ー 死神 ー

子供を寝かしつけるとき、親の方が先に眠りについてしまうというのは、世の中往々にしてあることだが、私は昔からそれが嫌いだった。

私にとっての夜とは、すなわち死後の世界そのものだった。夜は死者の世界。どこかへ連れ去られてゆく時間。私が安らかに眠るときには看取ってほしいという気持ちこそあれ、相手が先に死んでゆく姿など見たくもなかった。

幼い頃、毎晩のように傍で眠る父親を見ながら、今日も私は置いてきぼりにされてしまうのかと、子供心に漠然と悟りを開いた。

私はただ、自分が全てを手放すのを見守っていてほしいだけなのだが、これがなかなか、他者にとっては難しいことらしい。

今もこうして、大切な人が隣で眠りにつこうとしている傍ら、私は横向きに寝転んだ自分の背中から何者かに生命を抜きとられる感覚を覚えている。

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