先輩襲来

 昼前は朝から父さんと手合わせ

 午後からは引っ越しと毎日を忙しく過ごしている内、村に戻って早一週間が過ぎようとしていた


「良しやるか」


 オレは今レイカ亭の裏手で一大プロジェクトの真っ最中である

 そう、風呂の建築で有る

 裏手を選んだ理由は人目に付きにくい事だがそれ以上に重要なのが寝室と直結出来る事!

 何故かって?

 その方が色々都合が良いからさ

 解るだろ?


 材料になる木材は伐採して準備済み

 組み合わせて壁と屋根を作るつもりだ

 浴槽は手頃な大きさの石を四角形に切り出し隙間を粘土で埋めながら詰め重ねて作る

 浴槽の周りは木の板で作ったスノコを張り巡らせて置いた、これで足も汚れないし洗い場も確保出来る

 何なら残り湯で洗濯も出来るぞ!

 こちらは毎日コツコツと進め既に完成していた

 材料の準備や加工は魔法で出来るが浴槽作り自体は手作業で行わなければならなかったので意外と時間が掛かってしまったが、完成した時は感無量であった

 その日は待ち切れず露天風呂と洒落込んだもんだ


 そして今日からは外壁作りを始める

 これも手作業になるが、作る楽しみは大いに味わう事が出来る

 骨組みを作り外壁となる丸太を積み固定するのだが、骨組みが完成した所で日が暮れてしまい本日はここまで

 魔法で明かりを灯せば作業出来ないことも無いが、慌てても仕方が無い

 時間はタップリ有るからな!


「リオンくーんご飯だよー」


 良いタイミングで夕食の支度が出来た様だ

 母さんの手伝いをしていたおかげでレイカの料理スキルも格段に上がっている


 最近レイカもほぼ一日母さんから魔法のレクチャーを受けているので日中余り会えないでいる

 やはり寂しいのか、その分夜は凄い甘えて来るのが可愛い


「お風呂の方は順調?」

「おう! 入るだけならいつでも入れるぞ」

「じゃあご飯終わったら一緒に入ろ?」


 レイカの必殺上目遣い炸裂!

 野営の間は外に作った簡易風呂に入ってたのですっかり慣れたのか、壁の無い風呂に入るのにも抵抗は無い様だ


 寝室には扉を新設して置いたので風呂へのアクセスは簡単、いちいち表から回る必要は無い

 寝室で二人共産まれたままの姿になり扉を開ければ目の前には湯を湛え湯気を上げる風呂、夢にまで見た光景がそこに広がる

 骨組みしか無いので周りからは丸見えの露天風呂だがそんな事は気にしない

 どうせ辺りに人など居ないのだから


「い〜湯加減だね〜」

「だろ?もう温度調節は完璧だぜ」


 浴槽は二人で伸び伸び使える位の大きさに作って有るが、レイカは膝を立てたオレの股の間に座り胸に背を預けて来る

 そこがお気に入りポジションなのだそうだ

 勿論オレだってこの必要以上に身体が密着する姿勢は大好きだけどね


 視線を落とせばレイカのフワフワとした髪の毛とつむじが見える

 更に落とせば水面にプカリと浮かぶ二つの小島が……


「えいっ」


 ジャバッ!


「ひゃん!」


 衝動的に浮かぶ小島を上から押してお湯の中に沈めてみた


「なにすんのよー!」


 両手で胸を庇いながら浴槽の端まで逃げ涙目でオレを睨み付けるレイカ


「いや沈むのかな〜って」

「沈まないよ!!」

「悪い悪い、機嫌治してコッチおいで」


 ヒラヒラと手招きすると少し警戒しながらも定位置に収まる


「もう! ビックリしたんだから」

「悪かったって、痛かったりした?」

「痛くは……うん、少し痛いかも

 さすってくれたら痛く無くなるかな」

「どれどれ、何処が痛いかな?」

「んっもう少し上……うんそこ……あっ……」


 執拗に痛いの痛いの飛んでけをしてやるとハァハァとだんだん息が荒くなって来るレイカ

 オレの方も充分盛り上がっている

 もういつでもイケるぞ!


「リオンく〜んベッドいこ? もう我慢出来ない……」


 よし来た!

 

 レイカをお姫様様抱っこで持ち上げ風呂を後にする、身体も拭いていないがどうせ明日にはシーツを変える事になるので問題無し!


 レイカをベッドにすこーしだけ乱暴に放る

 

「あんっ、もうリオン君荒っぽい」

「誘ったのはレイカだぞ、それにオレだってもう我慢出来ないんだ」


 ガバッとレイカに覆いかぶさり口を塞ぐとお互いの唾液と吐息が一瞬で混ざり合う

 むさぼるような口付けを離すと透明な橋が互いの口を繋ぐ


「今日のリオン君凄い……」

「寂しかったのはレイカだけじゃ無いってことさ」

「じゃあいっぱい慰めてあげる」

「頼んだぞ」


 そして夜は更けていった……



 ドンドンドン!


 夜明け前にドアを叩く音で目が覚める

 レイカのやつまたなんか通販したのか?


 ドンドンドン!

 

 レイカは起きる気配が無い、仕方ねーオレが受け取っておいてやるか

 ハイハイ今開けますよ〜

 眠気まなこを擦りながらドアを開ける

 あ、いけね今服着てないや、まあ良いか


 ドアを開けるとダボダボローブに身を包み年の頃は20代半ば、ブラウンのゆるふわセミロングでやや垂れ目気味の女性が腰に手を当て立っていた

 左目の泣きぼくろがセクシーですね!

 その女性はすーっと目線を下へ動かしオレの腰辺りをしばし凝視すると顔を上げフッと笑いながら


「なかなかのモノをお持ちで」


 クスン、もうお婿に行けない

 あ、オレ結婚してたわ

 今更慌てても仕方無い、もうじっくり見られた後だしな!

 こうなったら開き直って堂々としちゃる


「えーと、どちら様で?」

「ここにはレイカが住んでるはずなんだけど……アナタこそどちら様?」

「オレはレイカの夫です」

「あら、じゃあアナタが噂の監視対象ね

 ……フ〜ン」

 

 腕を組みオレを値踏みする様な視線を送って来る

 監視対象か、そういやレイカも最初はそんな事言ってたな


「リオン君どうしたの〜こんな早くから」


 ムニムニと目を擦りながら起きて来たレイカはまだ寝ぼけているらしく来客がいる事にも気が付いていない

 その姿はオレと同じく素っ裸だ


 扉口の女性はハ〜〜〜〜っと大きなため息を一つ吐きレイカの頭をペシんと平手で打つ


「んにゃ!」

「シャキッとしなさい! そして服を着なさい!」


 レイカも突然の事に驚いたようだが、おかげで目は覚めたろう

 目をパチクリしながら女性を見ると驚きの表情に変わる


「カッ、カンナ先輩!」


 うん、まあ知ってた

 お噂は予々、初めまして先輩さん

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