第31話 陽射しが、斜めに窓から入り込んでいる。

 こんな現場を出勤してくるハウスキーパーに見られでもしたら、たまったものではない。あられも無い恰好で、二人とも居間のカーペットの上で、飛び散らかした服の真ん中で抱き合っているのだから。

 あたしはひどく重い身体をゆっくりと起こした。差し込む光に目が痛い。結局、全然昨夜は眠っていないのだ。

 斜めの、白をはらんだオレンジ色の光が自分の身体に直撃する。

 ふっと視線をずらし、鏡を見ると、陽の光に、あらわになった自分の身体が光っている。不思議なもので、光が強すぎると、ちょっとした肌に染み着いたものが見えなくなる。

 だけどそのラインはよく判る。確かに変わったのだ、自分は。

 あのいつも誰もいない、自分が住むことすら歓迎されないあの家で見た、あの少女は、もう何処にもいない。

 身体の線を全て、あのコットン100パーセントの鎧で隠して鏡の前でポーズを取るあの少女は。

 ここに居るのは、何処をどう見ても、もうただの、おんなだった。

 大きく丸い胸のラインが、その上に微かに見える無数の赤い染みがそう主張していた。


「何見てるの?」


 HISAKAもまた、ゆっくりと身体を起こした。

 長い髪が彼女の身体にまとわりつく。

 淡い色の金髪は、きらきらと朝の光に輝いている。光をまとっているようだ、とあたしは何となく思う。


 何でもない、と言って、あたしはHISAKAに絡む光の束を手に巻き付けた。

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