わたしというもの

わたしのすきなもの

灰色の靴下、

深緑のセーター、

生成りのハイネック、

からし色のモックネック、

濃紺のコーデュロイワンピース、

真っ白な綿のスタンドカラーシャツ、

ウォークインクローゼット、

壊れかけのティッシュ箱、

充電用延長コード、

並んだ敷布団、

ぬいぐるみ、

入浴剤、

防水ケース、

ふかふかのタオル、

毛足の短いバスマット、

二人で組み立てたラック、

隣の家と同じ音がする洗濯機、

取っ手の取れるフライパンセット、

祖母から受け継いだミキサー、

テレビ、携帯、ゲーム機、

タブレット端末、

ペンタブ、

雑誌、

カレンダー、

オーク材の棚、

家具屋で買ったラグ、

すぐに体が埋もれるクッション、

眠ってしまう魔法のブランケット、

幾何学模様が薄く透けるレースカーテン、

台所のラックにある一番下の部分、

何かの時に貰った化繊の大袋、

えんどう豆スナック、

ポテトチップス、

リーフパイ、

煎餅、

焼肉屋、

ファミレス、

近所のラーメン屋、

人のいい店員がいるカフェ、

閉店間際に安売りをするデパ地下、

何時間居ても追い出されない喫茶店、

用もないのに立ち寄る雑貨屋、

駅ナカの北欧系家具屋、

三百円均一の店、

コンビニ、

頼れる同僚、

可愛いあの子、

仕事が早い後輩達、

マシンガントークの使い手、

近所のおばちゃんのような上司、

好きな色を入れられる多色ボールペン、

月の満ち欠け柄のマスキングテープ、

カラー芯のシャープペンシル、

引き切り構造の重い鋏、

ホチキスリムーバー、

スティックのり、

蛍光ペン、

そば茶、

飲み放題の水、

スポーツドリンク、

百円のペットボトル、

自称乳飲料のコーヒー、

粒入りのみかんジュース、

高確率で頼むチーズカレー、

だしが美味いカレーそば、

日替わりのビビンバ、

ホワイトチョコ、

スナック菓子、

外気、

商業施設、

洒落た便箋、

ポイントカード、

慣れた手つきのレジ店員、

コードが酷く捻れたイヤホン、

夜専用のプレイリスト、

マゼンダの定期入れ、

黄色いリュック、

ローカルバス、

普通電車、

信号、

夜桜、

ぼんぼり、

着物姿の観光客、

年に一度会う仲の良い彼ら、

濡らすと模様の浮き出る傘の売り子、

坂道に行列のできる団子屋、

ベビーカステラ、

りんご飴、

公園、

日差し、

木陰のベンチ、

遠足ではしゃぐ小学生、

避暑地の美術館、

無料エリア、

長椅子、

夕焼け、

赤い街路樹、

冷たくなってきた風、

クシャリと音を立てる落ち葉、

色素が薄まってゆく空、

うろこ雲、

哀愁、

凍る道、

スキー板、

スケート靴、

石油ストーブ、

赤くかじかんだ手、

白く凍る息、

マフラー、

外套、

万年筆、

落書き帳、

水彩色鉛筆、

スケッチブック、

絵日記用の無地の文庫本、

いろいろなサイズの紙袋、

どこかの店の包装紙、

薄い桃色のリボン、

紙の千切り、

化粧箱、

封筒、

絵本柄の切手、

実家からの手紙、

会えない友人との手紙、

彼が挙式前に読んだ手紙、

繰り返す日常、

強い信念、

折れない心、

直向きな愛、

わたしのすきを構成するもの。