第33話 ゲーム内配信/ぶらり二人旅vs古代獣 Ⅹ
「さて残り5%! ここから気張りますよ? ジキンさんは自爆アタックの調整をお願いします」
「本当にネーミングセンスが残念ですね。なんですか、自爆アタックって。エネルギーバーストって技名があるんですからそっちで言ってくださいよ」
「嫌です」
【本当にわがままだな!】
【お互いにセンスを認められないんだろ。分かるよ】
【|′〻')どっちも頑固だから仕方ない!】
【アキカゼさん、身内から言われてるよ?】
【周知の事実だった件】
【それな】
【なんだかんだ勝てそうなのは草しか生えないけど】
【でもこれテイム前提なんだぜ?】
【そうだった!】
【すっかり忘れてたけど、テイム動画だったこれ!】
私達のいがみ合いに、無視をするなとヒュプノの舌が伸びる。
「させません! エネルギーバースト20%!」
自身のコアを起爆剤にして、自爆特攻みたいな散り際でこの世を去るジキンさん。私は決意を胸に空に身を滑らせる。
「仇は打つよ!」
【勝手に殺すな】
【それでもダメージ相殺させてるのはすごい】
【アキカゼさんはさっきからテイムの姿勢なんですよね】
【無駄死にじゃねーか!】
【だから殺すなって!】
耐久5%<テイムに失敗しました>
「まだ死んでませんよ!」
爆発後から煙を纏って空を切るジキンさんが空歩で空を蹴り上げながら猛ダッシュで戦線を離脱する。
[ゲコォオオオオオ!!]
ここでヒュプノが全く違う攻撃パターンをしてきた。
それが舌で巻きつけた空間を引きちぎり、振り回したのだ。
吸い込みからの叩き込み。
吸い込みでスタミナを回復させて、張り手が飛んでくる!
「ヘビー、またお願い!」
残りEBPは10%を切っている。
私の真横から大口を開けたヘビーがヒュプノの舌を丸呑みし、目からビームをその口元に叩き込んだ。
私は祈りながらテイムを連続で行使し続ける。
耐久4%<テイムに失敗しました>
ヘビーを召喚するEBPが尽きて、その肉体を維持できなくなった。そこへ飛んでくる跳弾させた張り手。
私はショートワープで逃げながらそれを回避。
だがもう一方の手が空中に居る私を捉えた。
「うぉおおおおおお、間に合えぇええええ!」
さっきから全力疾走で逃げ回ってたジキンさんが私と張り手の間に割って入る。
「エネルギーバースト40%!」
衝撃派で私も吹き飛ばされ、しかしヒュプノも間近でエネルギー波を喰らうことで耐久を減らしていた。
耐久3%<テイムに失敗しました>
ここからは泥試合だ。
また吸い込み攻撃しつつの舌の巻き付き攻撃。
今度は本体の突進が来る!
向こうも捨て身特攻のつもり何だろう!
そこまでテイムされたくないか!
「フェイク! からのショートワープ!」
フェイクで私に向いていたヘイトを剥がし、視界の奥に逃げ込んだ。跳弾による突進攻撃はその場所を執拗に狙うが私は既に逃げおおせている。
「まだまだぁああああああ!!」
ジキンさんのしがみつきからの自爆で耐久が削れた。
しかし突進攻撃中だった為、そのまま逃げ遅れてキルされてしまう。
ここまでジキンさんは3キルされた。もう残機はない。
ランナー型は大破し、ヒュプノは勢いをつけて残る私にヘイトを向けた。
耐久2%<テイムに成功しました>
<テイム枠が一杯です。テイムモンスターのどれかを逃しますか?>
衝突する一歩手前。私のネックレスに吸い込まれるヒュプノの残滓。ヒヤヒヤした。
これを逃したらもう一度再戦しなければならないところだった。メカを失ったジキンさんに攻撃手段はなく、私のヘビーも活動限界を迎えてEBPは0%のままだった。
これでヘビーのように1%まで粘られたら不味かった。
私はボール強化型/マジックを手放し、新しく入手したヒュプノを枠に追加した。
<テイムモンスターに名前をつけてあげてください>
蛙だからピョン吉……は安直かな?
