わんこ彼氏(U・ω・)⊃藤田くんとはそんなつもりじゃなかったし! #わんこ部下シリーズ

炭 酸 水

第1話 その情報要る?

 社内カップルリサーチは趣味と化してる。私は、白沢まどか。28歳、社会人6年前。


 社内カップル情報はあちこちから。そのルートの一つ、ブランド部門の藤田淳くんと時々LIN□のやり取りしてる。情報交換と見せ掛けて……彼の上司、井達康介さんの情報が流れて来るのが楽しみでもある。


 藤田くんは四つ年下の子、噂話が好きで色んなネタを拾って来てくれる。うちの会社の闇ルールも知らずに、私にホイホイと情報を流すが、それは私のところでストックされる。


 今夜も通知が来る。自分の部屋のベッドに寝転んで、スマホを開く。


[白沢さん、ホイッ]


 ホイッと流れてくる写真……


 キャァ♡ 井達さんのプライベート写真?


 か……っこ良すぎる。タイトなTシャツがセクシーで眼福。これは待ち受けにしちゃうわ! 凄いご褒美に私のテンション暴上がり。


[これ、どこ? 井達さんカッコいい♡]


 興奮と歓喜を表すスタンプを送って藤田くんに質問をする。


[接待BBQパーティー会場ですね]

[はぁ?]


 会場の写真送ってくれる。ブランド部門って、こういうのに予算動くんだ……羨ましいわ!


[いいなぁ〜]


 本当、羨ましい!

 片恋の井達さんの写真を貰えたけど、それを他人に直視で堪能されてるかと思うとマジむかつく。


[いいですよ〜]って、藤田くん。

 今度は変な写真送ってくる。男性の半尻の写真。


[藤田、ブロック案件、セクハラ!]

[要ですよ]


 倉本要くんは私と同じ部署の後輩。隣の席でプロジェクトのチームメイトでもある。藤田くんとは同期の友だち。


[要くん? キレイなプリケツ♡]

[なんですか? 要ならいいって]


[要くんはうちのアイドルだからねぇ♡]

[ひでー差別。配布禁止で]


 ——配布はしないが保存はしておこう。


[分かってるわ!

って、なんで要くんまでそこにいたの?

部署違うのに]

[要は、井達さんが呼べって]


[井達さんと要くんのBLネタはまさかガチじゃないよねぇ……]

[ジェシカさんのホスト役ですかねぇ]


 あ、そう。要くん、わんこキャラでアイドルマスクだから?


 ちょっと待って!ジェシカさんって井達さんの元奥さんじゃない!


 いきなり凹む。井達さん、元妻と繋がってたのか。私の上司である峰岸綾香さんと同期で、噂が定期的に流れるけど……噂と言っても周りの妄想レベル。


 失恋フラグはたくさん立ってたけど、本命来航にガチに凹む。


 LIN□の返信の手が止まると、噂好きのくせに勘の鈍い藤田くんが余計な写真まで送ってくる。


 ジェシカさんを挟んで、井達さんと膝枕されて寝てる要くんとその隣に綾香さん……楽しそう。写真からリア充感漂ってる。


 綾香さんまで呼ばれてるの!? いや、これ、社内で私が知ってる話にしちゃいけないところかな。


 藤田くんは私にとってあくまで情報ルート。彼は私が井達さんを好きなのを知らない。言う必要もない。


 なんか、悲しい。蚊帳の外を実感。何この絵になってる写真。藤田くん、写真撮るの無駄に上手すぎでしょ!? 泣けるわ……


 バツイチのカッコいい井達さん、社内でカリスマとして憧れの存在を片思いで楽しんでた。でも、現実を知るのは嫌だった。ネタ程度で良かったのに……。


 結構、本気で泣けてきた。

 電話じゃなくてLIN□って、本当に助かる。涙ボロボロ……そんなに井達さんのこと好きだったかなぁ? 学生時代みたいな片思いだな、これ。


 自分の純情さに驚いていると、藤田くんからまた通知。


[白沢さん、今度、飯食いません? ]



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る