生配信13 練習
「どうも、今日もゲーム配信! 配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です」
こうして夜の配信が始まる。
「今日もね、エーペックスをやっていきます」
予定通り、夜はエーペックスをしていく。
『こんばんは』
『こんばんは』
『こんばんは』
「こんばんは。見に来てくれてありがとう」
視聴者は346人と300人を超えている。
「今日もカジュアルを回していこうかな」
基本俺はエンジョイ勢なので、ランクマッチはあまりしない。するとしたら、サキサキさんのマウントを取りに行くときぐらい。
カジュアルマッチのトリオを選択し、準備完了ボタンを押す。
エーペックスのカジュアルには、トリオとデュオがあり、名前の通り3人か2人かが選べる。
マッチ待機中は、基本リスナーさん達のコメントを読んだり、質問を返したりしている。
『配信外では何をしてますか?』
「漫画読んだり、人の配信を見たりしてますね。俺は、配信をメインにしているので、動画編集とか無いんですよ。だから、結構暇してます」
『お酒とかタバコはやってますか?』
この質問はよく答えてる。だから、その質問には一部のリスナーさん達答えたりする。
『タバコは吸うよね』
『配信では吸ってないけど、吸うって言ってた気がする』
『タバコは吸うよ、滝は』
こんな感じで。
「そうですね、タバコは吸いますね。ヘビースモーカーでは無いですけど。その代わり酒はあまり飲みません」
一部のリスナーさん達が答えているが、一応答える。
『ゲームはどんなジャンルが好きですか?』
これも結構定番の質問。
「格ゲーが大好きですね。次にFPS。FPSは1人称視点の方が好き。『レインボーシックス・シージ』とか『CoD』とか」
3人称視点のシューティングゲームをTPS—Third Person Shooterと言うのだが、別に嫌いでは無いが、1人称の方が俺は好き。
『格ゲーはうまいよ。滝は』
『でも最近は、ねぇ?』
『うん、ねぇ?』
『それは、ねぇ?』
「………言いたいことがあるなら、はっきり言おうや? 買うぞ、喧嘩は買うぞ!」
でも、リスナーさん達の言っていることは当たってる。
対人戦闘ゲーム系は、やらないとプレイスキルが落ちていき、素人に毛が生えた程度になっていく。個人差はあるが。
「まあ、確かに格ゲーは最近やり込んでないからな。上手くはないかも、下手ではないけど」
普通くらいかな。聡太さんとかサキサキさんとか絵茶さんくらいなら、余裕で倒せるけど。
どこから湧いたのか分からんけど、自信はある。
質問には答えていると、カジュアルマッチがマッチングする。
「さて、じゃあ、質問は一旦中止で」
『了解』
『りょ』
『了解です』
さて、カジュっていきますか。
もちろん、使うキャラはレイス。
初期キャラしか持ってない俺は、初期キャラのレイスとジブラルタルとブラットハウンドしか使わない。と言うよりも、使った事のあるキャラがそれだけなのだ。
さて、降りるのは俺じゃないな。
飛行船から降りるのは俺の役目ではなく、野良さんだ。
どこにいくのかな。
フリーな場所がいいな。
フリーでなく、他のパーティーが同じ場所にいた場合、武器の性能によって勝ち負けが決まるときがある。
これを武器ガチャと言う。
ガチャが成功すると良い武器は手に入り、戦闘面において有利になる。失敗すると雑魚武器しか手に入らず、こんな武器で戦えるか、と叫ぶほど無知な状況に陥る。
だから、他のパーティーが降りているところに行きたくないのだが、
「嫌だ嫌だ嫌だ!」
今、野良さんが降り立とうとしているところには、俺らパーティー以外に3パーティーが降り立とうとしている。
『死んだな』
『初動死か』
『まだワンチャンある』
『立ち回りを上手くすればいけるよ』
始めたばかりの奴に立ち回りもクソもなくない?
