生配信12 レベリング

「どうも、今日もゲーム配信。配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です」


 昼の配信時間になったので、始める。


「今日もファイナルファンタジー14をやっていきたいと思います」

 

 昨日に引き続き、同じゲームをしていく。

 

 やはり人気作のシリーズだからなのか、今日も有り難く、多くの人に見てもらっている。


 始まって間もないのに、2500人。


 人気作をプレイしていると、もしかして登録者数とかも増えるのでは?


 なんて考えていると、コメント欄では、


『雑魚敵にまた死ぬの?』

『大丈夫、タンクできる?』

『攻撃特化のジョブにしなくていいの?』


 昨日の昼配信での出来事——雑魚敵に殺される——を覚えていたリスナーが弄ってくる。


「シャラァップ! 始まったばっかりなのに、そんなに弄る? できるからタンク職。たくさん動画見たから」


『そこら辺の敵倒せる?』

『本当に大丈夫?』

『また死ぬの?』


「死にません。大丈夫です」


 そうリスナーさん達に宣言し、FF 14の画面を表示する。


『あれ⁉︎』

『レベル上がってない?』

『昨日より7レベくらい上がってるじゃん』


 どうやら気付いたリスナーさん達がいるようだ。


「気づいたか。そうです、レベル上がってます。昨日の昼配信以降、配信外でレベルを上げたので、現在15レベになっています」


 しかも、


「ストーリーもね、少し進めたので武器や防具も良いのに変わってます」


 別に昨日の昼配信で雑魚敵に負けたから悔しくてレベルを上げたとかじゃないし、雑魚敵に復讐するためとかでレベルを上げたわけじゃないから。


 違うから!


『相当悔しかったんだな』

『雑魚的に負けてレベルアップか』

『配信でやれば良かったのに』


「シャラァップ! 悔しくないし、負けたからでもないから! ただただFF14をやりたかったからやっただけだし。配信にするほどやるつもり無かったから、配信にしなかっただけだし」


 早口で捲し立てる。


「まあ良いじゃん。一応ね、切りのいいところで終わらせてあるから、そこから始めまーす」


 そして俺が作ったキャラクターがいるところは、海の都リムサ・ロミンサのストーリーで解放される『サスタシャ侵食洞』というダンジョンの前。


 元居た場所——砂漠の都ウルダハから少し離れた場所にある。


「いや、本当はね、リスナーさん達の中にリムサ・ロミンサ派がいるの分かっていたから、リムサ・ロミンサ突入編って事で、この昼配信をしようと思っていたんだけど、FF14面白すぎて辞められませんでした」


