第141話 岩塩探知魔法

「移住してくれそうな民族の情報が手に入った」


 そう言ってダッセンに呼び止められた。


「ご苦労様」

「詳細はまとめておいた。読んでくれ」

「おう」


 その民族の名前はシュズナ。

 山の民らしい。


 俺はドラゴンにゴーレムを乗せてその場所に急いだ。


「おお、神よ。我らに更なる試練を与えたもうか」

「こんちは」


「試練ではなかったのですね。ドラゴンを騎獣として扱うとは剛毅なお方だ」

「聞いた話では民族総出で移住を考えていると」

「ええ、我が民族は終わりです。これからは放浪四散の試練に立ち向かわなくてはなりません」

「ある土地に国を興す予定だが、行ってみる気はあるか」

「あなた様を信用する事ができません。お断り致します」


「そうだよな。普通そうだよな。かと言って信用されるほどの事は起こせないしな」

「そうですね。我々の願いはこの山での暮らしを続けたい。それだけです」


「気が乗った。今ある問題を解決してやろう」

「出来るものなら」

「言ってみろ」

「岩塩の鉱脈が尽きたのです」


 それは、また難しい問題だな。

 やたらめったら掘り進んだところで鉱脈に当たるはずもなし。

 魔法で地中の塩を探すか。


 できん事もないだろう。

 塩を意味する魔法語は『トチリカ』だ。

 呪文のイメージを構築する。


char earth[10000]; /*大地一万立方センチ*/

int main(void)

{

 int i;

 for(i=0;i<sizeof(earth);i++){

  if(earth[i]==SALT) return(i); /*塩を見つけたら深さを教える*/

 }

 return(-1); /*見つからなかった*/

}


 こんなのでどうだ。

 百メートルの深さまで探索できる。

 さっそくイメージを魔法語に翻訳した。


「塩を発見する魔法がある。ソクチス・イチスカクガヌワワワワムレ・

ニミカ・モチニミゆヒラニシよ・が・

ニミカ・ニレ・

ハラスゆニほワレニねトニツイラハゆイチスカクよレニれれよが・

ニハゆイチスカクガニムほほトチリカよ・スイカナスミゆニよレ・む・

スイカナスミゆホヌよレ・む。

この呪文を唱えれば掘らなくても鉱脈が見つかる」


「おお、ありがとうございます。なんて言ってお礼を述べたら」

「良いさ。ただの気まぐれだ」


 シュズナの民が坑道に入って行くのを見送る。

 見つかるかな。

 魔法を作りながら時間を潰す。

 夕暮れになる頃。


「ありがとうございました。おかげさまで鉱脈は見つかりました。もし良ければ移住の件を受けたいと思います」

「この山での暮らしを望むのだろう」

「ええ、しかし今回見つかった鉱脈もいずれは枯れるでしょう。その時までに移住先を確保しておくのも悪く無いと思いまして。シュズナの民の半数を移住させたいのです」

「まあ、いいけどな。ここを出るにあたって所属している国はどう出る」

「たぶん流出は避けたいでしょうな」


「何か策を講じる必要があるか」

「山には岩塩を求める商人しか入ってきません。人数が減った事など分からないでしょう。徐々に国外に逃がせば問題ないでしょう」

「通行許可はどうする?」

「問題はそこです」

「前に芸人に扮して国境を越えさせたが、どうだ」

「ふむ、良い手です。しかし、踊りや喋りが上手くない者もおります。どうしましょう」

「そうだ。あれがあったな」


 考えついたのはニュートリノ魔法だ。

 それがいいな。


「なんですか」

「占い師だよ。物を透視する魔道具がある。カードを客に引かせ、それを当てさせる。そうすれば占い師に化けさせられる。カードの模様を見て、決まりきった文句を言うだけだから、誰にでも出来そうだ」

「おお、それなら」


 段取りが決まった。

 後はホレイルに丸投げでいいだろう。

 あの盆地が人でいっぱいになるまで、まだまだ勧誘する必要がありそうだ。

 色んな人種が加わればリトワース人の権力も薄まるだろう。

 牽制しあって国が上手くまとまれば良いと思う。

 ミニアの権力はほとんどなくて、議会中心の国にしたいな。

 そうすればミニアの出生に疑問を抱かれてもなんとかなるんじゃないかな。

 俺は勧誘する民族に出来るだけ恩を売っておこう。

 そうすれは一つの民族が反乱を起こしても鎮圧は容易なはずだ。

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