133・中継都市センウェス
南西に位置するサウエス地方からセントラルに行くときに必ず通るのが中継都市センウェスで、ドラグニカに向かう私達が途中で寄る事になる場所だ。
他の地方からセントラルに行くときは、別の中継都市を経由してドラグニカや別の国に向かう事になる。
「見えてきたわね」
空の道を進みながら下の景色を楽しんでいると、ようやく中継都市センウェスが見えてきた。今は大体昼を過ぎたくらいだろうか。ガンドルグは狐人族の国フォシェンドの隣国に位置しているから、それなりにセントラルに近いから、これくらいで行けたんだろうけど……ティリアースからだったらもっと時間が掛かっていただろう。
ワイバーンが魔導車のように食事や休息を必要としない機械のような存在だったら、多分もっと早く遠くに行けるんだろう。
……まあ、そんな時代が来るなんて、到底思えないけどね。自分一人で短時間ならともかく、複数を長時間浮かべるなんてどれだけ魔力を消費することになるやら……。魔石だってどれだけ必要になるかわからない。
そんなくだらない妄想を一瞬でもしてしまった事に後悔しながら、ゆっくりと迫ってくる中継都市の光景を見つめていた――
――
「あぁー……疲れた」
フォルスが腕を伸ばしながら左右に首を揺らしていた。じっとしているのって、結構疲れるものだしね。
「んー、身体が固くなった気分だね」
「先生、今日はここで一泊するんですか?」
リュネーの言葉に、ベルーザ先生は頷いた。
今行くなら夕方ぐらいにはドラグニカに着くと思うのだけれど――
「今すぐ出発しないのですね」
「せっかくここの宿も抑えてあるからな。一日のズレは向こうにも伝えてある。お前達もセントラル地方には初めて来たんだろう? せっかくだから楽しめ」
それは学園での行事で来ている今に言うべき台詞じゃないと思うんだけれど……まあ、その言葉自体には賛成なんだけどね。
「……先生の仰る通りですね。サウエス地方では出会えなかった強き武人がいるかもしれません」
雪風の方は大分賛成寄りみたいだ。理由がかなり鬼人族らしいけど。
「強き武人って……じゃあ、あの
「あの御方はそもそもサウエス地方の御方ではありませんから例外です」
そもそも雪桜花の大将軍の息子があんなところにいる方がおかしいんだけれど、そこのところは話題にも上がらないみたいだ。あんまりにも自然にいたからだろうなぁ……。
「陽が沈むまで時間がある。ワイバーン発着場からまっすぐ進んだ宿街にある『アルデバラン』が集合場所だ。わからなかったら時計塔まで行って、北の方だと覚えておくといい。必ず夜までに戻ってくるように」
どうやら今回は一旦宿に行って――という訳ではないみたいだ。流石に夜に生徒を出歩かせるのは不味いと思っているのだろう。
とはいえ、全く出歩かせないというのも不満が溜まるだろうと考えた措置なんだと思う。
「せっかくだから、珍しい本でも探してみようかな」
「あ、じゃあ私も一緒に行っていい?」
ウォルカが呟いた言葉に、珍しくリュネーが手を上げていた。あまり本には興味がない子のはずなのに、本当に珍しい事もあるものだ。
「え、リュネーちゃん、そんなに疲れてるの?」
私と同じことを思ったのか、信じられない物を見るような目でレイアがリュネーを見ていた。
「むっ、い、いいでしょ!? その……私だって、そういう気分の時もあるのに――あるのっ!」
今、猫人族の語尾が出そうになってたけれど……何をそんなに慌てているんだろう? と考えていると……ある一つの答えに辿り着いた。ここのみんなは多分知らないだろうけれど、リュネーには兄弟がいる。
ベルンとニンシャの二人だ。特にベルンとは、シルケットで使っていた館の図書室で出会ったっけか。
多分、リュネーはベルンにお土産を渡そうと思っているのだろう。それが偶々ウォルカが声を上げたから、それに便乗しようという魂胆が透けているみたいに見える。
この様子だと、私でも近づきすぎるのは逆効果だろう。恥ずかしがって買わないくらいなら、しっかり選んでもらった方がずっといい。
「それじゃあ……私は――」
どうしようかと頭の中で考えながら口にしていると……ふとした視線の方に気付いた。
……そうだね。レイアやリュネー達のように――とまではいかなくても、ある程度行動を共にする訳だから、人となりをもっと知っても良いだろう。
「フォルス、一緒に武器でも見にいく? 鍛冶の方にも興味があるんでしょう?」
「ああ! もちろんだ! だけど……いいのか?」
「良いのかって……?」
別に何か悪い事なんてなかったはずだけれど……何が問題でもあったんだろうか?
「私は別にいいけど……」
「そっか。なら一緒に行こうぜ!」
何か一人で納得してくれたようだけれど……まあいいか。
レイアの方はどうするのか聞くと、今日は雪風と一緒に散策することにしたらしい。てっきり一緒に来るものだと思っていたけれど、
普段とは全然違う組み合わせになったけれど……せっかく六人で一緒に行動しているんだから、こういう事は進んで行っていかないとね。
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