288・中盤戦突入
ファリスの圧倒的な勝利を見せた翌日からも、魔王祭は白熱していった。
彼女に負けまいと
偶々会った時にちょっとその事を言ってみたら――
「お前だって一撃で仕留めてたじゃねぇか」
って好戦的な笑みを浮かべていたっけ。だけど、別に私も好きで倒した訳じゃないんだけどね。
相手が弱かったら、やっぱり早く終わらせたくなってくるんだもの。
序盤は順当に勝って当然って人達が勝ち上がってきて、あまり面白味もないしね。
そのまま二回戦もファリスが瞬殺で圧勝してしまったし、他の人達も順当に勝ち上がって……今は二回戦中盤。
あまり変わり映えしなかった事ばかりだったけど、やはり次の三回戦――最初に戦うのがジュールとファリスの決闘に決まってしまった。
当然と言えば当然なんだけど……もうなるようになるしかないだろう。
そんな未来の事を考えていた私は、改めて魔導具の画面を見直した。そこでは今まさに戦おうとしているレイアとアルフの決闘の方に観客達が注目している。
「まさかこんなに早く戦いが実現するとは思いませんでしたね」
「二人が向かい合っている姿を見ると、去年の話を思い出すわね」
アルフとレイアはどっちが上かはっきりとさせる約束をしたんだっけか。
レイアが勝てば、今までの言動を謝罪して、アルフの知っている全てを教えてもらえる。
アルフが勝てば……特になかったっけ。私の側にいるのを認めないって言ってたけれど、具体的な事は何も決まってなかったっけ。
それにただ約束しただけだから、決闘委員会を介した時のように拘束力があるわけでもない。純粋に二人の意地のぶつけ合いと言ったところかな。
「エールティア様。今回の決闘はどうみますか?」
「そうね……」
冷静に考えると、レイアの力はどんどん強くなっていってるけれど……それでもアルフの方が有利だろう。
レイアはこの一年で相当成長している。アルフと同じように黒竜人族としての力にも目覚めているけど、圧倒的に経験が足りない。それがどう響くか……それが今回の決闘の勝敗を分ける事になるだろう。
「私も、最近のレイアの戦いは見たことないから何とも言えないけれど……普通に考えたらアルフの方が優勢でしょうね」
「……そうですね。僕もそう思います。ですが、エールティア様と決闘をしていた彼女の事を考えたら――」
「それはこれからわかる事でしょう」
実況兼解説の席側から盛り上げるような声が響いて――いよいよガルドラの魔導具で結界が発動して、準備が整った。
『それでは、決闘開始だ』
ガルドラの合図と同時に互いの距離を一気に詰めて、近距離戦を繰り広げる二人。予想通りの戦いだけど――
「……レイア、武器変わりすぎじゃない?」
「ですね。一年生の時は確か……オーソドックスな剣を使っていたはずです」
それが、今のレイアの武器は……少なくとも私が見たことがないものだった。拳に装着するタイプのもので、覆うように刃が付けられてる。爪――というよりは、それに見立てられた刃は一つしかないし、大きすぎる。両手じゃなくて、右手の方にだけ装着しているようだ。
「あれは……ジャマハダルと呼ばれいる武器の一種ですね。籠手の先端に剣の刃が付いていて、防御・攻撃の両方を行いやすくしている物です」
「へえ……」
銃とはまた違った物珍しさがある。だけど妙にしっくりくる。多分、竜の姿になった時のイメージがあるからだろう。
対するアルフは、去年と同じ剣だ。素早い動きでレイアをかく乱するように斬撃を加えてくるけれど……その
「剣とはまた違った武器なのですが……恐ろしく使いこなしていますね」
あれの利点は、剣よりもリーチが短いおかげて、振り回されずに済むという事だろう。細かい動きが出来るから、隙が小さい。
その上、身体能力の高い黒竜人族としての特性を活かした高速戦闘を繰り広げるレイアは、多少実力が劣っていてもアルフに食らい付いていけている。
「普通の剣よりも動きが洗練されているわね。思った以上に力を付けていて驚いたわ」
一回戦の時、レイアは普段の私と同じ拳闘スタイルで戦っていたから不思議に思っていたけれど……その謎がようやくわかった。あの戦い方に通じる物がある。
『おおー! これは激戦! 優勝候補のアルフくんに食らいつくようにレイアちゃんが攻撃を加えていくぅ!』
『流石黒竜人族の二人だ。ここまで見応えのある近接戦はほうないだろう』
シューリアが熱狂して、ガルドラが二人の決闘を評価している。
次第に過激になっていく二人の攻防。刃を掠め、ギリギリの所を防いでいるレイア。傍目から見たら、結構余裕がなさそうに見えるけれど……危なげなく上手くかわしている。
どうやらあの時以上にレイアは実力を身につけていたみたいだ。多分、仲間達の中では一番成長しているんじゃないだろうか?
去年までのレイアだったら、到底アルフに敵う訳がなかったしね。
これは……ガルドラが言ってた事だけど、本当に見応えのある決闘になりそうだ。
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