第54話 クリスマスの予定
いつもと同じ部屋、同じ時間、同じ朝を迎える。
そして同じように仕事に行き、帰ってくる日々の繰り返し。
文化祭の翌日、成瀬さんは普通に仕事に来て、いつもと同じように話してくれた。
雅も特に変りなく、いつも通り。
俺が気にしすぎなのか?
――
そして今日も講義の合間にパソコンの組み立て。
最近世間ではオンラインゲームが流行っているらしく、うちの店でもゲーム特化パソコンを売り出すことになった。
デモで流れるモニターには一番流行っているオンラインゲームの体験版が流れている。
組み込むパーツは高性能だがお値段も高い。
買う人いるのかな?
「あ、そのゲーム面白いよね」
「これ?」
「武ちゃんがはまってるゲーム。私もしてるけど武ちゃんはどっぷりだよ」
以前雅から聞いたオンラインゲームの事か。
俺もやろうかと思ったけど、忙しくて中々プレイする時間が取れない。
「先輩、まだプレイしていたんだ」
「家のパソコン、ずっとつきっぱなしだよ。それよりさ、クリスマスどうするの? 何か予定はある?」
今のことろ特に無い。
予定を作る事もないだろう。
「もし、予定無かったら家でクリスマスパーティーしない?」
「んー、先輩に悪い気がする。今年は遠慮するよ」
少し寂しそうな雅。
なんだろう、ちょっとだけ胸がチクッとした。
「そっか。もし、気が向いたらおいでよ。ケーキも焼くからさ」
「気が向いたらね」
去年のクリスマス。
今頃愛はどこで何をしているのか。
俺のせいで彼女を傷つけた。
俺が彼女の幸せを奪ったと言っても過言ではないだろう。
今年のクリスマスは一人がいいな。
店長に話してイブとクリスマスの日はフルに出勤しよう。
雅はバイトの時間が終わり、一人で先に帰る。
俺は残って仕事の続き。
契約社員はつらいねー。
「お疲れ様。片岡さん今日も残業ですか?」
戻ってきた成瀬さん。
最近成瀬さんも他の店をカバーしてもらっている。
俺の右腕と言って過言ではないだろう。
「お帰り、ごめんね遠くの店舗で。大丈夫だった?」
「はいっ。初めての生徒さんも多かったですが、楽しくできましたよ」
笑顔の成瀬さん。
本当に頑張り屋さんでいい子ですね。
「ありがとう、いつも助かるよ」
「いえ、片岡さんがいつも頑張っているから。私も頑張れますよ」
ま、俺リーダーだしね!
「さんきゅ。じゃ、明日からのコマ割りを――」
二人で講義室にこもり、いつもと同じように打ち合わせをする。
何だかんだ言って、付き合いも長くなってきた。
「あの、今年のクリスマス何か予定ってありますか?」
うっ、あまり聞かれたくない言葉。
「えっと、今年は忙しいからずっと仕事かなって」
「そうですか……」
「ちょっと仕事がたまっているような気もするし、組み込みとかもまだ残っているし……」
と言ってもクリスマス商戦に向けての作業なので、イブとはきっと暇なんだけどね。
「あの、良かったら食事だけでも行きませんか? おいしい洋食屋さん見つけたんですよ」
さて、どう回答しようかな。
変な期待させても悪いし、断るとこの後の関係が崩れるかもしれない。
うーん、どんな回答が最適解なんだろうか……。
「じゃぁ、仕事が終わったら飯だけ。でも、仕事が終わらなかったら……」
「それでもいいですよ。本当においしいお店なんで紹介したいだけですから」
彼女は笑顔で帰っていく。
俺の選択は間違っていないよね?
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