第三章:殺意の侵食

「何かあったんですか?」


 天寺へ視線を戻し訊ねると、なんとも困りきった様子で肩を竦めてみせた。


「何かもう、警察にすっごい疑われたらしいのよ。ほら、あのハンカチのせいでさ」


「ああ……」


 それは仕方がないだろうな、と絵夢は思った。


 あんな場所に第三者の私物が落ちていたら、誰だって不審に思う。


 警察だって念入りに話を聞き出そうとくらいするだろう。


「でも、別に犯人扱いされたわけではないんですよね?」


「どうだろ。光野さんたちとの関係やらライヴ開始前後の行動やら、かなり細かく質問されたらしいし。身体検査も、話聞く限りだとわたしらの倍は時間かけてたみたい」


 ポンポン、と天寺がまるであやすように日向の頭に手をやる。


「それに、事情聴取をしてる最中ずっと睨まれてるように感じて恐かったんだってさ」

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