馬鹿

 小説を書いていて、いつの日か先生と呼ばれたいとは全く思わないが、だからといって馬鹿と呼ばれたいわけでもないので、最近ちょっと勉強をしている。ああ、この響きのなんと空虚なことか。いまさら数学や英語を少し触ったところで、私の人生になんの役にも立たないことは分かりきっているので、せめて、自分の専門分野ぐらい、ある程度の水準を保っておきたく思い、リハビリがてら高校の教科書を引っ張り出し、それだけでもなんなので、より詳しい専門書を同時に読んでいる。


 これがどういう具合なのか、分からないところはさっぱり分からない。一度歩んできた道であるし、ある程度試験も点数を取ったはずなのだが、なんというか、脳が思考するのも拒否している。勉強という行為そのものを受け付けなくなっているようだ。それでも、所詮高校の範囲なので、なんだこんなもの、というような単元もある。そこから少しずつ、少しずつ歩を進めている。昨日は玄関まで来た、今日は玄関の戸を開け日光を感じた、とこんな感じだ。

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