129・魔王祭最終予選(雪雨side)
エールティアが驚きと戸惑いの中で見つめるその視線に、
(退屈なもんだと思ってたけど……まさかあいつが見に来てるなんてな)
自分を降した好敵手がこの決闘を観ている――それだけで彼の気力と戦意を蘇らせるのは十分だった。
「ほう、随分と男の目になったな。それでこそやり甲斐がある」
自分の方に戦意が向いていると勘違いしたジーガスに呆れた
『互いに睨み合い、火花を散らす! 果たしてこの死闘の末、勝利を掴み取るのは誰か!?』
『それでは、決闘を始めてください』
決闘開始の合図と共に戦いの口火を切ったのは、ジーガスだった。
その巨体に似合わない速さで
それに対し自らの大刀――金剛覇刀で応戦する事なく、
しかし、それは
(ふざけやがって……こんなもんが……この程度が死闘だって?)
むしろその斧での一撃が、殺す気だと思わせているその一撃が放たれる度に……
怒りの中で立ち止まった
「……どうした? まさか、鬼人族が勝負を投げたか?」
訝しむジーガスの言葉に、
「止めは刺さないのか?」
「……なに?」
「止めはどうしたって聞いてんだよ」
苛立つような視線を向けた
『これはどうした事だろうか? 互いに不動を貫き、動かぬ山のように沈黙を保っているぞ! しかし、
『いいえ。この決闘のルールは相手を『殺す』事にあります。拳などの致命傷に至るのに時間の掛かる方法しかないのでしたら考慮しますが……基本的にそれ以外の決着が認められることはありません』
今回の決闘の勝利条件はたった一つ。それ以外の事は状況でも勝利とはしない。アルデ決闘官の冷静な宣言に、ジーガスは嫌な顔をする。
それも仕方のない事だろう。命を奪う事が勝利条件の決闘をすることが自体がまず稀であり、仮にあっても、別の条件が必ず存在する。魔王祭最終予選、本選のみが例外なのだ。
同じ『人』を殺すことに
それを
「どうした? 決闘官からお墨付きは貰っただろう? 早く
「……俺は……!」
戸惑い、迷う色を見せるジーガスの瞳を見た
「くっ……うっ……!」
「誰かの命を奪う度胸もない。大した平和主義者だな。てめぇは!」
「なにっ!」
「見せてやるよ。本当の決闘って奴を!」
言うが早いか、持っていた戦斧を手放して、素早く『金剛覇刀』を抜く。
急な展開に隙を見せたジーガスは、一瞬だけ脳裏浮かんでしまった相手を『殺す』シーンに戦斧を持つ手の動きが鈍らせてしまう。それを見逃す
瞬間に結界が反応してガラスが割れるような音が響くと同時に、ジーガスに与えられた致命傷は瞬時に癒える。だが、受けた痛みや致死に届かない出血が癒える訳でもなく、ジーガスはへたり込むように座っていた。
「……馬鹿が。覚悟が足りねえ奴に、俺が負けるわけないだろうが」
『決着! 今ここに、新たな歴史が刻まれました! 激闘を制し、
司会のシュナイドが立ち上がり、
『ゆ・き・さ・め! ゆ・き・さ・め!!』
「つまらねえな。こんなんじゃ、余計に渇くだけだ」
吐き捨てるように呟いた
会場に『
「来年はもっと、楽しくなりそうだな」
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