プロローグ

「まぁ、たまには良いかな。どうせここにいても時間を無駄にするだけだろうしね」


「あ、じゃあ行くんですね?」


「うん。でも、本当に僕が行って良いの? 他の人と行った方が絶対に楽しいと思うんだけど」


「問題ないです。あぁ……、ほんとに生でレイニーが見れるなんて夢みたい」


 手を組み天井を見上げる嶺垣に、絵夢は苦笑を浮かべる。


「そこまで浮かれなくてもいいと思うんだけどなぁ」


 呟くようにそう言うと、絵夢はあくびを噛み殺しながらまた雑誌へと視線を落とした。




 レイニーなんてグループに興味は無いが、嶺垣はいつも真面目に出勤してくれているのだ。たまにはこういう場面で恩を返すのも良いだろう。羽を伸ばすことも時には重要だ。




 それが、絵夢の正直な考えだった。

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