人工現実

 自分はこれまでの人生で、人や物よりも、自身の体験を重視してきたように思う。友達がほしい、恋人がほしい、車がほしい、そういうものよりも、面白い体験がしたい、見たことのない景色が見たい、といった具合である。もちろん、恋人や車があれば、また違う体験があるだろうが、それはそれとして。


 金の使い方で言えば、本や映画、それに旅行が多いだろう。

 特にフィクションの作品は、自分の人生では起こりえないことを疑似体験できる。現実でも、莫大な金と時間を費やして、宇宙へ行こうとする個人がいるが、映画館に行けば二千円もしない。そして私はそれで満足なのである。また、グーグルマップで旅行するのも良い。一生かけても行けないような長距離を、広範囲を、冷房の効いた自宅で移動できる。なんと素晴らしい時代か。


 そこそこのリアリティさえあれば、それでいい。

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