郵便屋のロビン
結城暁
郵便屋のロビンとまいごのこねこ
ロビンは森に住むりっぱなしましましっぽが自慢の郵便屋さんです。今日も元気に手紙を配達します。
にゃあにゃあにゃあ。
森の中から泣き声が聞こえてきます。
こねこが泣いていました。
「どうして泣いてるの?」
「にゃあにゃあにゃあ」
「どこからきたの?」
「にゃあにゃあにゃあ」
「ぼくはロビンだよ。きみの名前は?」
「にゃあにゃあにゃあ」
こねこは泣いているばかり。しかたがないのでロビンは郵便鞄にこねこを入れてつれていくことにしました。
「こんにちは、ワニさん。今日のお手紙です」
「ありがとう」
「この子のおうちを知りませんか?」
「さあ、知らないなあ。きみのうちの子じゃないんだね」
鞄をゆりかごにねてしまったこねこを見たワニさんがいいました。たしかにこねこのりっぱなしましましっぽはロビンのしっぽとよく似ていました。
ワニさんにお礼を言ってロビンは次の家へむかいます。
「こんにちは、ヒョウさん。今日のお手紙です」
「ありがとう」
「この子のおうちを知りませんか?」
「ううん、わからないなあ。きみのうちの子かと思ったよ」
鞄の中でぷうぷう寝ながらロビンのしっぽを抱きしめるこねこの模様は、たしかにロビンの模様とそっくりでした。
ロビンはヒョウさんにお礼を言って次の家にむかいました。
「こんにちは、オオカミさん。今日のお手紙です」
「ありがとう」
「このこのおうちを知りませんか?」
「うーん、知らないよ。あんまりそっくりだからきみのうちの子かと思ったよ」
たしかにロビンのしっぽにじゃれながらきゃらきゃら笑うこねこの瞳の色とロビンの瞳の色はそっくりでした。
ロビンはオオカミさんにお礼を言って次の家にむかいました。
次の家へ、また次の家へ。
お手紙を届けながらこねこの家を探ししたが、こねこの家は見つかりません。
配達先をすべてまわってもとうとうこねこの家は見つかりませんでした。
ロビンの家でこねこはおいしそうにミルクを飲みました。
「このままうちの子になるかい?」
口のまわりをミルクだらけにしたこねこは、のどをならして笑いました。
窓の外にかがやく満月を見ながらロビンはこねこをなでました。
みるくを飲んでぱんちくりんになったお腹がふくらんだりしぼんだりをくりかえします。こねこはむにゃむにゃと寝返りをしました。
明日から郵便鞄でこねこをつれながら手紙を配達する自分を思い描いて、ロビンはくふくふと笑いをこぼしました。
ロビンも眠ろうとベッドにもぐりこむと、誰かが家の戸をたたきました。
「すみません、こちら郵便屋さんのお宅ですか」
「はい、そうです。どちらさまですか?」
「夜分遅くに申し訳ありません。こちらにうちの子がいると聞いてきました」
ロビンが戸を開けるとトラさんがいました。
トラさんはしっぽのしましまも、毛皮の模様も、瞳の色も、こねこそのものでした。
こねこはトラさんの子だったのです。
何度も何度もロビンにお礼をいって、眠るこねこをつれたトラさんは帰っていきました。
トラさんは今日この森に引っ越してきたそうです。明日から配達する家が一軒増えました。
ロビンはこねこが入っていた鞄をのぞきました。手紙も、もちろんこねこも入っていません。
ロビンは鞄の口をしっかり閉じてからベッドに入りました。
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