ー 雨傘 ー

玄関の扉を開けると、外は暴風雨だった。

いつもならこんな日は、骨が折れない67センチの安価な代打傘を持っていくのだが、どうもどこかで無くしたらしい。仕方なく玄関にあった傘に手をかける。

それは、水色のテープでパイピングされた、透明のビニール傘。

はじめは小雨だった雨粒は、どんどん大きくなり、私に雨跡を付けた。強風に煽られることを恐れ開こうとしなかった傘の帯、そのボタンをやむを得ず外した途端、骨の間を縫って風が入り込み


花が開くように傘が壊れた。


あの動物園に行けばまた同じ傘が買えるのだろう。しかし、新婚旅行で雨宿りするために入った売店で、ビニール傘なのに可愛いねと言いながら買ったあの気持ちが詰まった傘は、もう二度と手に入らないのだ。

外套、鞄、靴。雨で埋め尽くされていく。

前髪から滴る雨粒がしみて、泣いた。

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