 リムサ・ロミンサ派というのは、FF14内に複数ある都市の中で1番リムサ・ロミンサが好きな人達の派閥。


『一緒にリムサ・ロミンサ行きたかった』

『リムサ・ロミンサの感動を共に味わいたかった』

『リムサロミンサ、ざんねん」


 残念コメントがコメント欄に多く流れる。


 やっぱりストーリー進めんでも良かったかもとコメントを読んで少し後悔した俺は、代案をリスナーさん達に立てる。


「じゃあ、ダンジョン終わらせて、少しタンクの技術の練度をあげたら、皆でリムサ・ロミンサの観光をしよう。どう、これじゃあダメ?」


 FF14のストーリーが面白すぎて夢中になりすぎた俺のミス。挽回のチャンスが欲しい。


 すると、


『観光!』

『しよう!』

『今からログインするわ!』


 など、代案を受け入れてくれるコメントが打ち込まれる。


「いや本当にごめん。配信のこと考えてなかったわ、リムサ・ロミンサ派の皆さん。これで埋め合わせをしたい」


 挽回のチャンスをもらうことが出来た。


『はよ、ダンジョン行こ』

『はよ、クリアしよう』

『はよ、観光をしよ』


 観光をしたいリスナーさん達のコメントでコメント欄が埋まる。


「待て、待て。待ちなさい。ちなみに言っとくけど、クリアが目的じゃないからね」


 クリアしよう、早くダンジョン。と言ったコメントだけが流れてくるので、一応今回の目的をもう1度伝えとく。


「今回の配信の目的はタンクの練度を上げる。がメインなんで、練度上がらなかったら観光はまた後日に」


『明日はやらないのか』

『明日はやらないな』

『明日は違うゲームかな』


 んん、流石リスナーさん達だ。後日と言った途端に、俺の状況を察してくれる。


「明日は未定。FF14やりたいけど、違うゲームもやりたい感はある」


 今日でFF14は2日目なのだが、1度プレイしているゲームを、また最初っからというのは、先が分かっている分、飽きがくるのが早い。


 1日置きにやるのが良いのかもしれないな。


 ちなみに言うが、俺は別に飽き性ではない。


 レベル上げが必要なゲームって、1度目はストーリー見たさに長時間プレイして頑張ってレベル上げをする。俺もFF14の1度目はそうだった。


 だが2度目を配信と配信外でプレイしてみて、レベル上げをしなくてもストーリーが分かってしまう分、レベル上げが面倒になってしまうのだが………これは俺が飽き性だからなのか?


 ………


 ……


 …


 まあ、いいか。


「配信についての最新情報を得たかったらTwitterのフォローをよろしくお願いします。明日の予定については、夜配信までに考えておくので、ワクワクドキドキで待っていてください」


『はーい』

『はーい』

『ワクワク』

『ドキドキ』


「じゃあね、そろそろFF14をやっていきます」


『サスタシャ侵食洞』に挑む準備をする………前にリスナーさん達に言っておくことがある。


「ええっとですね、今日のFF14はリスナーさん達参加型でプレイしていこうと思っています。はい、拍手!」


『888888888』

『拍手拍手拍手』

『パチパチパチパチ』


「どうも、どうも。じゃあね、参加型をしていく上で注意事項を話していきます。まず」


 リスナーさん達に伝えた注意事項は、いつもと変わらず。


 1、他人に暴言を吐かない。

 2、チャット欄での喧嘩はダメ。

 3、エロワードはあまり無しの方向で。

 4、アンチコメはどうぞご自由に(他リスナーさんに迷惑をかけた時点でBAN)。

 5、基本、2回目は無し(1巡したら、2巡目来るかも)。

 

 などなど。


 まあ、民度はそこまで悪くないので喧嘩はしないでしょう。


 注意事項を伝え終わると、コメント欄に気になるコメントがあったので、拾い上げる。


「なになに?『喧嘩はしないけど、討論的なのは有りですか?』だって?」


 討論的なのか。


「すぅ———、有りです! その代わり罵倒とかなしね。さっきも言ったけど」


『了解!』

『了!』

『意見交換みたいな感じかな』


 意見交換みたいな感じになって欲しいね。


「あっ、あと1つ。討論みたいなのやっててムカついてきたら、ちょっと待って。今コメント欄に打ち込むから」


 俺は携帯を出し、アプリを開いて、自分の配信まで飛ぶ。


 そして、


『Takiチャンネル : (^-^)ノ』


 顔文字を送る。


「今送った顔文字見た? ムカついた人いたらその顔文字送って。顔文字送ってきた人以外のリスナーさん達は、その人に触れないように討論を続けてください。この説明でわかったかな」


『(^-^)ノ』

『(^-^)ノ』

『(^-^)ノ』


「わああ、すごい。まだ討論始まってないのにムカついてるリスナーさん達がいるよ。アンチなのかな? 俺の配信見てて、ムカついてんのかな?」


 なんて言うが、こんな顔文字を送ってくるアンチはいないので、俺の言っていることを理解した、という認識で行こうと思う。


『ミルク大好き : (^∇^)』


「…………」


『ミルク大好き : (^∇^)』


「………おい、そんな顔文字を送れなんて言ってないぞ。煽ってんのか、その顔文字は? 名前控えたからな、ミルク大好きさん」


『ミルク大好き : ╰(*´︶`*)╯』


 こいつはアンチかもしれん。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ、1回目の募集していきます」


 FF14のダンジョンは基本4人制で、4人集まらなければ始まらない仕組みになっている。


 じゃあ、1人でFF14をしている人はダンジョンいけないんですか、って?