「いやだぁあああああ!」
そう叫んだって、現実は変わらない。
味方と少し離れたところに降り立つと、目の前に敵が降ってくる。
あっ、これは終わった。
『殴れ!』
『殴れ』
『殴って殺せ!』
コメント欄には物騒なコメントが流れる。
いや、殴るよりも武器を探した方が………いいや、殴った方がいいか。そうだよ、殴って体力を削った方が、味方が助けに来た時、助かるんじゃね。
俺は目の前で背を向けている敵を殴る。
「おらぁああああああ!」
1発殴ると敵は俺の存在に気づき、殴り返してくるが、
「当たらん、当たらん!」
距離が掴めないのか、1発も当たらない。
「こちとら、格ゲーが好きな配信者じゃあ! 武器持ってない奴に負けるほど弱くないわ!」
ノーアーマー同士の拳の戦い。
結果はもちろん、俺の勝ち。
「よしゃあああ! ノーダメですよ!」
『格ゲー好きなだけはある』
『さすがw』
『殴ってキルしちゃえ』
ダウンしている敵をキルするために、殴る蹴る。
「ごめんな、ここは戦場だから許してくれ」
確定キルまで持っていき、周囲の物資を漁ろうとしていると、前方から足音がする。
「………まさか」
マップで味方の位置を確認すると、俺の後方にいた。
つまりだ。
前の足音は味方のではなく、
「敵いいいいいいいいい!」
先程キルした敵の仲間だと推測できる。しかも、
バババババババッ!
武器持ちのお仲間さんは俺の存在に気づいているようで、めちゃくちゃ撃ってくる。
武器持ちの対ノーアーマーの俺。
これは死んでも仕方ないでしょ、リスナーさん達もそう思うよね?
『殴れ』
『格ゲーマーの本領を見せたれ』
『拳の力見せたれ!』
『拳が最強』
………おう、俺のリスナーさん達は脳筋なのかなぁ? この状態で勝てる見込みある? ノー武器ノーアーマーの俺だよ? 敵さん、武器は持ってるし、多分アーマーも着てるよ?
色々聞きたいことはあるが、一旦遮蔽物に隠れる。銃弾から身を守りながら、俺は一応聞く。
「本当に行く?」
『行くべき』
『ヤレ!』
『殴れ』
はぁ、オーケイ。じゃあ、やるか。
「よしゃ、行くぞ」
多分だがこのまま突っ込んでも、只々死ぬだけ。
なので、まずは耳を澄ます。足音で敵がどこから来るか予測する。
「右からくるね」
『右から足音してるね』
『右かな』
『どうする?』
右から来ると予測し、次の行動を考える。
次に取れる方法は3つ。
1つ目は来たらすぐ殴る。
この行動はかなりリスクがある。立ったまま殴るので、銃弾を受けながらの戦闘になる。
2つ目はジャンプしながら蹴る。
こっちの行動は、そのまま殴るよりもリスクは低めだ。銃弾は、ジャンプで避け、ジャンプ中に格闘するキーを押すと、蹴りに変化するのだ。
3つ目はしゃがみながら殴る。
しゃがむことにより、銃弾の当たる面積を小さくなる。そもそも敵も、俺がしゃがんでいるとは思っていないだろう。撃つ時はしゃがんでいる俺に照準を合わせなくてはならないので、その間に殴る作戦だ。
2と3は同じ低リスクかもしれない。
死ぬリスクを考えるなら………2択か。
「………よし」
足音は段々と近づいてくる。
敵の身体が出てくるタイミングに合わせて、
「ここだ!」
俺が隠れている遮蔽物の右側から敵の身体が少し見え、見えたと同時にジャンプする。
「食らえや!」
タイミングが良かったとしか言えない。
ジャンプした瞬間に、敵の身体全体が遮蔽物から出てくる。出てきた瞬間に俺の蹴りが1ヒット。
エーペックスでは殴られたり蹴られたりすると、ノックバックする。
蹴られた敵は後ろに吹っ飛ばされ、その間に俺は距離を詰める。
「もういっちょ!」
今度は敵の目の前でしゃがみ、すぐさま殴る。
これで2ヒット目。
相手は白アーマーで、アーマーが割れた音がする。
「さらに………よいしょ! あと何回殴れば終わるんだ?」
3回は殴った。そろそろ限界。
『あと2回!』
『2回で終わり!』
『倒せる倒せる』
『格闘は30ダメージ! 白アーマーの敵の体力は150だよ!』
なるほど、30ダメージ。あと2回ねぇ。
と言っても、流石に無傷とはいかない。
「痛ったぁあ!」
乱射する敵の銃弾が2発当たる。
「やばいやばいやばい!」
3発目が当たり、俺ももう1発殴る。
あと1回。体力はまだ俺の方がある。
「死ねぇえええ!」
こうなったら特攻あるのみ。そして、
「おしゃああああああああ!」
格闘だけで1人をキルし、もう1人をダウン状態まで持っていく。
『ないすぅぅぅぅぅぅぅぅ!』
『マジかwwwwww』
『つよ草』
『格ゲーマーに喧嘩を売った奴の末路か』
ダウン状態の敵をキルするために、殴る。
「どうだ! 俺の! 強さは!」
敵は諦めたのか、動かず俺の殴りを食らっている。
「これで、どう」
最後の1発を当てようとすると、
バシュッ!
