第43話 完全治癒

 次の村に行く途中でオーガベアに襲われている親子を発見した。

 急いで降り立つ。


 伝言魔法でミニアに指示をした。

 怪我人が邪魔で魔法が撃てないからだ。

 ミニアは鞍から飛び降りると、ショートソードを一閃してオーガベアを仕留めた。


 親子はオーガベアに切り裂かれていて今にも絶命しそうだった。

 あの肉が盛り上がる魔法では無理そうだな。

 出発前に貰った魔法で完全治癒と思われる魔法があった。

 イメージはこんなのだ。


void main(void)

{

 system("copy /-Y 魔法名.bbak 魔法名.body"); /*バックアップから体書き換え*/

}


 発動しないのも当たり前だ。

 こんなのが発動するのなら、かさぶた版の魔法はなんだって事になる。

 考えろ、考えろ。

 これがなんで駄目なのか。

 魔法っていうのはコストパーフォーマンスが非常に良い。

 魔力で確保する領域を使いまわしたり出来る。

 つまり魔力イコール燃料ではない。

 魔力は現象を起こすきっかけだ。

 情報をやり取りする魔法は魔力で領域を確保していないがこれは例外だと考える。

 こう考えると魔力で領域を確保しない魔法は成り立たない。

 そう考えるとしっくりくる。

 イメージを組み立てた。


void main(void)

{

 TEL *tpi,*tpo; /*体の定義*/

 char s[256]; /*読み込みの領域*/


 tpi=topen("魔法名.bbak"); /*体のバックアップを開く*/

 tpo=topen("temp"); /*仮体を開く*/


 while(tgets(s,256,tpi)!= NULL ){ /*体読み込みが尽きるまで繰り返す*/

  tputs(s,tpo); /*体を出力*/

 }


 tclose(tpi); /*閉じる*/

 tclose(tpo); /*閉じる*/


 system("copy /-Y temp 魔法名.body"); /*体書き換え*/


 tpi=topen("魔法名.body"); /*体を開き直し*/

 body_remake(tpi); /*体を再構成*/

 tclose(tpi); /*閉じる*/

}


 一見コピーを二回しているように見えるが。

 魔力で出来ている領域『s』が介在する事によって魔法が発動する条件が整う。

 これで駄目ならどうしようもない。

 二人の魔法名を鑑定する。

 父親だろうと思われる方に秘術を試すと伝言魔法を送った。


「む、む、息子から、お、お、お願いします」


 良かった二分の一の確率だったが、合ってて良かった。

 ミニアに父親と話をさせる。


「初めて。実験台」

「お願い……」


 やばい慌てて魔法を発動させる。

 傷は瞬く間に癒えた。

 あれ癒えてない。

 傷ついていないはずの左、二の腕がぱっくりと割れた。

 そうか、バックアップって前に治癒魔法を発動した時に更新されたのか。

 肉が盛り上がる治癒を掛けてから、かさぶたになる治癒を掛けた。


 息子の方を何とかしないと。

 大急ぎで完全治癒を掛ける。

 駄目だ。

 反応がない。


「しっかり」


 ミニアがいつの間にか眠っている父親を殴る。

 父親は飛び起きると息子を揺さぶった。


「目を開けろ。目を覚ますんだ。眠ったら駄目だ」


 必死の呼びかけが届いたのだろう。

 息子は半目を開けた。

 そして傷が回復。

 いくぶん身体が縮んだようだ

 関係ないスネに血が滲む。

 かさぶたになる治癒を掛けた。


「とうちゃん。痛いよ」

「悪かった。強く抱きしめたりして」


 どうやら助かったようだ。


 教訓バックアップはこまめに取る。

 プログラマーの常識でもある。

 これを怠って泣きをみたプログラマーが何人居た事か。

 自動でバックアップを取ってくれるシステムもあるが、それに頼っていると泣きをみる事にも。

 理想は毎日の日付つけたバックアップだ。

 これなら最悪でも一日前に戻るだけだ。

 三日前にやらかしたなんて場合でも対応できる。

 それに複数のメディアに取る事が望ましい。

 前世では自分でツールやプログラムなどを使って取っていた。

 懐かしいな。

 昨日の事の様に思えた。


 体のバックアップは毎日取ろう。


void main(void)

{

 system("copy /Y 魔法名.body 魔法名.bbak"); /*バックアップから体書き換え*/

}


 このイメージでいけるはずだ。




 発動しなかった完全治癒魔法は古代王国産ではない。

 開発した人の名前と日付が書いてある。

 およそ五十年前だ。

 バックアップの存在に気がついたのは素晴らしいが、その後が上手くいかなかったのだな。

 リトワース王国宮廷魔法使いとあるから暇をみて尋ねるとするか。


 さてと、病気治療の魔法も見てみるとするか。


char virus[10]; /*ウィルス*/

void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=magic_make(virus,sizeof(virus),IMAGEUNDEFINED); /*ウィルスを魔法に*/

 magic_delete(mp); /*ウィルス消去*/

}


 イメージはこんなだな。

 『virus』に対応する『ヒニスナト』という魔法語が分かれば簡単な魔法だ。

 それと体の中にあってもウィルスはその人の魔力には染まらないと分かった。

 別の生き物だからな。

 草と同様に微弱な魔力しか持たないウィルスは自然の魔力として自由にできるのだろう。

 地面で拘束する魔法も地面が見えていてしっかりイメージ出来ないと失敗する。

 病気治療も体のどこに病原菌が巣くっているかイメージ出来ないと駄目なんだろうな。


 病気治療の魔道具は簡単に作れそうだが、素人に治療は難しそうだ。

 ミニアにその事を伝える。


「病気治療。魔道具。作れる」


 ミニアがタルコットに向かって言った。


「ああ、それはもう既にありますな。需要はあるので暇をみて作って貰えるとありがたいです」

「ウィザ。がんば」


 訂正しろとミニアに言うのもめんどくさい。

 何かタルコットは悟った顔をしている。

 変な誤解をしていなきゃ良いのだが。




 そして俺達は村をはしごして商品を売り歩き。

 日が暮れる頃に国境の街『ルカイル』に着いた。

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