しかしここでカッコいい名前をつけるとヘビーが可哀想だ。
私は一度思い浮かべた名前の通り打ち込み、それで決定した。
<次のとおりでよろしいですか?>
1.タワー:シャドウ強化型/タワー
2.ヘビー:EBヨルムンガンド
3.ピョン吉:EBヒュプノ
この錚々たる顔ぶれを見てくれ。
ちなみにEBはエンシェントビーストの略称。
古代獣って意味らしい。これらの枠は特殊ゲージのEBPを消費するモンスターだ。
ちなみに各古代獣ごとにゲージが違うのはありがたい。
ヘビーは青いゲージ。ピョン吉は赤いゲージだった。
ちなみに二匹同時には出せないようだ。
【倒した?】
【アキカゼさん、固まってる】
【いや、ニヤニヤしてるぞ。これはもしかして】
【多分テイムしちゃってるね】
【うぉおおおおおお、二連続テイム!?】
【今回はギリギリだったけどな】
【結局耐久何%でテイムしたんですか? 私気になります】
「2%でデレてくれたよ」
【相変わらずひっくいなぁ】
【それでも2%なのか】
【ワンチャンヘビーも2%でテイム可能なのかも】
【ちゃんとヨルムンガンドって呼んであげて】
【すっかりヘビー呼びになれちゃったよな】
【それで、ヒュプノの名付けは?】
【ドキドキ】
【ワクワク】
「ピョン吉」
【知ってた】
【そのネーミングから飛び出るヒュプノが今から楽しみです】
【それは草】
【実際それを投入できる戦闘フィールドって限定されそう】
【通常フィールドじゃ出せねーだろ】
【腐ってもレイドだぞ?】
【レイドがテイムできる時代なんだよな】
【そもそもテイマーって何だろう】
【まずこのゲームにそれらしいモンスターが居ない件】
【他のテイマーさんも頑張って!】
【無茶言うな! 討伐がやっとだぞ?】
【本当に精巧超人は頭おかしいタイムを残していったよ】
【あれは参考にしちゃダメ】
【してる人もいるんだよな】
【レムリア勢は積極的に参考にしてるぞ。それでも5分台だ】
「次は流石に僕以外の人員増やしますよね、ね?」
「そうだねぇ」
【あ、この顔適当に頷いてるだけだぞ】
【よくわかるな?】
【うちの爺ちゃんも言い逃れする時こんな風に顎さするもん】
【草】
「ちょっと、もう無理ですよ! 今回だってギリギリだったでしょう? 4の街も開いてないのに5に行こうだなんて言いませんよね。ね?」
【なんなら僕行こうか? ちょうどアキカゼランドも落ち着いてきたし】
「おっと、この軽薄な書き込みは探偵さんですね?」
【言 い 方】
【馴れ合いってレベルじゃないぞ】
【そこまでしてサブマスに無理難題を押し付けたいか!】
【サブマスは泣いていい】
【つか普通に今回大活躍だったからな】
【マジで三の試練のミラージュは今後必須だって気づいたわ】
【今アキカゼランドに居るけど、三の試練行列できてるからな。あそこだけ特に順番待ちがすごい】
【そりゃ乗り物に乗って称号取れるんだぞ? 誰だって行く】
【と、言うことだ。久しぶりにメンツ集めていこうよ。どうせ君のことだ。ダメで元々だろう? 僕のメカも仕上げていく】
【それってつまり……?】
【アキカゼランドの全乗り物が運行休止するね】
【はいアウトー!】
【この人だけは参戦させちゃダメだ!】
【絶対に阻止するぞ!】
【|-〻-)人気者は辛いね】
【君、少しもそんなこと思ってないでしょう?】
【|◉〻◉)バレました?】
【少年より白々しかったよ。ま、今回僕は裏方として引っ張りだこらしいから、サブマスはせいぜい頑張ってください】
「裏切り者ー!」
「と、言うことで次はいよいよヤマタノオロチだ。次回の配信も目を通してくれると嬉しいね。という事でアキカゼ・ハヤテと」
「ついていく人を間違えたジキンでお送りしました」
配信を切り、先程までのは演技ですよと笑顔を向ける。
「と、あの場では言いましたが一応パーティを募ろうと思います」
「嘘ですね。貴方が笑ってる時は8割本気でしょう?」
私は目を伏せ、舌を出した。
この人は本当によく気がつく。
「人を呼ぶと言うのは本当ですよ。でも即戦力じゃ面白くない」
「本当に厄介な性格してますね。ま、僕一人だけじゃないんならいいです。候補は?」
「AWO飛行部か乱気流、後は森のくま君とかどうだろう?」
「まぁ、良いんじゃないの。一応彼らとは同盟を組んでますからね。目立ちたがりの飛行部も今や一番の視聴率を誇るハヤテさんからオファーが来れば乗り気で参加してくれるでしょうし。くまはこっちで誘いますよ。確かあいつはムーに行ったはずです」
「へぇ。実は乱気流の師父氏はレムリアに赴いたそうで」
「では実質三陣営の協力タッグになる訳ですね?」
「それはそれで盛り上がりそうだ。どうしても私が配信すると、アトランティス陣営のコメントが目立ちますから」
「元々アトランティスの人口を増やす名目だったんじゃなかったでしたっけ?」
「やっぱり最後に選択肢はプレイヤーに委ねたいですからね。その上でアトランティス人口が増えてくれるのがベストですが、あまり人数が少ないと各陣営の良さに気がつかないのではと思いましてね」
私は話を打ち切り、また追って連絡しますとログアウトする。
まずはアポイントメントを取らないと。
果たして協力してくれるか。
まずはそこからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます