第22話 被害10(デートの誘い)
キーンコーンカーンコーン。
5時限目終了のチャイムが教室に鳴り響きます。
ふぅ、疲れました。でも今日も昼休みの時間先輩と話せて幸せでした!また明日が楽しみです!あ、何か連絡が来てます。何でしょう?
休み時間に入り、スマホを開くと通知が来ていました。気になったのでスマホを開きます。
『放課後、校門前で待ってるから来い』
え!?先輩からRINEが来てます!いえ、先輩からメッセージが来ること自体はよくあることなのですが、大抵は夜に話している時だけです。
それなのに昼間に連絡が来るなんて!どうやら放課後に用事があるみたいです。また先輩に会えるなんて!1日2回も会って話せるのは嬉しすぎます。
それにしても一体何の用事でしょうか?ま、まさか告白とか……。
いやいや、そうやって勝手に期待して落ち込んだことが最近あったではないですか。それなのにまた期待してしまうなんて、本当に私はどうしようもないですね……。
好きになってしまったものは仕方がありません。いくら期待しても起きえないことなのに、それでも期待してしまうんです。抑えようとして抑えられるものではありません。
どうしても告白を期待してしまう自分に自嘲の笑みが溢れてしまうのでした。
放課後、約束通り先輩の待つ校門前に向かいます。あ、いました。あの見慣れた後ろ姿は先輩で間違いありません。
相変わらず後ろ姿もカッコいいです!先輩の姿を見つけた私は先輩の元へ駆けていきます。会えた嬉しさで思わず走ってしまいました。
「それで、先輩。呼び出してどうしたんですか?まさか告白ですか〜?まあこんな可愛い私に声をかけられ続けたら、惚れちゃうのはわかりますけど〜?」
ああ、またからかう口調で言ってしまいました……。なんで、私はもっと素直なように言えないのでしょう。頭では分かっているのに、どうしても恥ずかしくて誤魔化してしまいます…。
「違えよ。お前、俺の教室に生徒手帳落としていっただろ。ほら」
「ですよねー、分かってました…ってええ!?私の生徒手帳ですか!?」
告白勘違いも2回目ということもあり、そこまでショックは受けませんでした。それよりもそのあとの言葉に驚いてしまいました!
「そうだよ、こうやってわざわざ渡してやろうと思ったのに…。お前そんなにからかってくると渡さねえぞ」
「え!?それは困ります!からかったのは謝りますから返して下さいーー!!」
生徒手帳はまずいです!あれには先輩とのツーショットが……。慌てて先輩から取り返します。パラパラと中身を確認すると、写真の位置は動いていませんでした。
「せ、先輩、中見てないですよね…?」
見られていたらどうしましょう。なんて思ったでしょうか?
「ああ、見てない」
「そ、そうですか」
安心しましたが、少し残念な気持ちもありました。見られていたらどうなったのでしょう。少しは私の気持ちに気付いて何か変わったのではないでしょうか。
そんな思いが、ほんの少しだけ私の中に残り続けました……。
「生徒手帳拾ってくださってありがとうございました。それじゃあ、バイバイです。先輩」
用事が終わったみたいなのでこれで先輩とはお別れです。もっと話していたかったですが、これ以上いっしょにいたら先輩が迷惑に思うかもしれません。
ただでさえ昼休みしつこく話しかけて迷惑をかけているのです。放課後まで一緒に居続けるのはもっと迷惑になってしまいます。離れ難い思いから目をそらし、私は別れの言葉を口にします。
「待てよ。お前今日放課後空いてるって言ってただろ。1つ付き合ってほしい場所あるんだよ。」
「へ?それってこれから行こうってことですよね?」
え?え!?今、私誘われましたよね?
「ああ、無理なら大丈夫だ」
「い、いえ!行きます!絶対行きます!」
信じられません!まさか先輩から放課後デートに誘われるなんて!こんな大事なこと断るわけがありません!絶対行きます!
