体験型ゲーム
椎名由騎
VR
俺はビルの屋上に立っている。足が震える程に怖くてたまらない。
どうしてよりにもよってビルの屋上が映し出されたのだろう。
体験型VRにしては強めの風が吹けつけて、顔が冷たい。恐怖はさらに大きくなっていく。思わず手で風を避けようと顔を下に向けると、下が見えない位の高さがある事に気付いたからだ。
私は内心怒っていた。どうして体験だからと言ってこんな高い所に居なくてはならないんだ。私の心に反応するように風が強くなり、晴天だった空は段々と雲が増えてくる。
そうしていると、私は段々と悲しくなってくる。前に進む事も下がる事もできない。上から『ゴロゴロゴロッ』と雷の音がした瞬間、私を目を瞑った。
その時、「はい、オッケー!」という声に私はニコリと笑顔を向け、ゴーグルを取った。
「いやぁ、迫真の演技だった」
「ありがとうございます」
お礼を言う俺に監督は次の撮影の情景を説明する為に近寄ってきた。体験型にしてはリアルな屋上そのもののセットの上で。
体験型ゲーム 椎名由騎 @shiinayosiki
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