限時間 10分(現実の経過時間)(参加者の時間は5時間)

② 参加数 両陣営とも5名+従者各2名の最大15名

③ 先に相手の陣地の守護龍を破壊した側の勝利とする

④ 双方の守護龍が健在の場合は守護獣の残り数の多い方が勝利とする

⑤ 守護獣が同数の場合、相手をより倒した方が勝利とする


敗北を繰り返した者はこの世より消滅する(弱者は存在を認められない)

エリアを制圧された場合、そのエリアに存在する全てのものは相手側の所属となる。

全てのエリアを制圧された場合、制圧された側の神は滅び、世界は統一される。


神の気まぐれにより生み出された世界は、こうして戦いが日常となる世界へと作り上げられた。

楽しい楽しいゲームのはじまりはじまり…

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