第12ページ 先に女の方が俺に乗っかった

 見知らぬ女と二人きりで、しかも四つん這いの上に俺は股がってーー

 どう伝えれば、小学生の妹に誤解がないよう説明できる??


 脳をフル回転させて考えている所で、女が更に追い討ちを発した。

 表情を何故か赤面させ、恥じらいながらの台詞だった。



「あっ……お、襲われた……!私はもうお嫁に行けない……!」



「お前の方から先に俺に乗っかって来たんだろうが!!」



 俺は咄嗟に叫んで修正した。


 けれどこれが更に事態を悪化させたことに気づいたのは、妹の台詞の直後だった。



「お兄ちゃん最低!!」



「えっ!?ちょ!待て!お兄ちゃんをまるで腐った生ゴミを見るかのような目で見るな!」



 そんな俺の想いは届かず、妹は泣き出しながら逃げて行った。



「今日で妹との信頼は死んだ……!全て話さないと許さねぇからなお前!」



 俺は泣きたい気持ちが溢れ出しそうだったが、怒りが真っ先に込み上げてきた。


 立ち上がると同時に、女の両手を背中の後ろで取り押さえる。

 そのまま女の身体を、立ち上がらせるように持ち上げ、近くの壁に押さえ付けた。



「それで!?親父が何だよ!?シークレットなんとかって何だ!?」



 俺の問いに、女は屈する事無く言い返す。



「私を離せ!私にもし何かがあれば、仲間に連絡が入るようになっている!」



「ベタな脅しだな!」



 この女が言う仲間というのが、どれほどの脅威か知らないが、続いて言った女の台詞がーー俺にとって一番無視できないものだった。



「君の妹ーー音羽小香(おとわここ)と言ったか?小香(ここ)ちゃんがどうなってもいいのか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る