第二話
優しい春の風が私の頬を撫でていく。
そうして再び集めた花びらは舞い散っていく。
「………………」
せっかく半分ほど集め終えたというのに……。
「本当にどうしようも無い神主じゃ」
音もなく私の後ろに現れたのは銀色の髪を持ち金色の瞳を輝かせる女性。私よりも少し小さく身長は150cmくらい……なのだけれどなんで私よりも胸が大きいんだろう。
というか今日はやけに後ろから声がかけられる。
「心臓に悪いのでいきなり後ろに出てくるのはやめてください。それにどうしてくれるんですか、また集め直しですよ」
一見私と変わりない巫女装束を羽織っている。
しかしその背中には彼女の身長くらいあろうかという大きな光輪がクルクルと回りながら浮遊している。
そしてまた彼女自身も宙に浮いている。
「ふむ、悪かったの。次は気をつけるのじゃ……にしても
そう言って楽しそうにケラケラと笑うのだ。
「私は思ったことを言ってるだけですよ。それに
それにどうせ、分かってしまうのだから。
彼女には私が何を考えているのかが筒抜けなのだから隠すだけ無駄である。
「説明したじゃろ。鈴蘭はただの人間では無い。どちらかといえば妾達に近い存在じゃ、それに妾自身たいして気にしとらんのじゃ。だからお主もそのままでお願いするのじゃ」
「そういうものですかね……それでご用件は?」
「ふむ、お主の掃除が終わってからにするのじゃ。それに妾にはまだやることがあるのじゃ」
そうしてふわふわと宙を浮きながら拝殿の方へと漂っていく。
風や何やらで邪魔をされ続け、参道を掃き続けはや一時間。
もういい加減終わりにしたかったというのに……いつもタイミングが最悪なのだ。
ともあれそんなことを思っていると割と真面目に天罰が下されかねない。なんせ彼女は
『
言わずと知れた日本の最高神。
かなりの知名度を誇りあの伊勢神宮を主に信仰されている神様の中の神様。
そんな神様がなぜこんな所にいるのかというと、本人曰く「暇なのじゃ」との事だけれども本当の神意は全くわからない。
向こうがこちらの心を読むことができても私があちらの心を読むことは出来ない。
それでもとにかくいえることはマイペースな性格であるということだろう。ふっ、と現れていつの間にかすぅ、っと消えている。
もはやマイペースというよりも自由奔放という言葉の方がしっくりくるのだけれど。
でも、あそこまでいくと本当に
ともあれ、そんなことを抜きにしても私達からすればとんでもない存在ということに変わりはない。
そうしてしばらくすると拝殿の方から悲鳴が響いてきた。
「………………」
ここに来ると毎回のごとくあのような悲鳴というか断末魔が確認される。
当然悲鳴の主はここの神主その人。
本当に困ったものである。
「はぁ……」
それにしても最近やけに来ることが多くなったな。
神様って普段そんなに暇なのかな?
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