第32話 ゲーム内配信/ぶらり二人旅vs古代獣 Ⅸ
一度目の暴走モードが終わりを迎え、次の攻撃は吸い込み攻撃だった。
「ハヤテさん、僕の背中へ!」
足元にバットを突き刺し、その場で持ち堪えるジキンさん。
言葉の通り背中に周り!
その直後、私たちの方に舌が伸びてくる!
【このパターンはキツイ!】
【吸い込みと巻きつきとかコンボで放ってくるもんだっけ?】
【俺はみた事ない】
「ヘビー、薙ぎ払って!」
[キシャァアアアアアアア!!]
ヘビーの目から出た光線で焼かれ、ヒュプノは舌を丸めて……カウンター気味に張り手を突き出してきた。
吸い込みは継続中である。
まさかこの吸い込みもスタミナ回復効果があるのか!?
首を持ち上げられるようにしてヘビーの巨体が上空に打ち上げられる。
そこへもう片方の張り手が狙い……
「ヘビー、戻って!」
空を切る。
【ヤバイ、ヤバイ!】
【アキカゼさん、ヘビー使わされちゃった! 再使用まであと何秒!?】
【ショートワープで逃げればよかったのに!】
【それだとサブマスが直撃だぞ?】
【メカ捨てればワンチャン!】
【メカ捨てたら吸い込みを避けれないからどっちみち死ぞ?】
【手に汗握る戦い】
【空間吸い込み攻撃もスタミナ回復するのか!】
【でもタワーで吸収されまくってんだよな?】
が、その張り手はかつて領域にされた空間に突き刺さると勢いをつけて跳ね返り、伸縮限界を無視した伸びを見せた。
「ゲコォオオオオオオ!!」
【あっ! 跳弾攻撃】
【ここで来るのか?】
【あ、耐久50%切ってる】
【古代獣のビーム、特攻すぎるだろ! 耐久の減りがやばい】
【この跳弾、領域が増えるたびに凶悪になるんだよな】
【それ。張り手どころか舌も同じくらい伸びるから注意】
それは厄介だ。
そして領域を増やしてはいけない理由も判明する。
舌で巻きつけてからの吸い込み攻撃での突進。
ただの突進でも脅威なのが、勢いをつけて跳弾した!
空を跳ね、地面でバウンドして加速する。
物理無効のボディはこの技を可能とするための土台か!
「送還します! あれはバットで打ち返すのは無理だ!」
ジキンさんがメカのボディを捨てた。
それぐらいの速度で山二つ分の巨体が迫ってくる。
コメント欄でも上がっていた火力不足。
もし火力が足りていたなら、ここまで苦戦することなどなく倒せていたのだろう。
しかし私達は誰かのクリア方法を真似しようとは思わない。
そう思わないのは私だけで、ジキンさんは二つ返事で仲間を呼ぶ気満々であったけど、それはそれとする。
【突進跳弾やばばば】
【上からくるぞ、気をつけろ!】
【その張り手、跳弾するんですよ】
【アキカゼさん一乙したーー!?】
【ボム温存なら意味のある被弾】
【ヘビーをボム扱いすな】
【特効武器という意味ではボムみたいなもんやろ】
「ジキンさーん!」
【サブマスも後を追ったーー!】
【いや、あれは回避無理やろ】
【突進を跳弾させ始めたら無理ゲー臭くなるのほんとクソ】
「転身! ランナー!」
ジキンさんの姿が見たことのない姿に変わった。
いや、顔とユニフォームは一緒だ。
姿というよりカラーリングが違う。
バッターはパワーの赤。
ピッチャーは知性の青。
そしてランナーは疾風の緑である。
そこは黄色にして信号機になりましょうよ。
まったく、こういうところでネタに走らないんですから。
【足ほっそりしてるなー】
【小回り利きそうな足回りやん】
【逃げ回る用のビルドかな?】
「いいえ、走れば走るほどエネルギーを溜めるタイプです。使い所としては今が丁度いいでしょう!」
「ジキンさーん、速度で張り合うの?」
「それができるボディです。ハヤテさんはそこで見てて下さい。一緒に動くとバターになってしまいますので」
「それは老骨に堪えますね。お言葉に甘えてここで見学させてもらいます。あ、フェイク送っときますね」
「ちょっとぉおお! 僕にヘイト全集中してるじゃないですか! こういうのを余計なお世話って言うんですよ!?」
「がんばってーー。ジキンさんなら出来る!」
【超他人事で草】
【自分でヘイト役買って出たと思ったら】
【まさかの裏切りですよ】
【俺、タンクだけど仲間からあんな扱いされたらキレる自信あるわ】
【あれはキレていい】
コメント欄は相変わらず私に厳しい人達ばかり。
でもここで狙われるわけにはいかないんですよ。
ヘビーを使役できるEBPは残り30%。
ここは温存一択です。
ヒュプノが暴れ回ってから30分。
未だ耐久は40%。
あれから10%減らせたのは、ジキンさんの発電アタックを3回ほど決めたからだ。
まさか全身からエネルギーを放射する一見して自爆エフェクトを使うとは思わなかったよ。
巨大な爆発の中から煙を纏って出てきたのは迂闊にも見とれましたけど、あの顔じゃねぇ?