 な訳ですよ。野良の人とマッチングして行くことになります。


 ただし、マッチングする際に少し時間がかかってしまう可能性があります。


 例えば、4人いなくちゃいけないのに、ダンジョンに潜りたい人が3人しかいなければ、1人足りない状態なので潜ることはできない。あと1人入ってくるのを待ってなくてはいけません。


 待つのが嫌だという人は、FF14ゲーム内のパーティー募集掲示板を使いましょう。


 これを使って募集をかければ、あら簡単。4人パーティーの出来上がり。


 って、なに心の中で呟いているんだか。


「よし、あと3秒後に募集をかけるので、一緒に遊んでくれるという人は、神に祈りながら、入ってきてください。もちろん@3人なので、3人しか入れません」


『こちら準備オーケー』

『準備完了!』

『髪様お願いします!』


「誤字あるぞ。髪の毛の神様に祈ったところで、貴方の髪の毛は戻ってきません。毛根は死んだのです」


『髪様、後退を遅くしてください』

『髪様、白髪を少なくしてください』

『髪様、天パをストレートな髪の毛に治してください』


 髪の神様に祈りを捧げるリスナーさんがドンドン増える。


 馬鹿なこと打ち込む奴が増える前に、カウントダウンをする。


「3、2、1………募集!」


 パーティー募集を登録する。すると、


「おっ、3人来ました!」


 登録して1秒も経たずに@3人が埋まる。


「はい、第1回目はこの3人と行きたいと思います」


 パーティーの3人はレベルが上限までいった猛者。負けることは無いと思う。


『髪様に思いが届かんかった』

『髪様なぜだぁああ』

『(^-^)ノ』

『髪よ、次こそは』


「その髪様に祈ったのがまず間違いだと言っておこう。あと誰にムカついてるのかな? 髪様かな?」


 もし、髪様にムカついているのであれば、天罰で後退がスムーズに進むだろう。


「じゃあ、レベル上限の猛者諸君、行きますか」


 第1回タンクの練度レベリングを始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 流石レベル上限の猛者たちだ。