「嘘おおおおおお!」
背後から近づいてきた敵に殴られ、俺もダウン状態に入ってしまう。
「嘘おおおおおおおお! イヤダァアアアアアアア! 死にたくない! 味方さん、早く来てぇええええええ!」
俺は頑張った。2人倒したのだから、だから早くカバーに来て欲しい!
バシュッ!
「痛い、痛いよ」
今度は逆に殴られている。
ああああ、やばい! キルされちゃ、
「あああああああああ」
『ドマ』
『ナイファイ』
『しゃあなし』
『GG』
ええ、キルされちゃいました。
はぁ、しゃあなし。2人目を倒した時点で体力はなかったし、3人目はどう足掻いたってキルされてたよね。
さて、味方の野良さんは何をしているのかな?
このゲームはキルされると、味方の視点に変わり、プレイを見ることができる。
「ああ、なるほどね」
『これはしゃあなしか』
『カバー来れんわ』
『GG』
『お疲れさま』
野良さんの視点に変わると、1人は物陰に隠れてハイドしており、もう1人は遠くに逃げていた。
つまり、戦っていたのは俺だけで、他2人は戦いを避けていた。
これは、
「どうしようもないね」
『そうだね』
『マッチから抜ければ?』
『次のマッチ行けば?』
『2人倒したのにね』
「いや、2人がキルされたら次のマッチ行くわ」
味方に助けてもらう、という選択肢はない。なので、この時間はリスナーさん達と会話の時間にする。
「そういえば、サキサキさんと絵茶さんの猫語尾配信見た?」
『見た』
『見てない』
『見た』
『サキサキさんのあれは、あれでいいのか?』
「うーん、いいんじゃね? 途中からちゃんとやってたし、サキサキさんのリスナーさん達は満足してたし」
どうやら見た人もいれば見てない人もいるらしい。
「サキサキさんはアーカイブ残してなかったから、コラボ相手の聡太さんのアーカイブ見た方がいいかも」
この配信をする前にサキサキさんのチャンネルの動画一覧を見たところ、本当に残してなかった。だから、見てない人のために聡太さんのアーカイブを勧めておく。
『見なくては』
『マジか。ありがたい』
『もう一回後でみよう』
何度も見たい人も聡太さんのアーカイブをどうぞ。
あっ、そういえば。
「そのコラボ配信に俺も参加したんだけど、その時に」
絵茶さんからの提案について、見てるリスナーさん達に伝える。
「ダメージ勝負を再度することになって、今度は俺と聡太さん、マッチングした野良さんチームVSサキサキさん、絵茶さんと助っ人さんチームってな感じになりました」
あの配信の後、4人で話し合って、勝負内容とルールについて決めたことを話す。
「んで、もちろん罰ゲームもあって、サキサキさんのチームが負ければ、猫語尾続行に赤ちゃん言葉、あと何だっけ、ええっと」
『あざとい喋り方じゃなかった?』
『あざとい喋り方』
『あざとい』
「そうそう、あざとい喋り方で配信するらしい。1週間交代で3週間する。で、俺らが負けた場合は、猫語尾終わりで、あと何でも1つ言うことを聞く」
『滝にメリットないじゃん』
『それやる意味ある?』
『勝ってね、絶対』
そうなんだよ、リスナーさん達。でもね、これ、
「メリットないんだけど、聡太さんが、そのダメージ勝負の配信、俺の配信の方を見てたらしくて、参加したかったんだって。だから、やることになったのよ」
この話もコラボ配信後に聞いた。
「勝負は明日の13時から16時の3時間。この3時間の間に、1番ダメージを出した1マッチのリザルト画面をスクショしてTwitterに乗せて、勝負するらしい」
『じゃあ、昼配信は?』
『エーペックスなの、昼配信』
『なる。Twitterの通知機能戻しとこ』
『絶対勝ってください。サキサキさんのファンなので』
