第一夜
――やあ、みなさん
またお会いしましたね
やめておいた方がいいと
忠告させていただいたのに
またこの『呪いのWeb小説』を
覗いてしまったのですね
私、この呪いのWeb小説の
――呪いのWeb小説へようこそ
本日は『カクヨム民』を紹介させていただきましょう
今回は、Aくん十七歳、高校生男子です
「新型ウイルスの影響を受けて、
高校が長期休校となったんですよ
もともと学校の人間関係、
イジメ、シカトとかで
メンタルも病み気味で
学校に行きたくないと思っていたんで
ラッキーとばかりに大喜びだったんですが……」
「同時に、外出禁止にもなってしまったので、
かなり暇を持て余してもいました
そこでスマホを使って
大好きなWeb小説を
読み漁る毎日を過ごしてたんです……」
「好きなジャンルは
異世界転生ものとかのファンタジーですね
主人公が異世界に転生や転移して
俺Tueeeeやらハーレムやらの展開に
自分の願望を重ねて、
自己投影してたのかもしれないですね
ちょっと思い込みが激しいところもあったようで
まるで主人公になりきったかのように
異世界ファンタジー小説を楽しんでいました……」
随分と熱心な読み専さんだったようですね
「あ、たまに自分で短編などを書いて
投稿したりもしてましたよ……」
それではあなたも
立派な『カクヨム民』だったんじゃあないですか
「ところが、ついてないことに
この『呪いのWeb小説』のタイトルが目に入ってしまって
ついつい興味を抱いてクリック、
ページを開いて読んでしまったんです……」
「ひとしきり読んだ後、
なんだか薄気味悪くなってしまいまして……」
ネットで怪しいサイトに
迷い込んでしまった時とか
よく背筋がゾワゾワ、ゾクゾクしたりしますけど
そういう感じだったんですかね?
「そうですね……
ホントそんな感じで
まるで何かに取り憑かれたみたいに……」
「それからというもの
呪いのWeb小説が
気になって気になって仕方なくなって
呪いのWeb小説を
毎日読むようになってしまいました……」
熱心な読者さんでありがたいのですが
「ですが……
『呪いのWeb小説を読んだ人は呪われる』
という噂を聞いてしまいまして……」
「もともとメンタルを病み気味だったこともあり
その噂を気にしている内に
自己暗示にでもかかったのでしょうか……
それとも現実と創作の区別が
つかなくなったのでしょうか……」
「自分はきっと呪われて死ぬに違いない、
そう思い込んでしまったんです……」
そういうことってよくあるんですかねぇ
暗示にかかりやすいタイプの人って
オカルトとか
あまり見ないほうがいいと思うんですよ、
あくまで個人的な見解ですけど
思い込みがあまりにも激し過ぎると
脳の方がそっちに寄せて来ますから
脳内補正とか脳内美化なんて
言われたりもしてますけど
幻覚やら幻聴もその類ですよね
幻覚や幻聴があまりに酷いと
統合失調症ということになるんでしょうけど
「まぁ、すっかり呪いにかかったと
思い込んでいしまった訳でして……」
「案の定、段々と酷くなって……
幻聴で呪いの声が聞こえはじめ……
しまいには怨霊の幻覚までもが
見えはじめる始末で……」
「幻聴や幻覚に悩まされるようになって……
茫然自失として外を歩いていたところを
トラックに跳ねられてしまったんです……」
お若いのに、お気の毒なことです
しかし、トラックに跳ねられたということは
大好きな異世界に転生出来たんでしょうか?
それなら、それはそれで
願いが叶ってよかったのではないか、
という気がしなくもないですが……
それはさすがに不謹慎ですかね
「ええ、それがまだ
成仏出来ていないらしくて……
未だにこの呪いのWeb小説に
囚われてしまっているんですよね……」
ほほう、それではあなたは現在
ネット小説に取り憑いた
地縛霊ということになるんでしょうか?
「そうなるんですかねぇ……」
それは大変興味深い……
そのうちネット小説が
ポルターガイスト現象を
起こしたりするようになるんでしょうか
まぁ、とりあえずここは、
心よりご冥福をお祈りしておきましょう……
それでは、みなさん
現世でのご縁があれば、
またお会いしましょう……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます