第25話
臨んだ未来とは違う結果となった時、人はどう思うのだろうか。
絶望に打ちひしがれ、そして、恋人を失った。
自分が化け物だと、知りながらも必死に抵抗した。が、成り果てたのは真っ赤に染まった悪魔の子の姿。
自分が悪いと信じ続け、挙句は壊れかけた玩具と成り果てた。
どれをとっても、彼女達が願った未来ではないだろう。
誰もが、困難に立ち向かい、一つの最高の未来を掴もうとしていたのだから
でも、そんな希望はたった一つの狂った歯車が壊した。
そう
そんな狂った未来を止める方法はたった一つ。
物語は紡いではならない。
最初の未来は、灯の未来で、エイヴが紡がれた。
エイヴは、シュリのお姉さんであり、ある出来事によって、エイヴは自らの世界から時空転送してしまった。
灯はエイヴと紡いでしまった。
二つ目の未来はシュリの未来で、通の名が紡がれた。
通自身、記憶が無かったのは、時空転送によって事故が起こったから、灯が見た死体が形状の分からないほどボロボロだったのはこれが原因だ。
他にも、灯が飲んでいない薬を飲んだ記憶があるのは、灯の世界が元々、シュリの世界であった事を指し示す事
エイヴにとって、苦痛な出来事における師匠の死とは、自ら母親を手に掛けてしまったという事。
今まで紡がれてきた物語、全てに意味にある事ばかり。
そして、全てが紡がれてしまった物語など、あの神が許す訳が無い。
では、シルバの未来は?あれは、何の関係も無い筈―――と、思うだろう。
あの世界は、ピィの未来。
ピィがいた世界から、灯の世界へと紡がれてしまった。
そう、ピィは元々、人間だった。そして、あれはただの
元の原因は、灯が見つけたロボットにピィと名付けたのが問題だったのだ。
たった一つの絡み合いが、解れぬ糸を治すためにあの神が動いたのだ。
そして、ただの未来と過去だと侮るなかれ、一つ一つの未来は本来、紡ぐべき未来があった筈だ。
本来の道筋にあるであろうその人が本来の道を辿るべきなのだ。
世界線を紡いではならない。異人があってはならない。
"人間は要らない"
どれもこれも
そんな神様と、戦っている。あたしは戦っている。
だって―――こんな未来を作ったのはあたしなんだから
ニットと言う名の元、
今まで紡がれた世界は、このピィと一緒に世界の未来を形作り、そして失敗を繰り返した。
永い間、ずっと、誰かの未来を壊してきた。
傍から見れば最低最悪な神様からの遣いでしかない。
勿論、弄ぶつもりなど毛頭無い。ただ、未来は紡がれなかった者達を救いたかっただけだ。
だが、あの神はそれを許さなかった。
縺れ、紡がれかけた未来永劫、意味が無いと罵るのだから。
それでも、めげずにあたしは、ジートリーの名を使い、その者達のただ唯一の新しい未来のカタチを作りだそうとした。
恋人を見つける。
化け物にならず、味方と勝利を導く。
腐れ切った記憶を断ち切り、未来へと歩んだ。
彼女達にだって、こんな未来があった筈なんだ。これを守りたかった。
ただ、それだけの事なのに。
―――でも、今回もまた、守れなかった。また、ジートリーの名を殺しただけ。
その上、ピィすらも失ってしまった。動きもしなくなった。
きっと、あの未来を紡いだのはピィ本人だからだろう。
擦り切れた精神を使い切って、何の反応も示さないただのガラクタになったピィを私は抱き抱え、泣き始めた。
瞳の奥から漏れ出てくる水滴の一つ一つが、ピィの身体へと落ちる。
ずっと無理して、ピィは世界を作り出してくれていた。
あたしの我儘がピィを壊したんだと、そう思うとより一層涙が止まらなくなっていった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そんな、悲しみの涙を流してる所を他所に、エマージェンシーの緊急音が突如として、鳴り響き始めた。
その緊急音を聞いて、あたしを監視している研究所の人間達の慌てふためく姿が、容易に想像できた。
誰もあたしの事を敬いも救いもしないのに、自分達の世界が壊される事に怯えているだけの屑共なのに。
誰一人、この未来の造形を見守ってくれやしない。
―――だから、私がジートリーの名を今、継いだのだ。
あたしの名前はジートリー・ニット
もう神としての力は無い。ジートリーの名を、この世界で継承したからだ。
ジートリーの名が、この世界に紡がれた今、機械仕掛けの神様は、あたしの世界を壊そうとしてくる。
そうに違いない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あたしの名を呼んだら、錆びた神様が天罰を行うよ。
禁句とされた名を、その物語を読んじゃ行けない。
誰一人、紡がない物語こそ最高のエンディングになるんだ。
だから―――その名を、禁句とする。 ―――knit―――
禁句:knit この物語は―――
"定められた未来に抗う少女と作られた神様が闘うお話"
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