家族-2
「フロ? 何だそれは」
「ちょっと準備して来るから待っててよ。
レイカ、2人の事頼んだ」
寝室を抜け浴室へ入ると、当然の事ながら風呂はすっかり冷めていた。
「さすがに温め直しはまずいよな……
アレの後だし」
一旦水を抜き入れ直す事に。どうせ魔法を使うので手間はそう変わらない。
つくずく魔法って便利だな〜
あっ、そうか。どうせなら風呂の入れ方も伝授しとこう。
「母さん、ちょっと良いかな?」
「どうしたの? リオン」
寝室のドアから顔を出し母さんを手招きする。
「風呂の入れ方を教えとこうと思ってね」
「はぁ……?」
困惑顔の母さんを風呂場へ連れて行き、先ず何に使う物かから説明する。
その後、水を張りお湯にする手順。入るのに丁度良い温度。入り終わった後の始末なんかの、お作法を教えていく。
「概ね理解しました。そんなに難しくは無いので次から私1人でも出来そうです」
「じゃあ父さん呼んでくるから2人で入ってよ」
「わかりました。衣服はここで脱げば良いですか?」
寝室を指差しながら確認してくる母さん。
脱衣所無いからね、仕方ないね。
「うん、ここで構わないよ」
「そうですか……他所様のお宅で、しかも寝室で裸になるのは少々照れますね」
そう言いながらも既に脱ぎ始めている。
せめてオレが部屋を出てからにして下さい!
「父さん、入って良いよ。詳細は母さんに聞いてね」
「ふむ、良く解らんが奥へ行けば良いのか?」
「母さんが待ってるから早く行ったげて」
母さんと同じく困惑の表情を浮かべながらも寝室へ入って行く父さんだったが中に入った途端慌てふためいた声が聞こえ始めた。
オレはそっと扉を閉め後は母さんに任せる事にする。
『フィオーネ! 人様の家で何で裸に!』
『何? ここで服を脱ぐのか?』
『この奥に何が有ると言うのだ?
手取り足取り教える? だから何が……』
ごゆっくり〜
✳︎
「お義父様とお義母様、遅いね」
「そうだな……」
2人が風呂に向かって随分経つ。
こちらは旅支度もすっかり終わってしまった。
まあ自分にも心当たりが有りまくるので余計な詮索はしないけどさ。
そう思っていると奥の部屋から扉を開け閉めする音が聞こえて来た。
やっと風呂から上がったみたいだ。
「風呂。悪く無いな」
「そうですね。ちょくちょく入りに来ましょう」
そんな会話をしながら寝室から出て来る2人。
気に入って頂けたようで何よりです。
父さん若干お疲れ気味ですね。解ります。
母さん顔が随分赤いですね。気持ち良かったですか? ナニがとは聞かないけど。
まあこれで家の管理については心配無くなったかな?
いつ帰って来れるかは解らないけどね……
あっ、そう言えば肝心な事聞いてなかったよ。
「父さん。掃討作戦はどうなったの?」
何で今まで忘れてたかな〜
これが終わってなかったら安心して冒険に出れないじゃん。
「おお、今更だな。安心しろ、無事駆除は終わったぞ。お前達が巣穴を見つけてくれたおかげでな」
良かった〜あの後ガルテンさんが戻って報告したんだな、きっと。
「ガルテンに聞いたが、親玉はお前が倒したそうじゃ無いか。
まあその後別の個体に連れ去られて行方不明と聞かされた時は一瞬肝を冷やしたがな!」
成る程、そう言う話にしたのか。
「強くなったな、リオン」
「オレの力だけじゃ無いよ。
レイカと2人で倒したんだ」
ちらりとレイカに視線を送ると、オレに近付き横に立つと手を握って来る。
「そうか……お前達2人ならどんな困難にも打ち勝てると信じているぞ」
そう言って父さんはオレの肩を力強く握る。
「レイカさん、これからもリオンの事を頼みますね」
「はい、お義母様」
母さんはレイカを優しく抱きしめながらそう言い、レイカは恥ずかしそうにしながらも母さんの胸に顔を埋め何度も頷いている。
愛おしそうにレイカの背を撫でる母さんと幸せそうな表情でされるがままのレイカ。
そんな姿はすっかり本当の母娘みたいだ。
でもそんな幸せな時間も瞬く間に過ぎて行く。
夜が明ける前に村を出ないと。
「父さん、母さん。オレ達はそろそろ行くよ」
「そうか。そうだな……」
「リオン……」
母さん。そんな泣きそうな顔しないでよ。
今生の別れって訳じゃ無いんだから。
「必ず帰って来い。待ってるからな」
「リオン。行ってらっしゃい」
父さん、母さん……
「行ってきます!」
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