第49話 温泉といえば


「ほら、純平お肉っ」


「ありがとう! 先輩も一杯どうぞっ!」


「おーとっと。ほら、純平も」


「いただきます!」


 バイキングでおいしいご飯を食べ、おいしいお酒をいただく。

雅は気をきかせ、俺と先輩に色々と持ってきてくれる。


「雅も座れよ、俺が何か取ってきてやるからさ。何食べたい?」


 さっきから動いている雅。

まったく、ゆっくり座って食べればいいのに!


「いいよ、気にしないで」


「いいから、いいから。適当に持ってくるぞ! いろいろ盛ってくるからな!」


「うん。じゃ、お願いね」


 軽くスルーされ、俺は適当に盛る。

確か、雅は脂っこいのダメだったよね。

あとイチゴが好きで、塩辛とかタコワサが好きだったっけ。

お、雅の好きなホタテもあるな。

 

 雅の好きそうなものを取り、戻る。

雅も飲んでいる。珍しいな。


「ただいまっす。ほら、これでいいか?」


「ありがとうっ。純平は私の好みをしっかりと理解してるね」


「まぁな! それなりに付き合い長いしな!」


「このお酒おいしいね。武ちゃんも、もっと飲む?」


「そうだね、もう一本頼もうか?」


「いいっすね! 俺頼んできますよ!」


 再び席を立ち、お酒を注文する。

美味しい、楽しい、旅行っていいなー。


 食事も終わり、部屋に戻る。

すっかりいい気分の俺達は温泉にいく事にする。


「じゃ、ここで待ち合わせね」


「いえっさー。いってら」


 俺達は雅と別れ、先輩と温泉に入る。

先輩と風呂か、一緒にお風呂入るは初めてだなー。

背中とか流した方がいいのかな?


「ふぅー、いい湯ですね」


「だね。純平も最近忙しいみたいだし。順調?」


「まぁまぁですね。先輩も就活とか進んでるんですか?」


「……うん、まぁまぁかな」


 何となく浮かない表情の先輩。うまくいっていないのかな?


「純平、彼女作らないのか?」


 ストレートに聞いてくる先輩。

何気に雅経由で情報はいっていると思うし、あの夜の時も見られている。


「流石にこりましたよー。しばらくはいらないですね。それよりも仕事! 俺も就活しないとですね」


「そう、お互いに頑張らないとね」


 そんな話をして温泉を後にする。

いい湯でした! 温泉のあとはこれですよね!

腰に手をやり、コーヒー牛乳を一気飲み。


「ぷはー! 最高!」


「純平、楽しそうだね」


 雅もあがってきた。

濡れた髪に、湯上りの火照った身体。

普段見ない雅の浴衣姿に、何となく見惚れる。


 何人も湯上りの女性を見てきたが、雅はそのどの女性たちとも違う。

何といったらいいんだろうか? うまく表現できない。


 うーん、何だろこの感情。

可愛いしクラっときそうなんだけど、ムラムラしない。

俺って何かの病気になったのか?


「純平?」


「ひゃい?」


「何ボーッとしてるの? 私にも牛乳」


「俺が?」


「だって、武ちゃん小銭ないっていうから……」


「ごめん、小銭無くなってさ」


「別にいいですよー。牛乳飲めば、雅の背も少しは伸び――ごふぅっ!」


 脇腹に痛みが走る。


「身長の事はいから、牛乳買ってよ」


 俺は口元からコーヒーを少し垂らし、雅に一本買ってあげる。

なんだよ、殴らなくてもいいだろ。


「あ、純平これやっとく?」


「良いですね。先輩、俺元卓球部ですよ」


「奇遇だね。じゃ、いい勝負できそうだね」


――カコンカコンカコン シュッパ


「純平弱い」


「グヌヌヌ、おかしい……」


「純平の負けだね。雅とだったらいい勝負できるんじゃないかな?」


「私下手だよ?」


「だから純平とちょうどいいかなって」


 先輩にバカにされる。

ふん、雅には勝てるさ!


――カコンカコンカコン


 雅の揺れる胸。

そして、さっきから胸元も太もももチラチラしている。

集中できないじゃないか!


――バスッ


 俺のボールがネットに引っかかる。

負けた……。


「純平弱ーい! 武ちゃん私と勝負!」


「良いだろう、負けたら……」


「日本酒でも買って貰おうかなっ」


 意外と本気でラリーする二人。

それを見ているだけでも楽しい。


 少し温泉卓球をして、ホテル内を観光。

お土産屋さんにバー、飲食店にお祭り会場まである。


「先輩! あそこ!」


「射的か、面白そうだね。ちょっと景品でも見てみようか」


 先輩が一人先に射的場に歩いて行く。


「雅! あれ!」


「かたぬき?」


「あれ成功するとお金貰えるんだよ!」


「そう、純平楽しそうだね」


「楽しいさ! お祭り、温泉、おいしいご飯。最高じゃないか!」


「良かった。少しは元気でたみたいだね」


 ……そうだね、すごく楽しいよ。

いろんな事があったし、これからもあると思うけど、今が楽しい。


「さんきゅ。大丈夫、俺はしっかりとやっていくよ。もう、道を間違えない。悪かったな、心配かけて」


 何となく雅の頭をポンポンと叩く。


「何かあったら、すぐに相談してね。私はいつでも純平の味方だよ」


 その目は優しく、俺を包み込むような眼差し。


「あぁ、俺達親友だもんな」


 雅は微笑みながら先輩のいる射的場に向かって歩く。


「武ちゃん、私あれが欲しい」


「あれ? よーし、純平勝負するか?」


「良いでしょう! ガンシューティングスコア保持者の私が本気を見せようぞ!」


 ……はい、負けました。

おかしい、なんで落ちないんだ?

俺は一つの景品に執着し、三回目の挑戦。

そして、四回目をするかどうか悩んでいる。


「純平、あまり無理しない方が……」


「ね、純平。ほら、部屋でゲームでもしながら、お酒飲んでゆっくりしようよ。さっき買ったおつまみもあるからさっ」


「いいね! 射的もいいけど、マッタリもいいね!」


 俺は浮かれながら売店でお酒とおつまみを買い足し、部屋に戻る。

既に布団は敷かれており、寝る準備はできていた。


 ふははは、夜はこれからだぜ!

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