わたしというもの
もなか
わたしの一日
カーテン、
冬の日差し、
降りしきる雪、
わたしを起こす彼、
生成りのハイネック、
濃紺のコーデュロイワンピース、
朝ごはんの匂い、
牛乳、時計、鳴り響くアラーム、
風に強い雨傘、電子ロックの玄関扉、
駅近くまでわたしを送る煙草臭い彼の車、
鳥が泳いだり休んだりしている川辺、
ボタンを押せばすぐに変わる橋の麓の信号、
駅へと降りる階段、
床に何の目印もないホーム、
ちょうど目の前にドアが来る立ち位置、
ポケットに入ったぐちゃぐちゃのイヤホン、
穏やかなBGMと前向きな言葉が流れるSNS、
カンカンとなる踏切、
電車がそのドアを開ける音、
乗車する人々、
人がぎっしり座る椅子にぽつんと空いた席、
もしくはわたしより先に降りて席を空けてくれるあの女性、
もしくは大きく股を広げ座るおじさん、
終点、
必ず先頭に立てるバスの列、
一番前の座席、
車内の電光掲示板、
とまりますの音、
もしくは慌てて押すとまりますのボタン、
降車したバス停のそばにある寒椿、
葉牡丹、
行き交う人々、
二重の自動ドア、
片付ける携帯、
朝のあいさつ、
タイムカード、
起動したノートパソコン、
始業のベル、
封筒、ハサミ、グレープ味のガム、
書類の確認、マシンガントークの隣人、ミルクティー、
データ入力、ホワイトチョコレート、
昼のチャイム、チーズカレー、
お笑い動画、
他愛のないメッセージのやりとり、
歯磨き、眠気覚ましの飴、
書類作成、
可愛いあの子からのビスケット、
フルーツグミ、
椅子にかけたカーディガン、よれた袖口、
画面、書類、筆記用具、
記載、切り取り、修正テープ、
刻む秒針、
封詰め、素早く切られてゆくセロテープ、
切手の確認、郵便ポスト、腕時計、
安堵の声、
音を立てて紙を飲み込むシュレッダー、
大きくて重たい三つのゴミ袋、
整えられたファイルケース、
コートを手にあいさつを述べる人々、
電灯のスイッチが切られてゆく音、
一際明るい窓際の灯り、
わたしの机、
立ち上げ直したノートパソコン、
疑問点の洗い出し、打ち込み、
推敲、編集、保存、
徐々に冷えてゆく室内、肩にかけた作業着、
動かない指、深いため息、
電源ボタン、施錠、
従業員用出入口、警備員の優しい声掛け、
一気に身体中を纏う冷気、
ほうと吐いた白い息、街灯、
澄んだ外気に響く車の走る音、
休業日の真っ暗なデパート、
賑わうコーヒーショップ、
いくつものライトが点滅するバス停、
蒸気を発し開くドア、
椅子の下から漏れるむっとした風、
駅、
電車への乗り換え、
降りる駅の直前で必ず目覚める居眠り、
上がる踏切、
LEDライトがぽつぽつと着いた帰り道、
かじかんだ手、摩擦熱、足早に進むブーツ、
玄関のあかり、
降ろした鞄、
晩御飯の匂い、
お帰りの声、
わたしの一日を構成するもの。
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