『絵茶さんのファンなので、勝ってください』
そこは俺のファンだから負けないでください、とか言って欲しかったな。
「うん、だから昼配信はエーペックスをやります。夜は未定で」
『了解』
『おk』
『了』
まだ野良の2人は生きているので、もう少し話せる。
「正直サキサキさんと絵茶さんには俺1人でも勝てる。っていうか、勝ってるから問題はない。でも、助っ人の人がね」
絵茶さんはその助っ人の人を俺らに教えてはくれなかった。絵茶さん曰く、本番のお楽しみらしい。
いや、絶対強い人持ってくるでしょ。
「はぁ、2日で終わってしまうかもしれない。猫語尾罰ゲーム」
『ん?』
『ん』
『何で?』
『今日で終わりじゃないんだ』
「ん、何で終わりなの? もちろん、明日の13時から16時の間ダメージ勝負でも猫語尾使ってもらうよ」
それはそうだ。これは絵茶さんも了承済み。
サキサキさんのチームが勝ったら猫語尾終了なだけであって、勝ってもない勝負中は罰ゲームをしてもらう。
『助っ人次第だね』
『助っ人次第か』
『聡太さんいるんだし、2人ともスナイパー使えばダメージ稼げるんじゃない?』
「うん。俺はスナイパー持つけど、聡太さんはどうかな? 生き残ることを考えると、3人のうち2人スナイパーはどうなんだろう?」
これについては、明日やってみないと分からない。
リスナーさん達に明日のダメージ勝負のことを話していると、いつの間にか野良さん2人は、チャンピオンを取っていた。
全然画面を見ていなかったから、どういう勝ち方したのか分からないけど、ゲーム内チャットに、GGの2文字を送っとく。
ロビー画面に戻りながら、今日の夜配信の目的を伝える。
「だから、その勝負に向けてスナイパーの練習をするわけよ、この配信で。偏差とか、どのスナイパーが俺にあってるかとか」
次のマッチに行きために、準備完了ボタンを押す。
『勝ってください』
『赤ちゃん言葉聞きたいです』
『あざとい喋り方も聞きたい』
「任せろって。必ず勝つから」
そう言って、俺は次のマッチに行くのだった。
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「いい感じにダメージ稼げたんじゃない?」
配信時間を30分過ぎ、今は2時半。
『チャージライフルよりトリプルテイク良かったね』
『トリテいいと思う』
『よく200近く離れた敵を倒せたね』
『偏差撃ち上手すぎ』
チャージライフルと言う武器は、レーザーガンそのものだった。2秒ぐらい出るレーザーで敵にダメージを与える。
この武器は、弾が垂れることが無いので、偏差撃ちとかしなくてもダメージが稼げる。なかなか良いスナイパーライフルだと思う。
でも、俺に合った武器はチャージライフルではなく、トリプルテイクと言う武器で、1度の引き金で弾が横に3発出てくるスナイパーライフルだった。
「見てよ、このダメージ。1958ダメージだよ。………スクショして、Twitterに載せよ」
Twitterに載せたところで、配信を締めていく。
「じゃあ、そろそろ終わりにしていきます。ご視聴ありがとうございました。明日のね、13時からダメージ勝負始まるんで、良かったら見に来てください。バイバイ!」
そう言い、配信画面を閉じる。
「ふぁああああ」
腕を上に伸ばし、身体を伸ばす。
タバコを1本吸おうかと思うが、
「いや、もう寝よう。明日勝たなきゃいけないし、寝不足は1番やばい」
俺はタバコに伸ばした手を引っ込め、ベットに入る。
「ふぁあ」
欠伸をしたことは覚えているが、いつ目を閉じたのかは覚えていなかった。
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