すぐに笑いに変わってしまいましたが、ランナーの活躍があったからこそヘビーのEBPが60%まで溜まった。
まだ放つ場面じゃない。
今はまだタワーとジキンさんががんばってくれている。
私は張り手と舌を掻い潜りながら身を潜めた。
そして迎えた二回目の暴走モードは大口を開けての吸い込みから始まった。
耐久は25%を切っている。後少しだ。
正直のところ、そう何戦もしたくない手合い。
付き合わせるのも出来ればこれで最後にしたい。
それぐらいの強敵。
ジキンさんは逃げるように壁を駆け抜け、私はショートワープで切り抜ける。
飛んでくる張り手と舌はジキンさんの発電アタックで切り抜け、最後の最後で私の踏ん張りがきかず、吸い込まれた。
「ちょ、ハヤテさん!」
【アキカゼさん、口に吸い込まれたら強制キルやで!?】
【ファー!? ここでまさかの脱落?】
【それは予想外】
【お爺ちゃーーん!!】
風操作を使って逆方向に勢いをつけるが、吸い込みの強制力は凄まじく、私の体はヒュプノに飲み込まれてしまった。
【アキカゼさん!?】
【え、ちょま!?】
【キルされた?】
【マジかー、ここまできて】
【そういやヒュプノ君、ちょっと顔色悪くない?】
【おまえヒュプノの顔色わかるとか何もんだよ?】
【そういや微動だにしてないな】
「まだだ、ハヤテさんはまだ生きてる!」
【え、どう言うこと!? 強制キルじゃなかったん!?】
【あ、ヒュプノ君地面に倒れてもがき苦しんでる】
【アキカゼさん何したんだ!?】
[キシャァアアアアアアア!!]
【あ、この声】
【おいおいおいおい、まさかヘビー!?】
【食われる直前に召喚!?】
【キタァああ!】
【ヒュプノの口から見事生還!】
【ヘビーの口からひょっこりアキカゼさん出てきてるの笑う】
【どう見ても喰われてる絵面なんですがそれは……】
「待たせたねジキンさん。少し脱出に手間取った」
「普通は死ぬらしいよ?」
「私には心強い相棒が居てくれたからね」
ヘビーの頭の上に乗り、しゃがんで足元に手を置いた。
【さっきまで食われてたのに変に説得力ある】
【頼れる相棒(非常食)】
【おいバカやめろ】
【食われてるのはアキカゼさんなんだよなぁ】
【しっかし耐久が5%まで減ってるのは体の中で暴れ回ってたから?】
「ヒュプノの体の中って暗黒空間でさ、暗いからライトつけてってヘビーに頼んだらビームで照らしてくれてね」
【草】
【そういえば目からビーム出ますもんね、その子】
【照明代わりにビーム出すな定期】
【そう言う問題じゃないんだよなぁ】
【|◉〻◉)その子、僕の前で呼び出すのだけは絶対にやめてくださいね? 食べられそうで怖いです】
【非常食が来たぞ!】
【魚に限らずなんでも食べそうだけどな】
【好き嫌いしないいい子じゃん】
【いい子(古代獣)】
【それは草】
【おーいヨルムンガンドー俺だー、一回でいいから討伐させてくれー】
【いいですよ(目からビーム)】
【ぐわーーーっ】
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