 ダンジョンの方は難なくクリアすることができ、タンクの俺にいろいろアドバイスをくれた。


 FF14の動画を出している人のプレイ動画を参考に見ていたが、実践となると、やることが多く難しい。


 先頭切って敵視を集め、他のメンバーにターゲットが向かないように敵のヘイトを管理。敵の範囲攻撃の場合は、スタンさせることで阻止しなくてはならない。


「すぅー、むずいな」


 思ったよりもゴタゴタしていたと思う。


『いや、初めてにしてはよかったんじゃあない?』

『そうか? もっと周りを見た方がいいと思うぞ』

『画面をもっと引いて、周り全体が見れた方がいいと思う』

『最低でもパーティー全員が画面に映るようにした方がいい』


 ああ、なるほどね。パーティーを組むときは引きの画の方がいいと。


 コメント欄の意見を見ていると、やや雰囲気の悪いやりとりが見つかる。


『まあ、敵視を取れなかったモンスターは攻撃専門のジョブに任せるのも方法だと思うよ』

『いや、タンクが全てのモンスターの敵視取った方が味方は死なないから、全て取った方がいい』

『全てのモンスターの敵視を集めてたら、顔服間に合わなくない?』

『スタンとかして敵の攻撃も管理すれば回復間に合うから』

『ヒーラーの仕事量多くなるし、魔法のクールタイミングがそもそも間に合わないから、タンクは無理のないように敵視集めた方がいい』

『攻撃職に任せたら、それこそヒーラーの仕事量多くなるから。タンク職やったことある?』


 おおっ、喧嘩勃発か? BAN対象になるぞ、と思いきや、


『(^-^)ノ』

『(^-^)ノ』


 俺の言ったことを守るようで、顔文字を使って、争いを一時中断する。


 偉い偉い。でもまあ、


「それはこの後の第2回、第3回とかで試してみるよ」


 攻撃専門の職業に任せるのもありかな、とは俺も思う。


 全敵視が向いたらすぐにHP削られるし、少しは敵視分散させた方が生存率は上がる。


 ちょっと試したい感はあるので、


「じゃあ、第1回のパーティーの皆さんありがとうございました。抜けてください」


 第2回目では、分散させていきたいと思う。


 第1回目の猛者達が抜け、2回目に入る。


「また応募しますね」


 第1回目と同じようにパーティー募集をかける。


 その後、何度も何度も試行錯誤して、タンクの正しい動き方を模索していく。


「いや、ボスの攻撃にスタン入れようとしたんだけど、間に合わなかっただけ」


 第18回目のダンジョンにて、俺のスタン攻撃のする意味あるかどうか、について話している。


『別にあそこは食らってもいいんじゃない?』

『ヒーラーの回復魔法が無かったのなら、スタンだな』

『俺は食らってでも、HP削った方がいいと思う』


「ヒーラーの回復魔法はその前に使ったからクールタイミングが。スタンにした方が無駄な攻撃を受けずに済むと思ったんだよね」


 リスナーさん達と考える。


『いや、削った方がやっぱりいいような気がする』

『削る方がいいな』

『回復は気にしない方がいいんじゃない?』


 そっか、削った方がいいか。


 でもまあ、


「最初よりはいい感じの動きだったんじゃないかな?」


『最初よりはいいと思う』

『そうは思う』

『そろそろ観光?』


 正直言って、同じダンジョンを18回回したから、そろそろ違うことしたい。


 なので、


「観光しちゃう?」


『観光!』

『よしゃ、今からログインするわ』

『もうちょい待って。今からログインするから』


 ダンジョンではなく、観光がしたいリスナーさん達もいるようなので、少し待つか。


「あと3秒後に始めるわ」


 もうちょいってことは、ちょっとでいいんでしょ。


『早い』

『え?』

『早くない』

『(^_^)ノ』

『(^_^)ノ』


「文句ばかり言って。顔文字送ってきた人は、誰にムカついてるのかな?」


 リスナーさん達で遊んでいると、コメント欄にあの顔文字が流れてくる。


『(^∇^)』

『(^∇^)』

『(^∇^)』


「やめい! その顔文字送ると」


 あいつが来るだろ、と言おうとするも遅く、リスナーさん達で遊んだ罰なのか、


『ミルク大好き : 呼んだ?』


 呼んでもない奴がやってくる。


「呼んでないから出てこんでもろて」


『こわがるなよ』

『1リスナーだぞ』

『ミルク大好き、泣くなよ』


『ミルク大好き : みんな、、、』


 コメント欄で、意味不明な友情が芽生える。


 別に怖がってないし、ノリで言っただけだし。


『ミルク大好き : (^∇^)』

『(^∇^)』

『(^∇^)』

『(^∇^)』


 ミルク大好きさんが、顔文字を打ち込むと他のリスナーさん達も、同じ顔文字を打ち込んでくる。


 なんか腹立つな、その顔文字。

 

 コメント欄が顔文字で埋まり、文字が消えたところで、


「はいはい、じゃあ観光していくのでリムサ・ロミンサの入り口で集合ね」


 強制的に観光を始める。


 その後、コメント欄は通常通りに戻り、無事観光が終わり、


「お時間になりましたので、配信を終わりにします。お疲れ様でした!」


『おつかれ』

『おつおつ』

『夜に』

『また夜きまーす』


 コメント欄を流し読みしながら配信を切るのであった。


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