澤村・メイン・英梨々・ルート

璃央奈 瑠璃

告白から始まりますよ 

「おい、英梨々! 大丈夫か?」

電話の向こう側は眠ってしまった様で。今は作品のことが頭からすっぽり抜けて、英梨々のことしか考えられない。

 英梨々の家まで走って、チャイムを押すと小百合さんが出てくれた。簡単に情報共有して、小百合さんはタクシーを迎車して、俺を乗せてくれて。ボロボロ泣いているの俺にハンカチを渡してくれた。

小百合さん「昔から一緒よねー。」

「なにがですか?」

「昔からことある事にお見舞いにきたり、心配したり、今でも覚えてるわ『英梨々死なない? 大丈夫?』てね。しかも自分の親を説得して結局英梨々とアニメとかゲームしてたわね~」

声色がガラッと変わり


「みんなを犠牲にしちゃうくらい、私の娘、英梨々のことが好きなんでしょ?」


だから俺は真摯に、姿勢を正して


「俺は澤村・スペンサー・英梨々という女の子が大好きです」


冴えカノ

英梨々の看病


ベッド前で崩れ落ちている英梨々を見た。


小百合さんが慌てて英梨々に近づいてその惨状を見た。


右手が痙攣しているのにペンを握っている。床が冷たくて気持ちいいのか頬っぺたを床にくっつけている。息が荒い、熱も高そうだ。


 俺も慌てて近くまで向かってすっとお姫様抱っこでベッドに移動させる。驚くほど軽い。こんなに軽いのに、守ってあげられなかった……。

 英梨々が目を覚ますまで同じ部屋で寝ていた。小百合さんは断固反対だったが、俺はそれを『してあげたくなる』くらい好きなんですと言ったら、ちゃんと朝昼晩3回薬を飲むことを条件に許してくれた。


 熱を出して寝て3日ほどで英梨々が起きたのを……英梨々の泣き語で俺も起きた。

「えっなんでベッドで寝てるの? イラスト! 送ってない!」

 英梨々がベッドから飛び起きた先は、俺の頭。当然バランスなど保てることはできない。

「きゃっ」

と英梨々にしては可愛い声を出して、幸いしりもち。

「なんで倫也がいるの?」

「なんでだろうな」


「ねえ。コミケはダメだったけど、どうするの? 委託?」

 英梨々は有り余る金でダウンロード版リトラプを購入。ふたりで仲良くゲームをしていた。

視線は英梨々の安定、セルビス攻略の画面に注がれている

 なのに……なのに。隣からは英梨々の鳴き声がもれてきた。

 隠さなくていいのに、澤村・スペンサー・英梨々はプライドだけは人より高く。

 でも俺は知っている。泣き虫英梨々を。

 嬉しかったらまばゆいばかりの笑顔を見せてくれる。

 悲しかったらしくしく泣きながら甘えてくれた。

 イラストレーターとしてどんどん進んでいく英梨々が好きだった。

 俺はそんな英梨々が好きだった。


 なのに、今の英梨々は少しプライドが下がって、微妙に甘えてきて、クリエイトしていなくて。


 そんな女の子としては、とにかくかわいくて、大好きで。

 

 でもイラストレーターとしては好きになれなかった。 


「今後は委託する予定だよ。それから別のゲーム作りたいから、お前たちが『魂削って、血反吐を吐きたい』と思えるような企画書を俺が作るよ」

 なんか空虚な言い方になってしまった。なぜだろう。

「へぇ。言うじゃない」

「まだなんのネタも考えてないけどね」

 なぜ4日間も男女が同じ部屋にいても、レーティングからはみ出さないというのはふたりのプロ意識だということでご容赦ください。


「英梨々に言わないといけないことがある。とても大切で本当なら話したくないけど話したい内容だ」

 瞬間、英梨々はそわそわと落ち着かない様子で、指をにぎにぎしたり髪の毛をくるくるしたりし始めた。

 ふっと倫也が息を吸い、英梨々の顔は真っ赤で

「打診があったんだ。柏木エリと霞詩子を寄越せと」

「倫也~~~!!!」

 毎度おなじみツインテビンタが襲ってきた。


 東京に帰ってくるまで口聞いてくれなかというね、辛い時間ですよね。。


ちなみに帰りもスペンサー家お抱えの運転手さんが来てくれた。金持ちってすげえな。そのままスペンサー家へ行き、英梨々の部屋に連れ込まれた。

「んで、どこからオファーが来たの? 思い至る節が多すぎて流石におぼえてないないわよ」

「ちなみに告白は何件ほどありまするん?」

「100人は超えているわね」

「3桁半端ないっす」

「なにその口調。怒ってんの? 独占したかったの?」

その後もねちねち責められ


「あーはいはい。話戻すぞ。紅坂朱音から直々のオファーだ。受け入れるかは、英梨々と詩羽先輩に決めて欲しいとのことだ。ただ1回は企画書見ろと。

お前たちを引きずり込む企画だと」


「私はどんなに凄い案件でも断るわよ。霞ヶ丘詩羽は知らないけど。やっと倫也と話せる様になって、初めてできた親友がいて。そんな繋がりを切りたくない!」


「その前に……帰らないとな。加藤たちに頭を下げて。許してくれたら2作目だな!」


クリエイターとして致命的に間違っていると気が付きながら、そんな考えを見なかったことにした。英梨々が近くにいてくれるから……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る