第三章:殺意の侵食
まだ日が沈むには早く、上空には熱を帯びた光が満ちている。
自然公園に群生する木々の隙間からは蝉の鳴き声がノイズのように響き渡り、今が夏だということを眩暈がしそうなくらいに伝えてきていた。
じっとりと噴き出してきた額の汗を軽く手の甲で拭う。
少し喉が渇いたかな、と自分の汗を見ながら思い浮かべるが今のこの状況であまり無神経な発言をするのも悪い気がする。
(僕と嶺垣くんはもうこのまま帰らせてもらっても良いのかな)
どうしたものかと思案していると、やがて七見が腕時計を見やりながらため息ついた。
「じゃあ、日向ちゃんのことはみんなに任せるよ。本当はこっちで何とかしてあげないといけないんだろうけど、正直自分もいっぱいいっぱいだから。明日以降の予定については、今夜中にメールを入れるから各自確認するように。もし何か聞きたいことがあったらいつでも遠慮なく連絡してくれて構わないから」
「わたしらのことは心配しなくても大丈夫だよ。鈴水のことはちゃんと送り届けるし、いざとなったら――」
おもむろに、天寺の視線が絵夢を捉えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます