生配信12 もう1人の罰ゲーム

 昼の配信が終わり、遅めの昼ごはんを食べる。


 昼ごはんで思い出したが、ベーコンの話をするのを忘れていた。


 まあ、しょうもない話なので別にいいか。


 携帯を弄りながら食べていると、聡太さんからLINEがくる。


 内容は、暇ならゲームしようというもの。


 返事はもちろん、いいですよと送る。


 昼ごはんを口の中にかき込み、急いで食べ終える。


 何のゲームするんだろう。


 モグモグしながら、LINEで訊くと、配信来てくれれば分かるとのこと。


「配信してるのか」


 LINEを閉じて、携帯で聡太さんのチャンネルを開き、配信を少し覗くと、


『グラセフは自由度あっておもろいよな』


 聡太さんは、グラセフ5——正式名称は『グランド・セフト・オート5』という海外のゲーム会社が開発した自由度満載のゲームをプレイしていた。


 このゲームはシリーズ化されており、その最新作をプレイしている。


 ゲーム内で車を運転している聡太さんと、もう1人。コラボ相手がいた。


『そうですね、これやってるとスカッとします』


 コラボ相手は俺の知っている人で、この前俺の配信の枠で、絵茶さんと共に俺に負け、罰ゲームをしなくてはならない人。


「あれ、おかしいなぁ? 罰ゲームはどうなったの?」


 そう、聡太さんのコラボ相手は、サキサキさんこと佐々木美玲。


 サキサキさんのチャンネルを開き、コメント欄を流し読みしていると、


『今きました。罰ゲームはどうなったんですか?』


 今サキサキさんの配信に来たリスナーさんが、俺の聞きたいことをコメントにして送ってくれる。


 親切なリスナーさん達がそのコメントに対して、


『最初の方にちょろっとやったよ』

『30秒くらいやってたよ』

『配信直後に来た人しか見れてないよ』


 とのこと。

 

 ほう、なるほどね。


 罰ゲームの内容は、1週間語尾に『にゃん』などの猫語尾をつけて配信するというもの。絵茶さんは朝方、罰ゲームをしっかり守り、配信していた。


 サキサキさんは約束を守らないようだ。


「………ああ」


 だから、聡太さんは俺を呼んだのか。


 俺はもうちょっと、サキサキさんの配信を見てから参加させてもらおう。


 その旨を聡太さんのLINEに送り、待機する。


 何か失言でもするのではないか、とワクワクして待つ。


 待つこと10分。俺が見ているのにもかかわらず、サキサキさんはやらかす。


『変な罰ゲームを設定しやがって、こらぁ』


 サキサキさんのキャラが、通行人を殴る。


『性癖漏れてますよ、誰とは言わないけど』


 もう1度、通行人を殴る。


『にゃんにゃん、なんて誰がいうか!』


 さらに殴り、そして通行人を殺める。


『ははははははは! どうだ、滝くん! 無様だな!』


 とうとう、名前を出しましたか。いつか言うと思ったが、こうも簡単に名前を言うとは。


 さて、そろそろ参加しますか。その前に、


『Takiチャンネル : 見てますからねw』


 とコメントを送っておく。


 俺はそこで配信を見るのを止め、聡太さんに連絡を取る。


 罰ゲームを放棄といい、通行人に向けての八つ当たりといい、お仕置きが必要なのかもしれないな。


 どんなお仕置きがいいかな?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、その頃。


「ははははははは! 滝くんはこれで成敗!」


 サキサキさんは、通行人を殺め、いい気分でいた。


(まさか、私とえっちゃん2人がかりでも勝てないとは)


 2人がかりなら滝に勝てると確信していた罰ゲーム付き勝負。


 大差をつけられ負けてしまうとは思っても見なかった。


 その鬱憤を晴らすかの如く、視界に入る通行人をバッタバッタと殺めていく。


 すると、コラボ相手の聡太がサキサキさんに、1つあることを教える。


「サキサキさんのコメント欄面白いことになってるね」


「ん?」


 ケタケタと笑っている聡太。


 もしかして通行人を殺め過ぎてコメント欄荒れたか、と心配し、コメント欄を見ると、


『サキサキさん、滝見てるよ』

『滝キタァああああ!』

『滝くんいるよ』

『ああああ、見られちゃった』


 滝がいることを知らせるコメントで溢れかえっていた。


 そんなまさか来ているわけがない。そう願いながら、コメント欄を遡っていると、


『Takiチャンネル : 見てますからねw』


 いた。しかも、リスナーさん達のコメント通り、見られていた。


「きょ、今日は配信、ここまでにしようかな?」


 逃げるように止めようとするサキサキさんに対して、聡太はケタケタと笑いながら、


「ダメだよ、リスナーさん達はこんな逃げる結末を望んでいない! リスナーさん達が望んでいるのは、サキサキさんの猫語尾のみだよ」


 ケタケタと笑い続ける聡太に、確信を持つ。


(この人が呼んだな、滝くんを!)


 ヤバい、ヤバい。どうにかして逃げないと!


 逃げる言い訳を考えていると、聡太が言葉を続ける。


「ああ、あともう少しで滝来るから」


「このクソ野郎ぉぉおおお!」


 聡太目掛け、殴りかかるサキサキさん。


「いつか後悔させてやるからなぁああ!」

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