今日も元気な僕のキノコ

@Tiger_on_the_hand

プロローグ キノコ生誕祭

最悪だ。

今日は高校の入学式。これを機に新たなキャラの開拓やらに励む人は少なくないだろう。自分もそのうちの一人である。

そうやって昨日意気揚々と理髪店に行ったのが運の尽きだった...いや、確かに「新たなキャラの開拓」には成功したかもしれない。

理髪店に入って、適当に短くしてくださいと言ったら、何故か自分の髪型は一番似合わないマッシュヘアになっていた。

それもモデルがしているような若干マッシュ、なんてレベルではない。誰がどう見ても第一印象は「キノコ」である。芸能人で言うところの...某雨上がりに決死になる隊のやらかしてない方(名前は忘れた)に似てる。

しかも緊張で全然気付かなかったが、文句を言おうとして店員のほうを見たら、なんとこれまた美しい女性なのであった。髪は艶々のロングヘアー、瞳は丸くてくりくりしてて輝いてる。何故かずっと動揺しているような顔をしている。

こちらの視線に気が付くとビクッと肩を震わせ、ハサミを持ったままあわあわと目を泳がせている。もしかして初心者なのだろうか。実はこの俺の髪型はワザとではなくて、動揺のあまり無意識にやってしまったのかもしれない。

この慌ただしい感じとエプロン姿が妙にマッチしていて、しかも身長も低くて、まるで中学生のような...ん?

まてよ、この人身長低すぎないか?というか何でエプロンしてんの...?

さっきから口をもごもごさせているのは何か言いたい事があるからなんですよね?隠し事は良くないですよ。さあはやくこのお兄さんに正直に言いなさい。言え言え言え言え言え言え言え言

「おっっ」

おっっ?

「お代はいりませんっ!」

そうじゃねぇ!!!!!!!


思い返してみて、いや別に身長の低い大人の女性くらいはいるだろ、とか別にエプロンくらいしてたってなんらおかしくないだろとかいろいろ突っ込みたくなったが、それでもあのときふと浮かんだ考えが頭から離れない。

あの人は実は本当に中学生で、将来美容師になるために練習としてお店の手伝いをしていた──

そうであればお代がタダになったのも、初心者のごとく客の顔色ごときであたふたするのにも納得がいく。

まあ、だからなんだ。自分が実験台にされたことくらいなんともないほど、俺の親切は有り余っているのだ。こんなことどうでもいい。

とか思っている入学式当日の朝の俺に言っておく。

出会いってのは、案外しょーもないものなんだぞ...

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