第一章:殺意の萌芽

 日向の後ろを、絵夢と並ぶようにして歩きながら嶺垣は言った。


「僕としては、舞台裏なんてそれほど興味ないんだけどなぁ……」


 困ったように頭をかく絵夢。


「何を言ってるんですか。探偵たるもの、いろんなことに興味をもたないとやっていけませんよ。たくさんの知識や経験の積み重ねが事件解決に役立つんですから」


「……正論かもしれないけど、きみが言うと不思議と説得力を感じないのは何故だろう?」


 子どものように表情をほころばせている嶺垣を横目で一瞥しつつ、絵夢がぼやく。


 しかし、本人はそんな絵夢の視線を気にするでもなく、日向の後を歩き続けた。


 どうやら、都合の悪い会話は聞き流すつもりらしい。

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