遊園地

椎名由騎

彼女の希望

 本当なら彼女の希望を叶えたい。しかし、俺にはどうしても勇気が出なかった。

 どうしてかというと、今日は久しぶりの彼女とのデートで遊園地に遊びに来ていた。彼女は大の絶叫好きで特にジェットコースターが好きだからだ。

 時間は刻々と過ぎていき、彼女はジト目でこちらを見つめている。

 俺は元々絶叫系が大の苦手で普段から情けないと言われることが多かった。普段は諦めて一人で乗りに行く彼女だが、今回は途中で写真を撮ってもらえる場所があるらしく、たまに一緒に乗りたいと可愛い顔で言ってきていたのだ。叶えてやりたい気持ちは十分にある。ただ一歩出ないだけ。


 周囲が俺達カップルを気にしながら笑っているかのような幻聴が聞こえる。それくらい俺が嫌がっているのがわかるレベルなのだ。


 彼女が諦めて一人で乗りに行こうときびすを返すのと同時に腕を掴んでこう言った。


「わかった。……ただし今回きりだぞ」


 そう言った俺の言葉に彼女は嬉しそうに笑った。

 そしてこの後俺がものすごい顔で叫んでいる顔と笑っている彼女の写真が出来上がったのであった。

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遊園地 椎名由騎 @shiinayosiki

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