第三章:殺意の侵食

 まだ日が沈むには早く、上空には熱を帯びた光が満ちている。


 自然公園に群生する木々の隙間からは蝉の鳴き声がノイズのように響き渡り、今が夏だということを眩暈がしそうなくらいに伝えてきていた。


 じっとりと噴き出してきた額の汗を軽く手の甲で拭う。


 少し喉が渇いたかな、と自分の汗を見ながら思い浮かべるが今のこの状況であまり無神経な発言をするのも悪い気がする。


(僕と嶺垣くんはもうこのまま帰らせてもらっても良いのかな)


 どうしたものかと思案していると、やがて七見が腕時計を見やりながらため息ついた。


「じゃあ、日向ちゃんのことはみんなに任せるよ。本当はこっちで何とかしてあげないといけないんだろうけど、正直自分もいっぱいいっぱいだから。明日以降の予定については、今夜中にメールを入れるから各自確認するように。もし何か聞きたいことがあったらいつでも遠慮なく連絡してくれて構わないから」


「わたしらのことは心配しなくても大丈夫だよ。鈴水のことはちゃんと送り届けるし、いざとなったら――」


 おもむろに、天寺の視線が絵夢を捉えた。

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