月と太陽
@Bacio0304
第1話 夢(前編)
―月と太陽。
この世界で月と太陽が交わることは無い。
夢じゃない限り。
私は月見寧依。西高校に通う高校2年生。書道部に所属している。父は少し前に他界し、今は母と2人暮らしだ。単刀直入に言うと私は男が嫌いだ。特に同年代の男はみんな思考が同じだし、似通っている。
「あの、月見さんちょっといいかな」
またか。今月で3回目だ。
「僕と付き合ってくれませんか」
告白される回数が増えていく度、私は対応が雑になっていた。
「お断りします」
私はそれだけ言ってその場を去った。
こんな生活がいつまで続くのかを考えると気分が悪くなった。
気分転換に屋上に向かった。
そこには友達の奥村美沙希がいた。
美沙希が「その顔、また誰かに告白されたんだね」と言う。私は少し冗談ぽく、「男ってどうしてバカしかいないんだろうね」と言った。「そんな事ないよ、きっといつか寧依にとってバカじゃない男が現れるよ」そう言うと美沙希はどこかへ行ってしまった。
私にとってバカじゃない男。そんな人が本当に現れるのだろうか。少なくとも今はそんなふうには思えなかった。
風が少しずつ暖かくなってきたように感じられた3月のある日だった。
私はいつも通り部活を終え、家路に着いた。
「ただいま」
いつもなら「おかえり」と元気な声が聞こえて来るはずだった。しかし、今日は何も聞こえない。買い物にでも行ったのかと思いリビングに行くと信じられない光景が広がっていた。母が倒れていたのだ。急いで救急車を呼び、病院へと向かった。懸命な救命処置が施されたが母は亡くなってしまった。
ただこれからどうすればいいのか、それだけが頭の中を駆け巡った。眠れるはずもなかった。
次の日の朝、お医者さんの話を聞きに行った。
母は夢病という奇病で亡くなったらしい。
夢病はある日突然月が太陽に向かっていくという夢を見る。その夢を1ヶ月見続けたら最後亡くなるのだ。にわかに信じ難いが、そんな病気が存在するらしい。
母の葬式は身内のみで行われた。身内と言っても月見家は昔から有名な家系らしく、親戚の数は多い。
「和子さん、夢病だったらしいわよ」
「たしか最近永田家でも夢病で亡くなった人が出たらしいわ」
「永田栄子さんよね」
「太陽くん1人で大丈夫なのかしら」
そんな会話がどこからか聞こえてきた。
永田太陽という人が同じ夢病で親を亡くしたようだ。私には関係ないか。
葬式は無事に終えることができた。
母にはいつも迷惑かけてばかりで何も親孝行ができなかった。
私は少し夢病について調べることにした。
それが母への親孝行だと思ったからだ。
そう言えば葬式で永田栄子という人も夢病で亡くなったとか聞いたような。夢病について手がかりもないので、とりあえず永田栄子の息子の永田太陽に会ってみることにした。
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