1日2回も会えること自体が滅多にないことなのに、まさか放課後一緒に出かけるなんて!夢じゃないでしょうか?今から楽しみすぎて、テンションが上がってきました。
「お、おう。それなら良かった。実は妹の誕生日が近くてな。そのプレゼント選びを手伝って欲しいんだ」
「なるほど〜、精一杯プレゼント選び頑張りますね」
「ああ、じゃあ、行くぞ」
こうして私は先輩との夢の放課後デートを叶えたのです。
♦︎♦︎♦︎
先輩と一緒に目的の場所に向かって歩き始めました。
「〜♪」
「鼻歌なんかして、随分機嫌が良さそうだな、雨宮」
「え!?私今鼻歌してました!?」
鼻歌をしていたなんて全然気付きませんでした。しかもそれを先輩に聞かれていたなんて、恥ずかしいです…。
でも、鼻歌をしてしまうのは仕方ないんです。やっぱり先輩の隣を歩けるのは嬉しすぎます!
すぐ横を見たらカッコいい先輩の横顔が見れるのですよ?最高すぎです!付き合えたら毎日隣を歩けるなんて羨ましすぎます。こんな景色を毎日味わえるなんていいですね……。
「ああ、とても楽しそうな感じだったぞ」
「えへへ、やっぱり放課後まで先輩と一緒にいられるから嬉しくて…」
あ、やってしまいました。幸せすぎたあまり、本音がそのまま漏れてしまいました。私の一言に先輩は一瞬固まり、歩みが止まります。
どうかしたのでしょうか?
しかしすぐに歩き出したので、尋ねることは出来ませんでした。
「アクセサリーショップ??」
案内され着いたところはアクセサリーショップでした。
「まあ、そんなところだ。早く入るぞ」
中に入ると、所狭しと様々なアクセサリーが陳列されています。
「わあ!どれも可愛いですね、先輩!」
「ああ、そうだな。こっちのストラップ系のでどれがいいと思う?」
「ん〜、そうですね〜」
色々店内を見て回ります。色んな種類のアクセサリーがあり、悩んでしまいます。
それにしても先輩でも妹の誕生日は祝ってあげるんですね。きっと大事にしているのでしょう。そうでなければ誕生日プレゼントを買おうとしたりしないはずです。本当に妹さんが羨ましいです。私も先輩にそのぐらい大事されたいです。
もし、私が先輩からプレゼントなんて貰ったら嬉しすぎて泣いてしまいそうです。まあ、そんなことはありえないのですが。
その後、一生懸命合いそうなのを考え続けやっとプレゼントにふさわしいものを決めました。
「先輩!これなんてどうですか?」
気に入ってもらえるでしょうか……。
「ああ、これでいい。ありがとう」
「…!?」
え?え!?先輩が笑顔を見せましたよ!?なんですか、その笑顔!私をキュン死させる気ですか!不意打ちすぎます…。だんだん顔が熱くなっていくのが分かります。
普段の鋭い感じがなくなり幼いあどけなさが残るその笑顔は、可愛すぎます!笑うとあんなに目がくしゃっとなるなんて知りませんでした。もう、ほんとうにドキドキします…。
「どうした?顔が赤いぞ?」
「な、なんでもないです…」
笑顔で惚れ直してたなんて言えるわけないじゃないですか……。顔が赤い理由を誤魔化して、会計を終えました。
「じゃ、じゃあ、バイバイです、先輩」
お店の前で別れを告げます。さっきの笑顔のせいでまだ心臓がドキドキしています…0。
「ああ、じゃあな」
挨拶をして、先輩はそのまま行ってしまいました。やっぱり楽しかった分、今は少し寂しいですね……。
「あ、そうだ、雨宮」
名残惜しく先輩の後ろ姿を見ていたら先輩はこっちを振り向きました。
「はい?何ですか?先輩?」
「来週の日曜日、空いているか?」
「来週の日曜日ですか?空いてますよ?」
「そうか、じゃあその日一日、一緒に遊ぶぞ。悪いな、この後用事あるから詳しくは後で連絡する。じゃあな」
「え?え!?ええーーーー!?!?」
え?え!?今、デートの約束しました?しましたよね?しかもその日って私の誕生日……。もうわけが分かりません……。
頭はパンクし、私はただただ顔を赤くすることしか出来ないのでした。
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