第三章:殺意の侵食

 そんな天寺の小さな違和感に気づく様子もなく、羽舞は僅かに眉をひそめ神川へ注意するよう催促した。


 しかし、神川は羽舞の言葉に小さく首を振る。


「美夕の言い分にわたしは賛成したい。正直、一人で歩くのは不安だし鈴水のことも心配なの。こんな事件が起きたばかりなのに怖くない方がおかしいわ」


「それはそうだけど、でもだからって関係ない人をこれ以上巻き込むのもおかしいでしょう?」


 予想に反した返答を受け、羽舞が焦ったように神川へ一歩歩み寄る。


「やめないか、二人とも。そんなことで揉めなくても、タクシーを手配するから」


 神川と羽舞の間に割って入った七見が、やれやれという風に二人を見つめる。


「雨池さん、すみません。この子たちの言うことは気にしないでください」

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