第77話 色々な講義を受ける

 次は魔道具学の授業だ。

 講師はもちろんリタリー。


「では、魔道具学1、第一回目の講義を行います。一回目の講義と同じ内容は一週間続くので、一回で分からない人は気軽に講義に来て下さい」


 そう言ってから、魔道具を作る呪文を黒板に書き始めた。


「この呪文で魔道具は作られます。もの凄く詠唱が長い魔法も魔道具にすれば便利です。後で魔石を配るので実際に魔道具を作ります」


 これだけ知ればもう用はない授業だな。

 黒板に着信拒否の呪文が書かれる。


「では実際、魔道具を作ってみましょう」


 ミニアが危なげなく魔道具を作っていく。

 その間にリタリーが講義の予定を黒板に書き始めた。


 第二回、スイッチ付きライト。

 第三回、ストーンウォールの魔道具。

 第四回、生水の魔道具。

 第五回、ファイヤーボールの魔道具。

 第六回、魔力チェックの魔道具。

 第七回、治療の魔道具。

 第八回、コンロの魔道具。

 第九回、誘導弾の魔道具。

 第十回、自由課題


 第十回までの予定が書き込まれた。

 注意事項として呪文と魔石は各自で用意する事と書かれている。

 これ講義の意味ないだろう。

 採点だけをしてくれるらしい。

 講義の中で作った魔道具から試験の問題が出されると、続けて書いてある。


 魔道具学は金の掛かる学問だな。

 俺としてはスイッチ付きライトが気になる。

 魔法都市の呪文屋に売っているんだろうな。

 後でミニアに買いに行かせるか。

 いや待てよ。

 講義で詠唱するのを聞き取って解析すればいいな。

 一応全ての講義には顔を出すようにミニアに言っとくか。


 ミニアの魔道具も完成したらしい。


「みなさん、出来ましたか。着信拒否解除の呪文を書いておきます。続けて作って下さい」


 リタリーは生徒に向かって、そう声を掛けた。

 着信拒否の呪文が消され、解除の呪文が書かれる。

 これは見ている価値がないな。

 意識を元に戻す。

 スイッチ付きライトという事は触ったらオンオフするんだろうか。

 魔道具を使ったり停止させたりするのと大差はない気もするが、何か応用も利きそうだ。

 魔道具の構想を練ったりしている内に講義は終わっていた。


 次は近接魔法学1の講義だ。

 ロッカルダ教授が教鞭を取るみたいだ。

 講師の姿はない。


 黒板に布が掛けられる。

 その布には一番簡単なファイヤーボールの呪文に合わせて剣を操る型が書かれていた。

 ロッカルダの脇には木の人形が置いてある。

 これに向かって剣を振るうのかな。


「ちゅーもーく。今からやるので、よく見ているように」


 ロッカルダは剣を抜いて構えた。

 『ヒラニシ』と歌う間に人形に向かい剣を一回振るう。

 『モチニミゆヒラニシよと・が』と歌う間に三回突き。

 そして、『ハニスイろコチリリろカイトカゆよレ・む』と歌う間にフェイントを織り交ぜて連撃を繰り出した。

 魔法は完成しファイヤーボールと共に剣が大振りに振るわれた。

 ファイヤーボールは人形に当たり焦げ目を作り、剣は人形を両断した。


 想像した通りだな。

 呪文に妙な節がついている他は普通だ。


「今はファイヤーボールを実際に撃ちました。練習では呪文の頭に『メけ』を。呪文の終わりに『けメ』をつけてもらいます。そうすればファイヤーボールは出ません」


 生徒の一人が手を挙げる。


「質問して良いですか」

「いいわよ、どうぞ」

「相手が反撃してきたら、どうするのです」

「防御が織り込まれた型もあります。後で練習しますから、安心してね。試験では冒険者とダメージ無効の魔道具を着けて戦ってもらうから期待しててください」


 ちっとも期待できないんだが、セラリーナを見たら『無理、無理』と言って首を振っていた。

 講義は訓練場に場を移して実戦に入る。

 伴奏をする人達が入って来た。

 ティは休憩するための椅子の上に置かれた。


「音楽に合わせて、呪文を詠唱しましょう。では始め」


 ロッカルダの合図で演奏が始まる。

 『メけヒラニシモチニミゆヒラニシよと・が・ハニスイろコチリリろカイトカゆよレ・む』と歌いながら、生徒が木剣を振るう。

 ミニアを見たら音楽に合わせて踊るように剣を振っていた。

 楽しそうだ。

 セラリーナはへっぴり腰で剣を振るっていた。

 音楽に合わせて歌いながら剣を振るのは大変みたいだ。

 十セットもやったら大半は息が切れて呪文の詠唱がおろそかになっていた。


 ミニアは平気そうだ。

 セラリーナはへたり込んでいる。

 おいおい、運動不足だな。

 もっとも転生前の俺だったら同じ事になってたかも知れないが。


 型を何回か変えて、講義は終わった。




 次の講義は魔法古代史1。

 なんとなく興味があってミニアに頼んだ。


 中年の講師が挨拶して講義は始まった。


「えー、古代王国の事は今でも良く分かっておりません。この分野は未開拓な部分を多く残しています。みなさんには是非、古代王国の謎を解いてもらいたいものです」


 そう言うと講師は黒板にチョークを走らせる。

 書いたのは三つの大きな謎。

 なぜ古代王国は滅びたか。

 呪文を作り出したのは古代王国か。

 古代魔道具はどうやって作ったのか。


 そして更に隆盛期、衰退期、滅亡期と書かれた。


「古代王国の出土品は三つの時代に分類されます。隆盛期は沢山の古代魔道具が作られました。衰退期は魔法の資料をもっとも残した時代です。滅亡期は出土品が殆んどなく謎に包まれています。この三つの時代の事をこの講義では勉強していきます」


 『モラナ・シチモイシチ・ノニツラノナミラ・コチノチンチスラナ』と講師が黒板に書いた。


「この呪文とも思える物は滅亡期の遺跡から出土しました。どんな効果の呪文なのかは分かっていません」


 なんとなく翻訳してみた。

 『もう、駄目だ。貴族の馬鹿野郎』となった。


 愚痴を書いたんだな。

 滅亡期の出土品を全て見たら滅亡の謎が解けるかもな。

 静かなんでミニアとセラリーナを見たら、机に突っ伏して寝ていた。

 久しぶりに運動したので、疲れたのだろう。

 まだ時間はあるが、今日の講義はここまでだな。

 どの講義も一週間同じ事をするみたいだからな。

 起きたらミニアに伝えておこう。

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